「読み継がれる」という言葉にぴったりの名作は数々あります。『ぼくらの七日間戦争』もその1つ。1986年の発表以来人気は衰えることなく、名作に付き物の映画化もされてきました。 2019年にはアニメ化も予定。大人も子供も引きつけてやまない『ぼくらの七日間戦争』の魅力を探ってみたいと思います。なお、ネタバレも含みますのでご注意ください。ちなみに漫画作品はスマホアプリで無料で読むこともできます!
まずは『ぼくらの七日間戦争』のあらすじをなぞってみましょう。
東京下町の中学校。夏休み前日の終業式、1年2組の男子生徒が全員忽然と姿を消してしまいます。わけがわからず慌てる大人たち。しかしそれは子供たちの反乱の始まりであったのです。
横暴な親や先生たちに対して反旗を翻し、廃工場にたてこもります。不順異性交遊を懸念して女子を仲間に引き入れなかった彼らですが、その後、女子はスパイとして活躍します。
しかし子供たちの戦いが始まる前に、想定外の事件が発生。仲間の1人であるはずの柿沼直樹が誘拐事件に巻き込まれて参加していなかったのです。そんな予想外の展開にも彼らは恐れず闘いを挑みます。廃工場で出会ったホームレス瀬川を仲間に引き入れ、女子の協力のもと、立てこもりながら誘拐事件にも立ち向かうことに。
その一方で、大人たちは廃工場に突入すべく刻々と準備を進めていました。乗り込んでくる大人に浴びせかける仕掛けの数々。そして爽快なラスト!
- 著者
- 宗田 理
- 出版日
- 2014-06-20
ザッとあらすじをみただけでもワクワクしてくるような内容です。大人たちに反旗を翻し仲間たちで立てこもるなんて!誰もが子供の頃、1度は夢に描いた「大人たちに一泡吹かせる」という夢を彼らはみごとにかなえてくれます。
それだけでは単純なお話になりますが、思いがけず起こる事件や難題に立ち向かう子供たちの勇気と知恵と行動力もお見事!
この作品が発表された時代は、バブル初期の経済的にもはじけていた頃。しかし学校ではいじめによる自殺や体罰など様々な問題が表面化してきた時代でもありました。男子たちが外の女子たちとの連絡に使う手段として使ったのはFM発信機。今では携帯があれば済むことですよね。
『ぼくらの七日間戦争』は1988年に映画化されています。キャストとして宮沢りえが女優デビュー&初主演となり、こちらも話題でした。映画では誘拐事件などの一件は削除され、子供たちの立てこもりとそれを阻止しようとする大人たちとの戦いと、中学生の友情に重点が置かれるストーリーになっています。
「宮沢りえ」やその親友「五十嵐美穂」などの起用もあり、女子の比重が重くなっているのも特徴ですね。 当時映画ブランドとも言うべき角川出版の「KADOKAWA」映画として話題を集めます。代々的なオーディションでスターを輩出してきた角川映画ですが、この作品でもオーディションにより大沢健などの俳優を生み出しました。
『ぼくらの七日間戦争』は作者の宗田氏によれば「宮城県仙台市」が舞台だそうですが、ロケは「千葉県館山市」の実際にある遊戯施設の廃墟で撮影が行われたそうです。巨大な戦車の登場も話題の1つでした。
『ぼくらの七日間戦争』は原作では同じ登場人物により「ぼくらシリーズ」として続編がたくさん出ています。どれも独立したストーリーなので、順番に読まなくても問題ありません。映画は『ぼくらの七日間戦争2』以後制作されていませんが、2019年アニメとして復活する予定。30年以上前の物語がどんな形でアニメとして甦ってくるのか楽しみになりますね。
漫画作品はスマホアプリで無料で読むこともできます!
- 著者
- 宗田 理
- 出版日
- 2009-07-01
作者の宗田理は2018年で90歳になられます。ということは、『ぼくらの七日間戦争』を書かれた時は50代後半だったということになりますね。まるで中学生たちが書いたような瑞々しさ。
ぼくらシリーズは大人にも人気なのですが、圧倒的に子供からの指示が多いのが特徴です。元々大人向けに書いた作品が子供にウケ、後の人気シリーズのヒットにつながっていきました。主人公が子供や老人という設定と、彼らを通して代弁される自分たちの気持ちが子供たちの心を動かしたのでしょう。
『ぼくらの七日間戦争』はストーリーの面白さもさることながら、キャラクターの個性的な魅力に惹きつけられるのが特徴です。際立つ何人かを挙げてみましょう。
登場人物の数がとても多く、これはほんの一部。まだまだ魅力的な人物たちがたくさんいます!
『ぼくらの七日間戦争』を読むと、人によって好きな場面やセリフが違うのではないでしょうか。読んだ人がその時の自分の気持ちや思いを投影できる場面やセリフが山ほどあるのです。それがこの作品の人気の秘密でもあるようです。
細かいやりとりの1つ1つが笑えます。
こんなコミカルな場面がこれでもかと詰め込まれているのが本作の魅力。 しかしやはり不動の人気はラストで子供たちが打ち上げる花火の場面のようです。読者が登場人物の子供たちと同じ気持ちで、いろんなモヤモヤしたものを吹っ飛ばしてくれるような、感動的な場面です。
『ぼくらの七日間戦争』はどんな結末を迎えたのでしょうか。 彼らはどんなふうにこの騒動を収めるつもりだったのでしょうか。
結果を言うと、彼らは廃墟から追い出されることもなく、無理矢理引きずり出されることもなく、捕まったりもしません。このシリーズは彼らの成長とともに続いていくわけですから、この事件がきっかけでどうにかなってしまうことはないわけです。
しかしその後の彼らにとって、この事件が大きな出来事としていろいろな意味で彼ら自身に大きな影響を及ぼしていくことになります。
立てこもりの最後に大きな花火を打ち上げますが、『ぼくらの七日間戦争』はまさにその花火のような彼らの爆発であり思い出づくりでもあったのではないでしょうか。ラストで、子供たちの姿を探す大人たちがしみじみ話す会話がとても印象的で、『ぼくらの七日間戦争』が残す学びでもあるようです。
「われわれは子供を“いい子”にしようとしています。
われわれのいう“いい子”とは何でしょうか?
それは、おとなのミニチュアですよ。
つまりおとなになったとき、社会の一員として約に立つように仕込むのが教育なのです」
「たしかにそれが、それが期待される人間像かもしれません」
「これは、大人優先の発想です。
身勝手とは思いませんか?
われわれは一度だって、子供の目で世界を見たことがあるでしょうか?
子供は、おとなの囚人ではないのです」
(『ぼくらの七日間戦争』より引用)
- 著者
- 宗田 理
- 出版日
- 2014-06-20
- 著者
- 宗田 理
- 出版日
- 2009-07-01
読んでみたいけど小説が苦手という方には、コミック版もおすすめ。映画を元にしたものなど、以前にも出されていましたが、こちらは原作を基本にしています。
子供たちが占拠していた廃工場を「解放区」と呼んでいましたが、こちらでは「自分たちの国を作る」という設定になってさらに分かりやすくされています。魅力的な作風である爽快感が、イラストを交わることによってさらに直感的に感じられる作品です。
アニメ『ぼくらの7日間戦争』が2019年12月13日から公開になります。過去に二度、実写映画が公開されましたが、今回は初めてのアニメ化です。
本作は2020年の北海道が舞台。内気な主人公・鈴原守は、幼馴染の千代野綾に思いを寄せていますが、綾の東京への引っ越しと本音を知り……。
キャストには、今を時めく若手俳優を起用されました。主人公をの鈴原を北村匠が、ヒロイン・千代野を芳根京子が演じます。1988年に公開された『ぼくらの七日間戦争』にも出演していた宮沢りえも今回特別出演が決定しています。
詳しいストーリーや劇場情報は公式サイト・劇場アニメ『ぼくらの7日間戦争』をご覧ください。
自分たちだけの世界を作り、大人たちと思いっきり戦うという永遠の子供たちの夢をかなえてくれる『ぼくらの七日間戦争』で、かつて子供だった頃をもう1度思いだしてみませんか?