地球上に生命が誕生して以降、海で最強の生物とはなんでしょうか。シャチ?サメ?ちょっと古生物に詳しい人であれば、真っ先にモササウルスを挙げるのではないでしょうか。この記事では、彼らの生態や絶滅した理由、共通点があるといわれているクジラとの関係、化石発見の歴史などをわかりやすく解説していきます。最後には古生物についてもっと興味がもてる本もご紹介するので、ぜひご覧ください。
有鱗目モササウルス科に属する肉食海棲爬虫類です。いまから約7900万~6500万年前の白亜紀後期に生存していて、海に君臨した王者ともいえる生物でした。
体長は12.5~18mとかなりの巨体。体重も大きくなると40tほどにまでなったと考えられていて、ホオジロザメの4~5倍の大きさにあたります。胴体は樽のような形で細身ですが、その体には似つかわしくないほどの大きな顎を持っていました。現代のワニを思わせる姿です。
四肢はサメのような三日月のヒレで、太くて幅広い尾があったことから、泳力に優れていたと考えられています。
大きな顎には、後方に向かって湾曲した歯が2列に生えており、1度噛みつかれた獲物は逃げることができません。また歯の先端部分は丸みを帯びており、獲物の肉を切り裂くだけでなく、アンモナイトなどの固い殻を持った生物をも噛み砕き、そのまま飲み込んでいたことがわかっています。
海面付近を泳ぎ、イカや魚、アンモナイトやウミガメなどを捕食していました。発見された化石の多くが傷ついていることから、仲間同士で激しく争うこともあった凶暴な性格だったと考えられています。
現代の海でもっとも大きい生物は、クジラです。クジラは、もともと陸上に住んでいた生物が海に入ったことで進化を遂げたと考えられています。
原始的クジラ類の最末期の生物は、バシロサウルスです。白亜紀が終わった約4000万~3400万年前の海に君臨した水棲哺乳類で、均的な体長は18mほどだったそう。
そして、そのバシロサウルスとモササウルスは、巨大な体、体の形、鋭い歯など多くの共通点を持っているのです。ただモササウルスが爬虫類なのに対して、バシロサウルスは哺乳類な点が決定的に異なっています。
つまり、クジラの祖先は新生代になってから海で生活するために適応していった哺乳類であり、よく似てはいるもののモササウルスではないとされているのです。
モササウルスが絶滅したのは、白亜紀末期のこと。現在のメキシコにあたるユカタン半島に、直径10kmにもおよぶ巨大な小惑星が衝突したためだと考えられています。
小惑星が衝突した後、周囲を熱波が襲い、海には大きな津波が起こりました。さらに、巻き上げられた大量のチリによって太陽光が遮られ、長期間にわたって地球の温度が下がってしまったのです。
陸上では植物が枯れ、生態系が崩壊。特に大量の食糧を必要とする大きな恐竜は絶滅していきました。太陽光が遮られる影響は海にもおよびます。光合成ができないため、海中の植物性プランクトンが減少。それをエサにしていた生き物も数を減らしました。
その結果、巨大な海棲爬虫類であるモササウルスも生命を維持するのに十分な栄養を得ることができず、絶滅したと考えられています。
モササウルスの化石は、西ヨーロッパやアメリカ大陸、日本など多くの場所で発掘されています。その歴史は古く、最初の標本は1764年に発見されました。
オランダのマーストリヒトで発見された化石は、フランスの博物館で鑑定がおこなわれ、1808年に古代に生息したトカゲに似た巨大生物であることが発表されます。1829年に、発見地のマーストリヒトを流れるマース川にちなんで「モササウルス」と名付けられました。
当時はまだ「恐竜」という言葉が無かったころ。それ以降、メガロサウルスやイグアナドンの化石が発見され、研究をしていたイギリスの解剖学者であり古生物学者であるリチャード・オーエンが「恐竜」という言葉を使うようになります。
現代には、モササウルスのように完全に水の中で生活する爬虫類はいませんが、ウミイグアナやウミヘビのように海中でも生活をする爬虫類は存在しています。
トリケラトプスの親子が大活躍する「恐竜トリケラトプス」シリーズ。著者の黒川みつひろは、恐竜や古生物に造詣が深く、本書をはじめとする恐竜絵本作家として活躍中です。
今回は、海をわたるトリケラトプスの親子とプテラノドンの前に、モササウルスやエラスモサウルスが憑い次と襲いかかる迫力満点のストーリーになっています。
- 著者
- 黒川 みつひろ
- 出版日
- 2013-11-08
トリケラトプスとプテラノドンが冒険をしているところに、悪者であるモササウルスたちが登場するのですが、勇気と知恵を絞ってなんとか危機を乗り越えていくという物語。
シンプルなストーリーと迫力満点のイラストで、子どもたちは夢中になること間違いなしです。ハラハラドキドキの展開が続くので、読み聞かせにもぴったりでしょう。
巻末には迷路やクイズもついていて、楽しみながらも恐竜について詳しくなれる一冊です。
全10巻から成る「生物ミステリー」シリーズの8冊目です。1冊につきひとつの地質時代を取り扱っていますが、白亜紀は紹介すべき生物の多さから上下巻に分かれています。
上巻には白亜紀前半、下巻には白亜紀後半の情報がまとめられており、モササウルスは下巻に収録されています。
- 著者
- 土屋 健
- 出版日
- 2015-08-18
本書の特徴は、世界各地の研究機関に協力を仰ぎ、珍しい写真が豊富に掲載されていること。数多くの化石を見ることができます。
また最新の研究結果も、図版などを用いながら解説。この分野に詳しい方でも納得できる情報量だといえるでしょう。
なかでもモササウルスは、「最強の海棲爬虫類」としてしっかり取り上げられています。古生物の世界にもう一歩足を踏み入れたい方におすすめの一冊です。