主人公・苗床かのこを中心とした成長物語。いつも1人でいた彼女が高校生活でさまざまな人と関わり、変化していく様子が描かれています。また本作のテーマは「恋愛」です。彼女たちの恋愛模様を、実に丁寧に描いています。 そんな本作はスマホアプリから無料で読むことができますので、そちらから彼女たちと一緒に高校生活を楽しんでみてはいかがでしょうか。
本作の作者は、辻田りり子。読切として掲載された『笑うかのこ様』が好評を博して後にシリーズ化、全3巻で完結しました。本作『恋だの愛だの』は、『笑うかのこ様』の続編です。
『笑うかのこ様』では、かのこは中学生。人間関係を傍観することが趣味の彼女が、転校する先々で思春期によくある出来事を、鋭い観察眼で解決に導くといったストーリーです。
傍観者に徹するため、あえて友人を作らない彼女ですが、唯一の例外がありました。99番目の転校先・富ヶ丘中学での「椿 初流(はる)」や「花井 桃香」 たちとの出会いです。「友情もアリ」と思った彼女は、富ヶ丘中学から転校しても初流たちとの友情を続けるのです。
『笑うかのこ様』では、彼女たちが中学を卒業するところで終わり、『恋だの愛だの』へ続きます。
- 著者
- 辻田 りり子
- 出版日
- 2010-08-05
『恋だの愛だの』では、高校生になった彼女が人との関わりをとおして成長する姿が描かれています。そしてタイトルのとおり恋愛がテーマである本作では、彼女や登場人物たちの恋愛模様もたっぷりと描かれた内容。
自分は恋愛を「見る」人間で、「する」とは思っていない彼女と、彼女を想う初流の関係に注目です。単なる「好き」とは一味違う2人の恋模様は、ぜひ実際に読んでみて感じてください。
そして本作では、濃い人物が多く登場します。まるで、3話目ですでに最終回のような濃さと多さです。そんな登場人物は、後ほどご紹介していきますね。
本作の主人公である「苗床かのこ」は、とても変わった少女です。頭が切れるがゆえに他人を高みから見ていて、「かのこの閻魔帳」という観察ノートをつけています。口癖は「ばっかじゃなかろうか!」。
また陰謀・策略といった不穏な言葉が好きで、そんなシチュエーションにワクワクしては「ひひっ」と少女漫画の主人公にあるまじき笑い方をします。
- 著者
- 辻田りり子
- 出版日
- 2014-02-05
人間観察が趣味である彼女は、あえて親しい友人を作りません。特定の人物への偏った感情は冷静な判断を鈍らせる=傍観者でいられないからです。傍観者であるために全力を尽くしている彼女にとって、恋愛は「見るもの」であっても「するもの」ではありません。
だからといって恋愛感覚がゼロかといえば、そうではありません。鋭い観察眼をもつ彼女は他人の恋愛感情には敏感で、周囲の人を驚かせます。また彼女に想いを寄せる初流に迫られたときも、分かっているのかいないのか、絶妙なタイミングでかわしたりもするのです。
そんな彼女ですが、思ったことはハッキリ言うカッコよさを持っています。またモテ男の初流と一緒に行動しているせいでファンから嫌がらせを受けることもありますが、達者な口で撃退し、彼にも嫌がらせを受けたことを言わないという強さも兼ね備えています。
ストーリーが進むに連れて彼女を気に入る男子も現れ、終盤では恋愛を中心に展開。ぜひ彼女の気持ちの揺れ動きを、最後まで見届けてください。
椿初流(つばき はる)。中学生のときからかのこの友人で、高校生になった今では親友です。中学時代から彼女が好きで、同じ高校に入学しました。イケメンで高身長、成績も上位に入る学校一のモテ男です。
そんな彼が彼女に興味を持ったのは、一風変わった彼女への好奇心からでした。やがてかのこを女の子として好きになった彼は、そのあとを追いかけて同じ高校に入り、クラスも部活も一緒。しかし悲しいことに、ただの親友だと思われています。
- 著者
- 辻田 りり子
- 出版日
- 2012-04-05
物語の序盤では、彼女と居たくて一緒に新聞部に入部したり、彼女を「アリ」だと言う友人に冷たい態度をとるなど独占欲丸出しなところが可愛らしい初流。しかし積極的にアプローチするものの、恋愛に疎い彼女にはまったく通じません。そしてそんな状況に、彼は長期戦を覚悟するのです。
そして新聞部で活動するうちに、彼に変化が現れてきます。初めは彼女を自分だけの世界に閉じ込めておきたいと思っていましたが、一癖も二癖もあるさまざまな人に関わるうちに、彼女にいろいろな世界を見せてあげたいと思うようになるのです。
彼女の魅力に気づいているのは自分だけ。そう思う彼ですが、やがて、彼女に好意を持つ男子が現れて、恋愛は混戦状態になります。そして遂に、彼は彼女に告白する決意をするのです。
『恋だの愛だの』では、かのこの成長とともに、初流の成長も描かれています。彼さえその気になれば女の子は選び放題なのに、あくまでかのこ一筋という想いが、どうか結ばれますようにと祈らずにはいられません。
かのこと初流が通う「宝ノ谷高校」には、一癖も二癖もあるキャラが多数存在します。ここではその一部をご紹介します。
- 著者
- 辻田 りり子
- 出版日
- 2012-11-05
かのこの親友・花井桃香。かのことは富ヶ丘中学からの付き合いです。誰もが認める美少女で、性格もいい彼女。かのこをとても大切に思っていて、彼女を自分だけの物にしようとする初流を諭したりします。その想いの強さは、初流が「花井が男じゃなくて助かった」と思うほどです。
生徒会長・矢吹葉。美しい容姿とは裏腹に、自他ともに厳しい一面を持っています。校内3本の指に入るほど生徒から人気があり、めったに笑わない彼の笑顔の写真は高レートで取引きされるほど。生徒会活動を通じて、かのこを気に入った彼は……!?
放送部2年・城蘭聖。やり手の彼は、イケメンで優秀な初流を認めていて、放送部に入部させようと画策します。また生徒会選挙でもしつこく彼を狙います。最初は嫌な奴と思う読者も多いと思いますが、だんだんと印象が変化していくところは必見。姫乃さゆりとは幼馴染です。
放送部2年・姫乃さゆり。校内一ともいわれる美女です。城蘭と組んでかのこと初流の邪魔をしようとしますが、かのこの笑顔にほだされます。城蘭のことが好きな彼女の恋の行方が気になります。
パソコン部部長・小田部有人。本作で1番ヤバい人です。優秀ですがロリコンの変態で、かのこを気に入りプロポーズします。彼女への呼び方は「かのタン」です。
他にもおっちょこちょいな先輩・お恭先輩、学校のアイドル・央路光希、笑顔の下に何か隠してそうに見える矢吹の右腕・水上、かのこと初流のことを妄想する夢見瞳など、宝ノ谷高校には個性的な生徒が揃っています。こんな学校に通ったら、きっと楽しいでしょうね。
主人公・かのこは「傍観者」として他人の人間関係を見ることが趣味です。余計な感情で冷静な判断をしないよう、誰も好きにも嫌いにもならず、友人も作りませんでした。
しかし初流や桃香たちと出会い、友情の大切さを知ります。そして「親友の桃ちゃんにふさわしい爽やか少女(ガール)」を目指して高校デビューをしようと決めました。
そうはいっても、元々の性質は簡単には変えられません。生来の好奇心の旺盛さで新聞部室乗っ取り事件や、ミスコン出場、生徒会選挙など、さまざまな出来事に首を突っ込んでいきます。
- 著者
- 辻田りり子
- 出版日
- 2013-06-05
初めは自分が新聞部のブレーンであることを隠して表に出ないようにコソコソしていたものの、姫乃さゆりに売られたケンカを買ってミスコンに出場しようとしたりと、徐々に表舞台に立つように。
そのなかでも印象的なのは、初流への恩返しのために生徒会選挙へ立候補するエピソードです。さまざまな人たちと関わって多くの経験をした彼女の心は、変化していきます。
そして人間として成長した彼女を待ち受けるのは、恋愛です。初流に告白され、彼女が1番遠ざけていた恋愛に向き合わなければならない時が来ました。物語の終盤では本作のテーマである「恋愛」について、彼女たちの心情が丁寧に描かれています。
本作は、11巻で完結です。最終回では、かのこが自身を振り返りながら話が進んでいきます。彼女は恋愛への気持ちに完全に決着をつけ、また少し前までの彼女には想像もつかなかったような事に挑戦します。そんな彼女を見る初流も、最初の頃に比べてとても穏やかです。
- 著者
- 辻田りり子
- 出版日
- 2016-07-05
最終回を読みながら、読者は2人が大きく成長したことを実感するでしょう。かのこは、今までの高校生活の集大成として、あることをすることになるのです。そしてきっと、2人の前にキラキラと輝く道が見えることと思います。
そして周囲の目からは変わらないように見えるものの、実は大きく変わった2人を象徴する最後のシーンも見所。胸キュン間違いなしなので、ぜひそちらもお見逃しなく。
『恋だの愛だの』は最後に、未来のかのこもすこーしだけ描かれます。彼女の話す高校生活の物語は、現役高校生の読者はもちろん、社会人の読者も、彼女たちと一緒に宝ノ谷高校の生徒になったような、楽しい気持ちになれるはずです。
いかがでしたか?本作は読み終わった後、爽やかな気持ちになれます。あなたも『恋だの愛だの』を読んで、宝ノ谷高校の生徒たちに会ってみてはいかがでしょうか。