古代エジプトでは、ワニは生命の源であるナイル川を象徴する聖なる動物として崇められた一方、その何でも食らいつく獰猛さから邪悪な力を持った悪魔の化身とみなされることもあり、恐れられていました。日本には野生の種が生息していないため、かつてはサメと混同されることもあったそうです。今回は、そんな彼らの生態や種類ごとの特徴、涙を流すワケ、未来に役立つかもしれない脅威の免疫力などを解説していきます。あわせてワニが登場するかわいらしい絵本も紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
いまから2億年以上前の三畳紀に出現した爬虫類で、ワニ目に属するものを指します。恐竜たちが大量に絶滅した時代をワニがどのように生き延びたのかは解明されていませんが、体の大きさは変われど当時とほぼ同じような形態のまま今日まで生存してきました。
生息地は世界各地の熱帯や亜熱帯、温帯の淡水域です。なかには海水で生活する能力を備え、海洋島へ分布を広げた種もいます。
日本に野生のワニは生息していません。ただイリエワニという海水への耐性がある種が、東南アジアから潮の流れに乗って、鹿児島県や沖縄県などにたどり着いた例があるそうです。
餌とするのは魚類や貝類、甲殻類、爬虫類、哺乳類など。また木に止まっている鳥類をジャンプして捕獲することもあります。
聴力に優れていて、広い音域を聞きとることができるそうです。また高い社会性を有しているといわれており、個体同士のコミュニケーションが活発。繁殖の時、獲物を集団で狙う時、親を呼ぶ時など、鳴き声を使い分けてやりとりをします。
寿命は、野生下では20~30年、動物園など飼育下では80年ほど。都道府県に届け出を出し審査にとおれば、種類によってはペットとして飼うことも可能です。
ワニ目は、「クロコダイル科」「アリゲーター科」「ガビアル科」の3つに分類されます。
クロコダイル科
クロコダイル科のなかでも現生する爬虫類のなかで最大といわれているのが、「イリエワニ」です。全長は平均で4m、大きくなると8mほどになるそう。攻撃的な性格をしていて、人食いワニともいわれています。生息地は東南アジアやオーストラリアなどです。
「ナイルワニ」はイリエワニと並んで人食い種と呼ばれています。目の前を横切るものを見境なく何でも食べる習性があり、1回の食事量は自分の体重の半分ほど。全長は5m前後なので、かなり巨大だといえるでしょう。重さ1tを超える個体が見つかった記録が残っているほか、かつて東アフリカのブルンジ共和国では、1匹の個体によって300人以上が犠牲になった事件があったそうです。
「オリノコワニ」は全長は6.5mほど、南アメリカ大陸のオリノコ川周辺に生息しています。乱獲で数を減らしてしまっていることが問題視されています。現在確認されている生息数は550頭程度だそうです。
アリゲーター科
代表されるのは、ミシシッピワニとも呼ばれる「アメリカアリゲーター」でしょう。比較的温和な性格だといわれています。全長は4mほど。口の先端がU字型に丸くなっているのが特徴です。
ガビアル科
「インドガビアル」という1種のみが分類されています。全長は5m前後で、性格は穏やか。水中で動くのに特化していて、口は長細い形をしています。息継ぎをしなくても3時間近く潜水できるそうです。むしろ大型の個体は、陸上では上手に動くことができません。
繁殖期になると、オスが口の隆起を使って爆発音のようなものを出して求愛をします。
生息地の破壊や乱獲のために数を減らしていて、現在は絶滅危惧種に指定されています。
ヨーロッパで「ワニの涙」というと、嘘つきであることを意味します。中世では、「ワニは獲物をおびき寄せるために赤ちゃんのような泣き声を出して、おびき寄せた人間を食べる」とされてきたことが由来になっているようです。
実際、彼らは獲物を食べる時に泣いているように見受けられます。これは唾液を分泌する唾腺と涙腺が近い位置にあるため、唾腺が刺激された際に一緒に涙が出てくるのだとか。
このように涙を流すワニの目に蝶などの昆虫がとまっている写真が話題になったことがあります。蝶や蛾、蜂などの昆虫は塩分を求めて動物の涙を摂取する習性があり、ワニは追い払おうとしないためよく見られる光景だそうです。
その一方で、ワニが獲物を捕食する際は「デスロース」と呼ばれる行動をとることもあります。自分の体をグルングルンと回転させることで獲物の肉を食いちぎる行為のことで、文字どおり狙った獲物が死ぬまで回転。標的になったらひとたまりもありません。
ワニに代表される爬虫類は、細菌感染に対する強力な防御をもつように進化してきました。細菌がたくさんいるであろう水辺の環境に住み、腐肉を食べるからです。
この強い免疫機構が、人間の病気に役立てられようとしています。
彼らの血液中のタンパク質は、糖尿病性潰瘍、重度のやけど、および従来の抗生物質に耐性のあるスーパーバグと戦うための強力な抗生物質となる可能性があるそう。実験では、ワニの血液から抽出したタンパク質がMRSAという細菌を殺すことが示されました。免疫力が弱ったAIDS患者や、臓器移植の患者の治療などに役立つと考えられています。
はやくもワニの血液からつくった局所軟膏が販売されようとしており、やけど患者の皮膚にに塗布すれば、損傷した皮膚が治癒するまで感染を止めることができるかもしれないとの発表がありました。
- 著者
- ["小風 さち", "山口 マオ"]
- 出版日
人気の「わにわに」絵本シリーズで、本作では水が大好きな彼らの様子を楽しむことができるでしょう。見た目はちょっと怖いですが、シャワーヘッドをマイクに見立ててカラオケをするなど、おちゃめな姿を見ることができます。
おもちゃをお風呂に浮かべる際は「ぼくん ぼくん ぷくん」など、オノマトペが効果的に使用されているので、読み聞かせにもぴったり。
お風呂に入るのを嫌がるお子さんに見せれば、大好きになること間違いなし。親子で読みたい物語です。
- 著者
- 五味 太郎
- 出版日
虫歯になったワニと歯医者さんの物語。2人ともおんなじ言葉を言うのですが、立場の違いで異なる意味になっていて、心の掛け合いをユーモラスに楽しめます。
イラストもシンプルで、小さなお子さんでも理解できるでしょう。歯磨きのしつけにぴったりです。
嫌だ嫌だと思いながらも困った顔をして歯医者に向かったワニは、最後には歯磨きをしっかりしようと心に決めます。彼の成長がわかり、歯磨きの大切さも学べる一冊です。