ライフスタイル

理系のための料理本!料理を科学する6冊【完全マニア向け】

更新:2017.6.3 作成:2017.6.3

もし、あなたが料理の味が安定しないと悩んでいたら「料理科学」の本を読んで欲しい。科学とは「だれがやっても同じ結果が出る再現性」だからだ。今回は、料理科学を学ぶ人のための6冊を選んだ。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

料理科学の第一歩に最適!料理のなぜ?に答える一問一答集

最初の1冊は挫折しないように、まずはこちらからお勧めしたい。料理科学の本は、特質上「理系」向きの本ばかりであり、文字数は普通のレシピ本と比べられないほどの分量であり、読み込むのに相当な体力を要するものが多いが、その点、この1冊なら安心できる。
著者
ロバート・L. ウォルク
出版日
「ワシントンポスト」で連載していた料理の「なぜ?」を科学的に回答するコラムをまとめたものが本書だ。この本は料理科学本の中では非常に読みやすいのが特徴で、ロジカルな文章が苦手な人でもサクサク読むことができるだろう。

内容は全て一問一答方式になっていて、どの質問も素朴な疑問ばかり。一つ本書で紹介されている質問を出してみよう「パスタをゆでるときに、塩を入れるタイミングはいつ?」。中学校で理科を勉強した人なら「塩を入れると沸点が上がるので、塩を入れるのは沸騰してから」と答えるかもしれない。しかし、500gのパスタを6リットルのお湯、20gの塩でゆでる場合、塩を入れる前と後とで変化する沸点の差はわずか0.0007度。つまりほぼ変化がないので、塩はいついれても構わないのだ。

また、料理研究家の著者の妻が作成したというレシピも、ベーキングパウダーとココアの反応で赤くする「悪魔風カップケーキ」や、クリームターターという添加剤をつかわないと壊れてスープになってしまう「ポルトガル風ポーチドメレンゲ」など、科学的に変わったものが収録されている。

訳書のため取り上げられている食材や調味料がアメリカのものばかりで、日本では手に入りにくい物もあるのだが、アメリカの一般的な食材の知識を学べる本として考えればそれもたいへん楽しい。

全てのレシピは4つの構成要素でできている!?世界中のレシピを共通項でぶった切る

料理のレシピは多種多様。たとえばレシピ本1冊だけをとってみても200〜300種類は掲載されている。世の中に溢れている全てを集めたら、まさに無限のレシピがあるといっても過言ではないだろう。しかし、それら無数のレシピの手順を見ていくと、シンプルな共通点があると言っているのがこの本だ。
著者
玉村 豊男
出版日
2010-02-25
著者は世界各国の様々な料理を調べ、調味料や調理法を変化させると和食や洋食、中華など様々に変化する例を本書の8割を使って紹介する。

たとえば、本書で最初に掲載されているレシピは「アルジェリア式羊シチュー」。この「アルジェリア式羊シチュー」の、一部のパーツを入れ替え入れ替えしていくと、フレンチの「ブフ・ブルギニョン」になる。アルジェリアとフランスの複雑な歴史につい思いを馳せてしまいそうになるが、この「ブフ・ブルギニョン」から更にパーツを入れ替えていくと、最後は日本でもおなじみの「豚の生姜焼き」にまで到達する。「レシピは無限」と捉えるのではなく、そこにはいくつかの「共通点」があり、むしろ実は一つの同じ料理だと考えることができるのではないかと提案するのが本書だ。

「豚の生姜焼き」のあとも、ローストビーフ、てんぷら、さしみなどなど普段親しんでいる和食が世界の料理とかぶる共通点をまとめあげ、「料理とは、道具や調味料の差異はあれ、「空気」「水」「油」という要素が「火」の介在によって素材をいろいろな方向へ変化させること」と結論づける。料理科学の本としては、ロジカルでもなく非常に強引なまとめ方をしているのだが、仮説を立て分析をし、まとめあげていくスタイルは「料理の地頭力」を鍛える本として、とても素晴らしい。こちらもたいへん平易で読みやすいので、理系っぽい文章が苦手な人でもすっと入ってくるだろう。

家庭料理の「こつ」の科学的裏付けを探す。

料理には沢山の「こつ」がある。「ジャガイモは水からゆでる」「片栗粉は水で溶いてから入れる」「魚は強火の遠火で焼く」などなど。料理上手と言われる人たちは、レシピに載っていない沢山の「こつ」をお約束ごととして使いこなしている。正直、どれだけ正しい「こつ」を知って実行しているかが、おいしい料理を作るためには欠かせない。

しかし、こうした「こつ」の中には、根拠のないものもたくさん混ざっている。例えば「お肉の表面を強火で焼き固めて肉汁を中に閉じ込める」というのは実験で嘘であることが証明されている。こうなってくると、果たして何がただしい「こつ」で何がインチキな「こつ」か、わからなくなってこないだろうか。
著者
杉田 浩一
出版日
本書はそういった「こつ」を科学的な根拠をもとに説明したもの。最初に紹介した「料理の科学」がアメリカの事情なら、こちらは日本の家庭料理を取り上げている。冷やす、煮る、焼くなどの各作業工程ごとの「こつ」をデータや成分などから説明をしている。人間、理由がわかると覚えるのが簡単になる。そういう意味でも本書は料理初心者が様々な「こつ」を覚える上で、本書は非常に役に立つだろう。

料理科学の本で1点気をつけたいのは、科学が進むにつれ書籍の内容が否定されることがあるということ。例えば「しらたきと牛肉は一緒に煮ると肉が固くなる」は2017年の2月に日本こんにゃく協会の実験で否定された。

The 家庭料理科学大全

世界で一番有名な「料理科学本」はなにか?と聞かれたら、このマギーキッチンサイエンスをあげる人が多いだろう。
著者
Harold McGee
出版日
2008-10-09
この本の特徴は、その800ページ以上の分厚さからもうかがえるように、カバーする範囲が広いことだ。食品化学をはじめ調理化学、微生物学、栄養化学、食文化や食生活史まで、食に関する知識は何でも載っている。前述の”こつの化学”が普段の料理テクニックの化学的裏付けをTIPS的に紹介する本だとしたら、こちらはもっとがっつり科学より。

たとえば、メレンゲを作るときに卵白が泡立つことをマギー流で説明すると「物理的ストレスによってタンパク質の構造がほどけ、互いに結合しやすくなることにより、卵の泡は安定になる」ということだし、小麦粉に含まれるグルテンは「グルテンタンパク質の多くはグリアジンとグルテニンで,アミノ酸が1000個前後結合したものである。」ということになる。

正直こうした科学的な「物言い」が受け入れられない人には全くもって不向きなのだが、食物の知識をとにかくマニアックに知りたい人にはうってつけの本だろう。1冊家に置いておいて「今週末は卵料理作るから、卵のロジック理解してから、何作るか考えよう」みたいなことを思う料理マニアには、ぜひ入手してほしい1冊だ。

エンジニア御用達出版社から出ている料理奇書

今回の選書は、どこまでもマニアックな本が続く。5冊目はCOOKING for GEEKS。プログラミングをする人なら必ず一度はお世話になっている出版社「O’Reilly(オライリー)」から出ている料理本だ。本のタイトル通りGEEKの文法で料理を解説した奇書だ。
著者
Jeff Potter
出版日
2016-12-24
この本、やたらウンチクが凄まじい理論コラムがいたるところに載っており、レシピも実験さながらに全てがグラム表記(トマト大2個ではなく500g)、温度も強火で2分焼くとかではなく中心の温度が61度になるまで加熱。などなど普通のレシピ本ではなく「理系」の人が好きそうな文体で全てがまとめられており、料理の再現性を極めたい人には大変明快なレシピが並ぶ。

全般を通して様々なロジックを学べるのだが、特に第3章の「時間と温度」を私は推したい。30度、40〜50度、60度、61度、68度、70度、154度、180度とキーとなる温度帯について、1つの温度帯あたり10ページ以上使って、細かく解説してくれている。

肉をミディアムレアに焼くときは中心温度が60度というのは、料理好きの間ではかなり有名になってきているが、その下の温度や上の温度で起こるさまざまな食材変化をここまで詳しく解説してくれている本はあまりない。事実、私は熱と食材の関係を調べるためだけに、この本を購入した。食中毒菌の滅菌や減菌方法なども触れており、低温調理などを身につける上では熟読しておくと良いだろう。

最先端の科学的料理法をわかりやすく解説

スペインにかつてあった「エル・ブリ」というレストランをご存知だろうか?シェフのフェランアドリアは食品工学のテクニックを調理に応用し、今までに存在しなかった新しい料理表現をたくさん生み出してきた。それらのテクニックは科学的調理法「モレキュラー・クッキング(分子調理)」と呼ばれている。
著者
石川 伸一
出版日
2014-06-10
本書は、その「モレキュラー・クッキング」を初心者でも解るように解説した本だ。そもそも料理科学の研究テーマとして「おいしいとはなにか?」ということがある。著者によると料理の美味しさは「物理的な美味しさ(唇や歯、のどなどで感じる食感)」と「科学的な美味しさ(味や香り)」で分けられるという。

そして、同じ材料であっても(つまり、科学的な美味しさが同じでも)食感が変わると(物理的な美味しさがかわると)味が大きく変わる。たとえば、おしるこも、あんも小豆と砂糖から作られるが、液体のおしるこの場合、あんと同じ分量の砂糖を入れると甘すぎるため、かなり砂糖を入れる量を減らす。テクスチャーが味覚に大きく影響をするわかりやすい例だ。

料理を科学で捉えたときに、最初にぶつかる「おいしい」とは何か。それを科学的に理解を深めるのに本書はたいへん役に立つ。最新のモレキュラークッキングのテクニックも多数収録されており、楽しく読むことができるだろう。

料理科学は、人を選ぶもののハマるとこれほど面白い分野はない。料理をさらに上達させたいと思った時、レシピに頼るだけでは嫌だという時、ぜひ料理科学の本を読んでみて欲しい。きっと今までの悩みがすっと解決していくだろう。