『坊っちゃん』は結局、何が面白い?登場人物が象徴すること、性格から解説!

更新:2018.6.13

坊ちゃんは、夏目漱石が書いた2番目の作品です。「吾輩は猫である」と同様に一人称で物語は進んでいきます。やんちゃで無鉄砲な坊ちゃんの悪戦苦闘ぶりと、それを見守る清が作品に温かみを与え、物語は結末を迎えます。 最後、坊ちゃんはどうなってしまうのでしょうか。この記事を読むことで全てが明らかになります。ぜひ最後までご覧ください。

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まずは『坊っちゃん』のあらすじをご紹介!時代背景は?

「親譲りの無鉄砲で子供のころから損ばかりしている」
(『坊っちゃん』より引用)

有名な一文から始まる小説『坊っちゃん』。主人公である坊ちゃんは、教師をしており、曲がったことが大嫌いでとても正義感の強い人です。この物語は明治時代を舞台としており、坊ちゃんが四国の学校に赴任したところから物語はスタートします。

著者
夏目 漱石
出版日

新しい学校は愛媛県の松山というところは田舎で古くからのしきたりや人間関係が色濃く残っている地域でした。一方で坊ちゃんは東京出身。

当時の東京は明治維新後のため、近代化が急激に進んでいました。そんな東京出身の坊ちゃんが、田舎の松山の古い慣習に従えるわけがありません。坊ちゃんは長所でも短所でもある無鉄砲さを発揮しながら松山の学校で悪戦苦闘していきます。

松山の学校の教師達も保守的で、自分たちの慣習を守るためなら卑怯な行動に出ることもいといません。それでも坊ちゃんは自分が正しいと考えたことを必ず通そうとします。

この点から、この作品には明治政府への皮肉も込められているのかもしれない、という推測もできます。300年以上も続いた江戸幕府を倒し、明治政府ができ、開国をして新しい日本がどんどん出来上がっていきました。

しかし、この改革はすべてが良いことではなかったのです。明治政府にはお金もなく、内部で戦争もしていました。当時の夏目漱石はそういった明治政府のことをあまりよく思っていなかったのでしょうか。そんなことを考えながら読むことで、この「坊ちゃん」により一層の深みが増します。

人間関係が密?登場人物、それぞれの性格が象徴すること

坊ちゃんに登場する主な人物をご紹介いたします。


  • 坊ちゃんのことを可愛がっている下女です。維新で零落し、奉公人となりました。坊ちゃんと一緒に暮らすことを望んでいます。

  • 山嵐
    数学教師の堀田さん。会津の出身で、体が頑丈です。


  • 松山の学校の校長先生。薄いヒゲ、色黒、大きな目が特徴で、融通が効かない男です。

  • 赤シャツ
    松山の学校の教頭先生です。年中赤シャツを着ているから赤シャツという呼び名。とても陰気で策士での彼は、坊ちゃんとは敵対関係にあります。物語の重要人物です。

  • 野だいこ
    松山の学校の画学の教師です。羽織を着た芸人風の格好をしています。赤シャツの腰巾着です。

  • うらなり
    松山の学校で英語教師をしています。青白く痩せていてとても気が弱いのが特徴です。

この「坊ちゃん」には滅びの美学があるように描かれています。組織の権力を持った赤シャツに坊ちゃんは果敢に挑み、そして負けます。なぜなら、赤シャツは人事権というとても強い権力を握っているからです。人事権を握っている赤シャツが坊ちゃんに負けるはずがありません。

そのことを分かっていても坊ちゃんは自分の正義を貫こうとします。そんな潔さには誰もが憧れを抱くのではないでしょうか。結果的に、坊ちゃんはとても大きい損をします。しかし、彼はそれを損だとは思っていません。

組織社会にいる上で、ある程度の理不尽さは付き物です。この理不尽なことを受け入れなければいけないのが大人になることだと、私たちは社会に出ることで痛感します。そういったことに目をつむり、歯を食いしばり必死で生きていきます。誰もが坊ちゃんのように自分の正義を貫けるわけではありませんが、きっと誰もが自分の正義を貫きたいとは考えていることでしょう。だからこそ、坊ちゃんに魅力を感じ、憧れるのではないでしょうか。

『坊っちゃん』で夏目漱石が伝えたいこと。清の存在が意味することは?

本作のストーリー展開には、腐敗した権力に立ち向かう坊ちゃんの姿とは対照的に「清の愛」が隠されています。キーワードは「母性」です。

坊ちゃんの両親は、兄にばかり愛情を注ぎ、坊ちゃんにはあまり愛情を注ぎませんでした。親には恵まれなかったものの、彼のことを心の底から認め、愛していた人物がいます。それが清です。清は坊ちゃんがどれだけやんちゃをしても可愛がり、受け止め、包み込んでくれました。

坊ちゃんは最初、彼女の愛情を受け止めませんでした。なぜなら清は家族ではなく奉公人であるため、血のつながりがないからです。しかし、坊ちゃんは松山の学校に赴任し、清のもとを離れて、ようやく彼女の愛の深さに気づいたのです。母親からの愛情をあまり受けていない坊ちゃんにとっては、清こそが母親だったのかもしれません。この清という人物が実は作品上、重要で、ストーリーに温かみを与えてくれます。

最後はどうなる?結末の見所をネタバレ解説!

坊ちゃんは山嵐と一緒に赤シャツに制裁を加えようとしました。赤シャツは、うらなりの婚約者を言葉巧みに横取りをし、自分の権力を最大限に使って、うらなりを転任させてしまうという非道な行為をするのです。

このことを知った坊ちゃんは赤シャツに抗議をします。しかし、彼は自分の非を認めません。自分の非を認めないばかりか、坊ちゃんのことを給料アップを餌に自分の味方に取り込もうとします。もともとこういった曲がったことが大嫌いな坊ちゃんです。とうとう堪忍袋の尾が切れてしまいます。

この作品を読んでいると坊ちゃんの正義感につられて、いつの間にか彼を応援してしまうのではないでしょうか。確かに坊ちゃんは無鉄砲で正義感が強く、それゆえに他人と対立してしまうこともよくあります。坊ちゃんのしていること、考えていることは確かに正論なのでしょう。

しかし、人の考えや行動が感情に大きく左右されることもまた事実。正論ばかりでは通用しません。この「まっすぐさ」が坊ちゃんの長所でもあるのですが、それと同時に欠点でもあるのです。しかし最初こそ、そこでそれを言わなくても、と思うところがあるものの、物語が進むにつれ、権力に抗い、正義を貫き通す坊ちゃんがとてもかっこよく見えてくるのです。

普段自分ではできないことを坊ちゃんが損得考えずに行動している姿に、いつの間にか自分の理想の姿を投影して物語に引き込まれてしまう、主人公の設定。そういったところがこの『坊ちゃん』の面白さでもあり、魅力でもあるでしょう。

そして最後は、この土地の人間ではなくなる坊っちゃん。自分を待ってくれていた大事な人と東京で暮らすという結末は、一回り大きくなった男の姿を感じさせます。

最後に、『坊っちゃん』の印象に残る名言たちをご紹介!

著者
夏目 漱石
出版日

ここでは、最後に作品の世界観を感じられる名言を紹介します。

「きのう着いた。つまらん所だ。
十五畳の座敷に寝ている。宿屋へ茶代を五円やった。
かみさんが頭を板の間へすりつけた。」
(『坊っちゃん』より引用)

坊ちゃんが下宿することになった宿屋に五円の心つけを渡しました。そうすると、部屋の広さが倍になり、坊ちゃんへの扱いも大きく変わってしまったのです。これはまさに資本主義社会を描写しています。

このころ、日本はちょうど資本主義社会への本格的な移行期でした。お金を優先に考える世の中への不満を夏目漱石が「坊ちゃん」に託していたのでしょうか。坊ちゃんはこの資本主義社会への流れを「くだらん」といって、日本の運命に逆らいながら生きていきました。

「金や威力や理屈で人間の心が買えるものなら、
高利貸しでも巡査でも大学教授でも一番人に好かれなくてはならない。
中学の教頭位な論法でおれの心がどう動くものか。
人間は好き嫌いで働くものだ。
論法で働くものじゃない」
(『坊っちゃん』より引用)

坊ちゃんは、いろいろなことが重なって松山が嫌になりました。嫌になった坊ちゃんは嫌になったままにしておくことができません。そして赤シャツへの反逆を起こすのです。ここに坊ちゃんの潔さを感じられます。しかしそれがどれほど大きな影響となろうと、自分の行動にまったく後悔をしません。

この作品は明治時代に書かれた小説ですが、現代にも通じる普遍的な考えた方が書かれています。坊ちゃんを過去の作品としてではなく現代の作品として読むことで、私たちにもとても共感できる部分を見つけられるのではないでしょうか。

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