佐藤大輔のおすすめ書籍5選!代表作『征途』や大人気マンガ、最新最終作など

更新:2021.11.14

多くの未完作品を残して2017年に亡くなった伝説の作家、佐藤大輔。架空の戦争や戦闘を表現した「仮想戦記」を得意とし、彼にしか描けない独特の歴史観で読者を楽しませてきました。今回はそんな彼のおすすめ作品を厳選してご紹介していきます。

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佐藤大輔とは

 

1964年に石川県で生まれた佐藤大輔。小説家やゲームデザイナーとして活躍していました。

駒澤大学在学中は、ボードゲームデザイナーとして収入を得る才能を発揮しながらも、留年をくり返していたそう。その後はゲーム情報雑誌でライターの経験を積み、1991年に架空戦記作家としてデビューしました。

1990年代は「征途」シリーズや「レッドサン ブラッククロス」シリーズなど、彼の代名詞ともなる作品の執筆に取り組み、その地位を確固たるものにしていきました。

その後も小説を書きながらゲームの監修をおこなうなど精力的に活動していましたが、2017年3月に虚血性心疾患で52歳の若さで亡くなりました。

また佐藤は、シミュレーションや情報の分析をかなり細かくおこなう完璧主義者としても知られています。それゆえに大の遅筆家で、現在完成しているシリーズは『征途』のみ。彼が亡くなった際は、早すぎる死を悲しむとともに、もう二度と作品の続きを読めないことを惜しむ声が多くあがりました。

しかしそれでも、唯一無二の架空戦記作家として才能を発揮した佐藤の作品は、今もなお多くの人々を楽しませています。

佐藤大輔の代表作であり、貴重な完結作品『征途』

 

本書は、戦艦大和の臨時指揮官となった藤堂明と、その息子と孫の3世代にわたって戦後50年間の軌跡を描いた一冊です。

登場人物も多く、壮大なスケールの超大作で、佐藤大輔の代表作といえるでしょう。

著者
佐藤 大輔
出版日
2017-09-20

 

戦時中のレイテ沖海戦で、ソ連に分割統治をされることとなった日本。これによって大きく運命を変えられたのが、藤堂家でした。国と同様に、家族をソ連側と日本側に分断されてしまったのです。南北分断国家となった激動の時代のなかで、軍人一家が歴史に翻弄されていきます。

「人生とは驚きに満ちたものなのですね」
「その通りだ。驚きに満ちている。産道を潜り抜ける時に最初の驚きを味わい、脳から心臓がその活動を止める時に最後の驚きを発見し、死ぬ」
後藤田は手を軽く振って言った。
「悪いな、帰る前にカーテンを開けていってくれ。私は初雪が見たいのだ」(『征途 - 愛蔵版』より引用)

これは、日本の南北統一を目指す元公安調査情報庁長官の後藤田と、彼の右腕である鹿内の会話。架空戦記小説ですが、設定が非常に細かくかつ揺るぎがないので、まるでドキュメンタリーのように読者を惹きこむ力があります。

巻末に収録されている短編「晴れた日はイーグルにのって」もあわせてお楽しみください。

大きな歴史改変が話題を呼んだシリーズ『レッドサンブラッククロス』

 

本書は、『征途』と並んで佐藤大輔を代表する作品です。

日本とドイツによる第三次世界大戦という架空戦争をメインに、アメリカとロシア、イギリス、フランスなどの大国が戦闘に巻き込まれていくさまを描いています。

著者
佐藤 大輔
出版日

 

「合衆国侵攻作戦」「インディアン・ストライク」「バーニング・アイランド」「死戦の太平洋」「パナマ侵攻」から成るシリーズで、実際に存在する国々の架空戦記を楽しめる内容となっています。

ストーリーは大胆なフィクションもあれば、史実をもとにしている部分もあり、現実と虚像の渦巻くような感覚が読者を病みつきにさせるのでしょう。

特に戦闘シーンは、戦闘機や攻撃方法なども詳細に記されていて、読み応え抜群。ミリタリーものが好きな方には自信をもっておすすめできる作品です。

物語には多くの国が登場しますが、どのストーリーも多角的に捉えられている客観的な表現なので、物語に集中して読むことができるでしょう。

佐藤大輔が描く壮大なファンタジー物語『皇国の守護者』

 

本作の舞台は中世末期。とある国に、人間と天龍という2種類の知性をもつ生命が暮らしていました。

人と天龍がともに生活をし、繁栄していた「皇国」。ここでは1年が13ヶ月、1日は26時間で時が流れていきます。国の財政は貿易で支えられていましたが、ある日海外からの侵略が生じ、国内の権力闘争に発展してしまうのです。

著者
佐藤 大輔
出版日
2013-05-23

 

佐藤大輔ならではの軍事技術に関する深い知識が光る本作。主人公は、猛獣サーベルタイガーを装備した人と獣の混合軍隊「剣虎兵」の中隊付中尉を務めている男性です。

彼はシリーズをとおして仲間を簡単に裏切ったり、そうかと思えば有り金すべてを人のために使ったりと、どこかちぐはぐな部分がありつつも不思議な魅力をもっています。

「絶対の自信とはもちろん嘘であった。何が起こるかわからないというのが本音だった。しかし同時に、この瞬間の新城直衛、その内心には一片の不安もなかった。自身の手に余る理由に基づいた敗北によって純化されていたのだった」(『皇国の守護者』3巻より引用)

現実と異なる時間概念のなかで、ファンタジー要素と軍事的な技術が見事に絡んだ作品です。ミリタリーもの初心者でも読みやすいでしょう。

佐藤大輔が原作を手掛けた大人気マンガ!『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』

 

佐藤大輔が原作を手がけ、佐藤ショウジが作画を担当したコミック作品です。

2010年にはテレビアニメ化もされ、多くのファンを魅了しました。

著者
佐藤 ショウジ
出版日
2011-05-06

 

主人公は、藤美学園高等学校2年生の小室孝。ある日彼は、校門の前で教師が不審者に噛みつかれているのを目撃しました。噛まれた教師は他の生徒や教師に同じように噛みつき、ゾンビのような「奴ら」が増幅。学園は生ける屍だらけになっていきます。

孝は、自身の命を守るために親友だった永を殺害。それでも「奴ら」との戦いはまだまだ終わりません。

物語は疾走感を伴ってどんどん進んでいきます。ある種のパンデミックを生き延びるサバイバル漫画で、そのなかで孝の大切な人が暴漢に襲われそうになったり、アメリカまで脅威が広がり政治が混乱に陥ったりとさまざまに展開していきます。

イラストは綺麗なものの、グロテスクな描写もあるので、苦手な方は注意してください。

永遠に最終巻のこない佐藤大輔の幻の一冊『帝国宇宙軍1-領宙侵犯-』

 

舞台は宇宙に建てられた銀河帝国。700年前に地球から宇宙を目指した文明疎開船が、高元跳躍に失敗して別次元にスリップ、地球人の末裔によって建てられたものです。

現在帝国で軍の将校を務めているのが、天城真守という人物。護衛船ブルーベルが、隣国が領有権を主張している星系に侵入したとして攻撃を受けたことをきっかけに、宇宙紛争に突入していきます。

著者
佐藤大輔
出版日
2017-04-20

 

国同士が互いに領有権を主張して対立、各国が思惑を抱えながら駆け引き……本書で描かれているのはまるで現実の地球のようです。

主人公の天城は、仕事を辞めたいと思いながらもなぜか出世してしまう憎めない人物。「佐藤節」といわれるセリフめいた話し方は抑えられ、新鮮な印象を受けるかもしれません。出世欲がなく力の抜けた天城が、あれよあれよという間に激しい宇宙紛争に巻き込まれてしまう姿も面白いでしょう。

ここから、というところで絶筆になってしまったため続きを読むことができませんが、それを踏まえても一読に値する作品です。

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