『ドラゴンボール』の名脇役にして多くのファンから好かれるネタキャラ、ヤムチャ。今回は彼の華麗なる(?)活躍を細かく解説してみました。
ヤムチャは『ドラゴンボール』の中で、ある意味最も愛されているキャラクターです。いじられキャラという意味ですが。
劇中では1巻から登場する最古参。当初は無法者の盗賊として登場し、純粋な格闘家が多い『ドラゴンボール』勢では珍しく、剣やヌンチャク等の武器も使う男でした。悟空も初期は如意棒を使っていたので、徐々に格闘技方面へと作品の方向性をシフトして行ったのです。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
ナルシスト気味のイケメンキャラなのはずっと変わりませんが、意外にも最初は女性に免疫がなく苦手としていました。後に女性関係にはだらしなくなっていきます。
そういうキャラクター性のためか、最も多く髪型が変わった人物でもあります。長髪、短髪、坊ちゃん刈り(?)等々。一時していた逆立つ髪型は、頬傷の有無という違いはあれど青年期の孫悟飯に瓜二つだったこともありました。
性格は終始軽く、ほぼ二枚目半といった有様で、良く言えばポジティブシンキングです。
ネタキャラとしてファンから人気があり、そのネタをフィーチャーした寝癖直しのCMキャラクターに起用されたり、スピンオフ漫画の主人公に抜擢されています。そちらのスピンオフに関してはまた後ほど。
ヤムチャの声優である古谷徹は『機動戦士ガンダム』のアムロ役で有名。なお、古谷はヤムチャを非常に気に入っているらしく、アニメ版で活躍が多かったのは彼が働きかけたからだとか……?
ヤムチャはファンからも演者からも好かれているわけです。
荒野の一匹狼、泣く子も黙る恐るべき盗賊。持ち前の拳法、狼牙風風拳や各種武装を巧みに操る武装強盗です。それが最初期のヤムチャでした。
ヤムチャは当時はまだちんちくりんだった悟空に比べ(外見はともかく年齢は4歳しか離れていませんでした)、イケメンで力強い青年として登場しました。軽妙な軽口に自信たっぷりな佇まい。甘いマスクは女性(読者含む)を否応なく釘付けにしました。
とんでもないライバル登場、と思わせたのも束の間。女性限定のあがり症が発覚し、二枚目キャラは一転して二枚目半に転落しました。
『ドラゴンボール』後期ではすっかり影が薄くなりましたが、マスコット的存在のプーアルはヤムチャの相棒です。
猫のぬいぐるみにも似た不思議な生物で、言葉を喋って自在に空を飛び、様々なものに化ける変身能力を持っています。
性別はどうやら男性のようですが、詳しい出自は完全に謎です。エイジ740年生まれ、誕生日は9月2日。身長37cm、体重9kg、AB型と『ドラゴンボール』キャラとしては珍しく血液型まで設定されていますが、地球の生物かは定かではありません。作中には動物を擬人化したキャラクターが多数出てくるので、あまり深く考えない方がいいかも知れません。
1人称は「ボク」。ヤムチャを深く慕っており、付かず離れず付き従っています。
『ドラゴンボール』は中期以降、パワーインフレが進んで地球人のクリリンや天津飯、チャオズは軒並み置いてけぼり。ミスターサタンは元から大したことはありませんでしたが、ヤムチャも同じ文脈で弱いとされています。
ネタにされることが多いこともあり、多大な活躍をしたわけではないのに、ヤムチャと言えば弱さと同時にサイバイマン戦が引き合いに出されます。
物語はサイヤ人襲来編。尖兵たるラディッツを退けた地球の戦士達は、来るベジータとナッパに備えて修行していました。ヤムチャも例外ではありません。
そして実際にベジータ達が来ると、ヤムチャの相手はサイバイマンとなりました。ちなみにサイバイマンは雑魚の代名詞のようになっていますが、戦闘力はラディッツと同等です。
そこでヤムチャは危なげなく勝利します。しかし、余裕綽々で構えていたところ、瀕死のサイバイマンに取り付かれて自爆され、重傷を負ってしまいました。この時の倒れたヤムチャのシーンだけ切り取られ、「無茶しやがって」に引っかけて「ヤムチャしやがって」などとネタにされることも多いです。
意外かも知れませんが、結果はともかくとして戦闘内容で見ると、ヤムチャはサイバイマンに勝っているのです。
『ドラゴンボール』の主人公と言えば、孫悟空が常識。
そんな常識を覆す衝撃的なスピンオフが『ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件』です。2016年に「ジャンプ+」で連載開始されるやいなや、その突飛な設定と意外に奥深い物語で話題となりました。作者はドラゴン画廊・リー。
- 著者
- ドラゴン画廊・リー
- 出版日
- 2017-11-02
転生系のお約束として、主人公は冴えない名もなき普通の少年でした。それが突発的な事故によって、気が付くとヤムチャになっていた、というのが始まりです。時間軸は最初のドラゴンボール集めが終わったころ。悟空が亀仙人に弟子入りする直前です。
自分がヤムチャになっていることに気付いた主人公は、『ドラゴンボール』の物語の顛末を思い出して、ヤムチャとして成り上がることを決意。奮起して修行に励むのでした。
非常に突拍子もない始まり方ですが、随所に原作へのリスペクトが込められており、パロディに徹しつつも真摯に描かれていきます。
たった1人、未来に起こる出来事を知るヤムチャは順調に活躍していくのですが、そこに思わぬ伏兵が……。予想外過ぎる乱入者とその結末は、原作では決して描かれることのない組み合わせでした。
「転生なんて」、「スピンオフなんて」と思う方にこそぜひ一読してほしい一作となっています。
ヤムチャの拳法は明言されていませんが、おそらく我流。自己流であることを考れば、きちんとした師匠に就いた悟空(亀仙人の前にも、養父である達人孫悟飯に手ほどきされていた)達と渡り合っていることから、案外天才キャラなのかも知れません。
ヤムチャの代名詞、狼牙風風拳。一匹狼で鳴らしたヤムチャらしい、狼をモチーフとした高速の5連撃です。足元がお留守なのが弱点。そして狼牙風風拳を昇華させた、新狼牙風風拳も忘れてはいけません。天津飯には通じませんでしたが、狼牙風風拳の倍の攻撃を繰り出すことが可能です。
悟空の得意技かめはめ波も習得済み。またそれをアレンジしたのか、ヤムチャのオリジナルである繰気弾という技も使います。気功波を操るだけと言えばそれまでですが、高威力を確実に当てれば充分必殺技となり得るので侮れません。
その他、地味に便利な舞空術も使いこなしています。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
- 1993-11-01
女性好きなのに苦手という困った性癖のヤムチャは、初期から付き合いのあるブルマだけがまともに取り合ってくれる相手でした。
一時はブルマの実家であるカプセルコーポレーションに寝泊まりしており、両親公認の仲でもあったのです。
ところが、気が付けばブルマはベジータとくっついてトランクスを出産。詳しい経緯は語られていませんが、ヤムチャの浮気性が原因だったそうです。
後述しますが、原作者の鳥山明からも散々な将来が語られており、なかなか悲惨。初期に結婚に憧れていることが語られていましたが、結局それが叶ったかどうかは不明となっています。
物語を通して、ヤムチャの戦績は通算18戦8勝8敗2分です。弱い弱いと思われがちですが、先に挙げたサイバイマン戦で勝っていることからわかるように、ヤムチャはそう弱くないのです。ただ、活躍が初期に偏っているだけで。
初登場は盗賊として悟空一行を襲った場面。悟空が本調子でなかったために負けこそしませんでしたが、当時まだ苦手だったブルマの前に退却していきなり1分け。ヤムチャのヘタレ伝説はここから始まったと言ってもいいかも知れません。また、この時にヤムチャが悟空に入れた一撃が、ヤムチャから悟空へ与えた最初で最後のダメージでもありました。
落ち目の契機は第22回天下一武道会で天津飯と対戦した時のように思えます。中指立てて威勢良く啖呵を切ったことが見事にフラグとなり、返り討ちに遭って骨折し白目を剥くことになりました。続く第23回大会にも出ますが、シェンに敗北したことで3大会連続初戦敗退の記録を打ち立てます。
ナッパが作ったサイバイマンについては前記の通り。
人造人間編では、仲間の中で最初に20号の犠牲者となりました。仙豆で復活後は戦闘自体を嫌がります。
しかし、セルゲームには自ら志願して参加した辺りから、ヤムチャが完全なヘタレではないことがわります。残念ながらセルジュニアの餌食となりましたが。
総じて、ヤムチャは弱いわけではなく、戦う相手が格上であることが多いがために大敗が印象的になってしまうという悲劇のキャラなのです。
このように何かと不遇なヤムチャですが、しかし、だからこそファンに愛されるネタキャラとしての地位を確立しているといえるのではないでしょうか。アニメでは、ヤムチャが中心の回が放送されるなどしています。
ヤムチャは噛ませ犬でも、戦績が情けなくても、友情には篤く仲間のピンチには必ず駆けつける男です。特筆すべきすごい部分はなくとも、そういった優しい、いい人という人柄が仲間もファンも惹き付けるのです。その証拠になるかわかりませんが、クリリンは終始ヤムチャを「さん」付けで呼んでいました。
なお、そんなヤムチャですが、鳥山明によると最終回後は女性好きでありつつも苦手(ブルマが例外)を克服するためホストクラブに勤めた挙げ句、クビになったそうです。その後はプーアルと流れの用心棒暮らしで、たまに天津飯の手伝いに行くこともあるとか。
原作者からの扱いもなかなか悲惨なヤムチャです。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
ここまで良くも悪くもヤムチャの魅力についてたっぷりご紹介してきました。それでは実際に、当該場面でどのような発言をしてきたか、ベスト5形式で見てみたいと思います。
第5位:
「うおおおお~~~っ!! はっ、歯がとととれた!! オ、オレのり、り、りりしいカオが~~!!!」(『ドラゴンボール』1巻より引用)
悟空との2度目の対戦。狼牙風風拳を破られた上に、前歯を折られて戦意喪失しました。これがヤムチャのナルシストかつネタキャラへの道の第1歩でした。
第4位:
「ここまでなめられては狼牙風風拳をご披露するしかないぜ!!」(『ドラゴンボール』4巻より引用)
天下一武道会の1回戦、ヤムチャは意気揚々と挑むもジャッキー・チュンに返り討ちに遭います。奥の手の狼牙風風拳でも触れることさえ叶わず完敗。ヤムチャ最弱への道はここから始まります。
第3位:
「あっというまに白目をむかせてやろう」(『ドラゴンボール』10巻より引用)
まだ威勢だけは良かったころです。次なる天下一武道会にて、ヤムチャは対戦相手の天津飯にこう言い放ちました。しかし、結果はヤムチャの方が自分の言葉通りになってしまいます。とてつもなく残念な場面。
第2位:
「おまえたちがおもっているほど、この化物たちは強くなかったようだな。
のこりの4匹もこのオレひとりでかたづけてやるぜ……」(『ドラゴンボール』18巻より引用)
ベジータ達サイヤ人が生み出した栽培マンを退け、誇らしげなヤムチャ。ご承知の通り、勝って油断してた彼はこの後、栽培マンの自爆によって重傷を負います。試合に勝って勝負に負ける。
第1位:
「ちきしょう!!!
オレはやらねえぞ!!! 見物だけだからな!!!」(『ドラゴンボール』29巻より引用)
人造人間編の冒頭、早々とやられてしまったヤムチャはおよび腰になります。それでも仲間達は次々と人造人間と戦う悟空の援護に向かい始め、彼も渋々続きました。ヤムチャのヘタレ具合ここに極まれり。
いかがでしたか?
ヤムチャがいかに愛されるキャラとなったか、ご理解いただけたのではないでしょうか。