小説『ガリヴァー旅行記』をネタバレ解説!有名風刺小説のあらすじ、結末まで

更新:2021.3.11

旅に取り憑かれた船医のガリヴァーが、小人の国、巨人の国、空飛ぶ島、理性ある馬の国などの不思議な国々を訪れる物語、『ガリヴァー旅行記』。児童文学として紹介される事も多い物語ですが、本来は大人向けの諷刺小説です。 この記事ではそんな本作の見所を徹底紹介します!

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小説『ガリヴァー旅行記』の特徴や、あらすじを紹介!「リリパット国渡航記」の内容とは?

『ガリヴァー旅行記』は、第1篇と第2篇だけを、子供向けに編集したものが数多く出版されていますが、できれば完訳版を読むことをおすすめします。しっかりと物語の全容を知ることができ、その深い世界を堪能できることでしょう。
 

翻訳については、平井正穂訳の岩波文庫版や、山田蘭訳の角川文庫版など、さまざまです。原田範行訳の『ガリヴァー旅行記 ヴィジュアル版』は、子供向けながら多少のダイジェストがあるだけで、最後の航海まで収録されています。

まずは、そんな本作のあらすじをご紹介しましょう。

著者
ジョナサン・スウィフト
出版日
2011-03-25

イギリスの医者ガリヴァーは船医となり、妻子を残して旅立ちますが、ある時、猛烈な嵐に遭って難破してしまいます。ただ1人漂着した浜辺で目覚めると、身長15センチメートルほどの小人の国の軍隊に縛り上げられていたのでした。

捕えられ、監禁された彼でしたが、やがて少しずつこのリリパット国の言葉を覚え、皇帝とも親しくなります。この国は、やはり小人の住む隣国・ブレフスキュ国と、2世代に渡る戦争をしています。その理由は「卵の殻の正しい剥き方は、大きな方の端から割るか、それとも小さな方から割るか」というものです。

これは、当時(18世紀前半)のイギリスとフランスを諷刺したものといわれますが、著者のスウィフトがいかに戦争を馬鹿馬鹿しいものと考えていたかがわかります。

リリパット国で歓待されていたガリヴァーは、お礼にブレフスキュ国の艦隊を拿捕して戦争を終わらせます。ところが、一部の政治家に嫌われていた彼は死刑にされそうになり、それを知ってブレフスキュ国に逃れました。そして、浜辺に流れ着いたボートに乗ってイギリスに帰るのです。

これが、この作品の第1篇にして最もよく知られたエピソードです。子供向けの本では、このエピソードだけのものもあります。また、映画やテレビなどの映像化作品でも、このエピソードを中心としたものが多くなっています。

『ガリヴァー旅行記』の登場人物を紹介!

レミュエル・ガリヴァー

この作品の主人公で医者。船医となって旅をし、何度も困難な状況に陥りますが、旅の魅力に抗えないのか、懲りずに旅に出て行きます。

リリパット国皇帝

小人の国の王様です。ガリヴァーに同情的でしたが、最後は彼の目を潰し、餓死させる刑を決定します。

グラムダルクリッチ

第2篇で訪れた巨人の国の少女です。ガリヴァーをペットか赤ん坊のように愛し、世話をしてくれました。
 

ラピュータ人

空飛ぶ島に住む人々です。身分の高い彼らは、絶えず物思いにふけっています。ですので、必要な時は召し使いに専用の道具で叩いて貰わないと、現実に注意が向きません。

フウイヌム

馬の姿をした、人間並に知性の高い種族です。争う事をせず、死を自然な事として受けいれ悲しまず、道徳的には人間より優れています。奪い合ったり殺し合ったりする人間を軽蔑しています。

作者、ジョナサン・スウィフトを紹介!彼の生涯とは?

 

彼は、1667年にアイルランドのダブリンで生まれました。生前に父をなくし、幼くして母と別れ、伯父のもとで育てられるという不幸な幼年時代でした。

大学を卒業するとイギリスに渡り、学問研究にはげみます。教会の司祭など、聖職者の仕事をしながら政治の活動をおこないますが、望んだような地位には就けません。

しかし、失意のうちに帰ったアイルランドで、最高傑作『ガリヴァー旅行記』を書き上げたのでした。その後、1745年に亡くなっています。

 

『ガリヴァー旅行記』は風刺小説だった!込められた皮肉とは?

前述したとおり、この作品は元々児童文学ではなく、大人向けの諷刺小説でした。それもかなり痛烈なもので、著者自身「読者を楽しませるためにではなく、怒らせるために書いた」と言っています。

当時のイギリス人やヨーロッパ人に対する批判がかなり具体的に盛り込まれているのですが、現代の日本人である私たちには、何が何に対応しているのか細かいところまではわかりません。それでも、人間一般に対する強烈な嫌悪と怒り、そしてからかいの気持ちは伝わって来ます。

第1篇で訪れるリリパット国の大臣は、政治的な才覚ではなく、綱渡りの巧さで任命されます。これは当時のイギリス政界を主導していたウォルポールの、理想を持たない現実主義を批判したものといわれているのです。

第3篇で訪れるラピュータの支配者たちは、すぐに物思いにふけりだして現実が見えなくなります。これは科学者で数学者のニュートンをモチーフにしているといわれます。背景としては、当時のアイルランドとイギリスの格差に憤っていたスウィフトにしてみれば、知性が高いのに数学や物理学に没入している人々を見るのは苛立たしかったのでしょう。

彼は当時の社会の腐敗ぶりを顕にするとともに、人間の権力欲、物欲、偽善、虚栄心、その他の悪さや愚かさ醜さを、これでもかと誇張して描きます。そして、非常に残念なことですが、それらの皮肉は現代でも充分に通用するのです。

『ガリヴァー旅行記』には日本が登場する!?その理由を考察!

第3篇の終盤で、ガリヴァーは日本に立ち寄ります。彼の渡航先で、ただ1つ登場する実在の国です。スウィフトは、なぜわざわざ実在の国を登場させたのでしょうか。

当時、日本は鎖国中で、貿易が許されたヨーロッパの国はオランダだけでした。もしかしたら、スウィフトはオランダに批判的だったのかも知れません。

オランダ商人はキリスト教徒にとって屈辱的な「踏み絵」を受け入れたのに対して、ガリヴァーは免除を乞うたことが強調されているので、そのように読む人もいます。

あるいは、鎖国して貿易を制限する生き方を選んで、戦争を避けた日本を賞讃したり羨んだりしていた、とする意見もあります。一方で、当時オランダ人が書いた旅行記のパロディに過ぎないのではないか、とも考えられているのです。

私たち日本人にとっては気になる部分ですが、内容からははっきりと肯定も否定も読み取れず、曖昧な部分であります。

『ガリヴァー旅行記』の謎!火星の衛星を言い当てたって本当?

第3篇で、ガリヴァーはラピュータ島の天文学者の発見として、火星に2つの衛星があることを述べています。現実に火星の2つの衛星が発見されたのは1877年ですから、スウィフトは151年も前にそれを予言していたことになりますが、本当でしょうか。

実は、この予言をしたのは彼ではなく、有名な天文学者のヨハネス・ケプラーでした。この時代、すでに木星に4つの大きな衛星がある事が知られています。

そこでケプラーは、地球に1つ、木星に4つ衛星があるのだから、火星には2つ衛星があるのではないか、と予測を立てていました。スウィフトはそれを知っていて、小説の参考にしたのでしょう。

概して彼は、浮き世離れした研究をしている科学者や数学者に批判的であったにもかかわらず、当時の科学についてよく勉強していました。ラピュータ島の磁気浮上航行原理など、今日のSF作品でも通用しそうです。

『ガリヴァー旅行記』のテーマとは?内容から考察!

優れた文学の多くがそうであるように、この作品もさまざまな読み方が可能です。そのなかでも作者の人間に対する批判的、というより意地悪な視点だけは疑いようがありません。

人間の身勝手な不公正さ、視野の狭さ、趣味の悪さ、独占欲などの負の側面を、極端に誇張して描いています。そこだけに注目すると、作者のスウィフトはよほどの人間嫌いだったのだろうと思ってしまいます。

しかし彼は、この作品から想像されるような厭世的な世捨て人ではありませんでした。生涯に渡って公職としては聖職者であったこと、前半生の活発な政治活動などを考えると、むしろ人と関ることに積極的であったとすら思えます。

そう考えると本作も単なる意地の悪い人間批判ではなく、自分の愚かさや悪さを自覚して、そちらに陥らないように注意してほしいという、願いや希望が込められているのかも知れません。

『ガリヴァー旅行記』の名言を紹介!

 

ブロブディンナグ国(巨人国)の王が、ガリヴァーからヨーロッパの国々について話を聞いたときのこと。

「陛下がなによりもおどろかれたのは、平和なときに、
しかも自由な国民の中に、
金で雇われる軍隊がつねに存在しているという話を聞かれたときだった。
陛下は、もしおまえたちが、
自分たちがすすんで選んだ代表者たちによって、治められているとすれば、
いったい、だれを恐れ、だれと戦うつもりなのか、想像もつかない、といわれた」
(『ガリヴァー旅行記』より引用)

また、ヨーロッパの歴史についてのブロブディンナグ国王の意見。

「陛下は、歴史などといっても、
結局は、陰謀、反乱、殺人、虐殺、革命、追放の寄せ集めにすぎず、
すべて、人間の貪欲、党派心、偽善、裏切り、残酷、
怒り、狂気、憎悪、嫉妬、情欲、悪意、野心が生み出した最悪の結果ではないかといわれた」
(『ガリヴァー旅行記』より引用)

このように、要素や特徴を列挙することで強調する技法は、スウィフトの得意技で作品中でくり返し使われます。

さらに、理性ある馬・フウイヌムにガリヴァーが語る、人間の戦争について。

 

「しかも、このような対立、
ことに、どちらでも良いようなくだらない問題についての対立がもとで起こる戦争ほど、
凶暴で残酷きわまりなく、また、きりもなく続くものはありません」
(『ガリヴァー旅行記』より引用)

 

「このような数多くの理由で、軍人という職業が、
あらゆる職業の中で最も名誉あるものとされています。
軍人というのは、自分にぜんぜん危害を加えたこともない同類の者を、
できるだけ多く、平気で殺すために雇われているヤフーのことだからです」
(『ガリヴァー旅行記』より引用)


 

ヤフーというのは人間のことです。

フウイヌムに、イギリスの法律と裁判について説明したガリヴァーの言葉。

「弁護士は、法廷で意見を述べるときには、
かんじんの訴訟問題が正しいか間違っているかという点には、わざとふれずに、
本題とは関係ない細ごましたことを、大声をあげ、
ものすごいけんまくで、うんざりするほどくどくどと、まくしたてます」
(『ガリヴァー旅行記』より引用)


 

ガリヴァーがフウイヌムに語る、国家の指導者。

「これからお話する、総理大臣、あるいは、首相というのは、
喜びや悲しみ、愛情や憎しみ、憐れみや怒りなどという感情は、
一かけらも持ち合わせていない人間のことで、少なくとも、
強い金銭欲、権力欲、名誉欲以外の、どんな情熱にも関係のない人間のことです」
(『ガリヴァー旅行記』より引用)

 

名言のなかに込められているのも、やはり皮肉です。しかし、やはり現代の私たちにも通じるものがあるといえるでしょう。

 

 

子供向けの絵本もおすすめ!小説が苦手な方にも

 

これまで紹介して来たように、この作品は辛口の皮肉の利いた大変に面白い物語なのですが、古典英文学ですから、文章に重みがあり、全体の長さも結構なボリュームです。

それを敷居が高いと感じた人には、まず子供向けの本をおすすめします。

 

著者
平田 昭吾
出版日
1999-01-19

ポプラ社の『ガリバーりょこうき (世界名作ファンタジー52)』は、絵本ですが、第1の航海のあらましがわかります。上下2巻に分かれた福音館文庫版は、子供向けながら、第4の航海まで収録された完訳です。

巨人の国「ブロブディンナグ国渡航記」の内容とは?

第2篇では、何もかもが巨大なブロブディンナグ国に上陸します。小人の支配するリリパット国とは正反対です。ガリヴァーは農夫に捕えられ見世物にされますが、やがて王妃に買い取られます。王妃は、ペットか人形のようにではありますが、彼を可愛がりました。

彼は宮廷の女官たちにも人気がありましたが、敬意を払われたわけではなく、裸にされたりして性的なおもちゃにもされます。巨大な女たちは、彼にとっては体の細部が拡大されて見え、体臭も強く感じられるので不潔な感じがするのでした。

ブロブディンナグ国王とは、イギリスやヨーロッパの社会や政治の話をします。ガリヴァーは善意から、火薬の作り方を教えると提案しますが、彼からさんざん戦争の悲惨さを聞いていた国王は、そんな恐ろしいことは知りたくない、と拒否。

内部がガリヴァーの部屋となっている特製の箱に入って領地を巡業しているとき、箱ごと鳥に掠われ、海に落ちたガリヴァーは、遠洋でイギリス船に発見されて祖国に帰るのでした。

「ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記」の内容とは?

またしても漂流したガリヴァーは、空飛ぶ島ラピュータに助けられます。ラピュータは島国バルニバービの移動する首都で、国王の宮廷でした。ラピュータは磁石の力によって空を飛ぶことを実現していたのです。

地上のバルニバービは、本来豊かな国でした。しかし今はラピュータに支配され、彼ら流の現実に合わない机上の科学技術を押し付けられ、最大の都市であるラガードも荒れ果てています。

ガリヴァーはイギリスに帰ろうとしますが、船を待つ間に寄ってみたグラブダブドリッブ島で魔法使いの種族に出会います。ガリヴァーは彼らに頼んで、歴史上の偉人を死者の世界から呼び出してもらい話を聞きますが、彼らは歴史に描かれたような立派な人物たちではなく、ガリヴァーはガッカリするのでした。

大きな島国ラグナグ王国に着いた彼は、不死人間ストラルドブラグの噂を聞きます。彼は大いに羨み、自分が不死であったらこんな人生を送りたいと、さまざまな妄想を思い描くのです。ところが、実際の不死人は、不死であっても不老ではないため、どこまでも老いさらばえていき、世間から厄介者扱いされて、悲惨な境涯を送っているのでした。

ラグナクを出航し日本に着いた彼は、日本の皇帝に謁見した後、長崎からオランダ船に乗ってイギリスに帰り着きました。

このラピュータという名前、空飛ぶ島という設定に聞き覚えのある人も多いでしょう。作中で主人公のパズーが言っているように、宮崎駿が監督を勤めた『天空の城ラピュタ』のモデルになっているようです。

『ガリヴァー旅行記』の結末をネタバレ解説!馬の国の話「フウイヌム国渡航記」とは?

 

第4篇が、ガリヴァーの最後の航海となりました。船長となった彼でしたが、船員の反乱に遭い、流れ着いた島に置き去りにされます。そこで、高貴で知的な馬の種族・フウイヌムに出会います。ガリヴァーはやがて彼らの気高さに心酔し、世話をしてくれる栗毛の馬を「わたしの主人」と呼ぶのです。

 

著者
ジョナサン・スウィフト
出版日
2011-03-25

この国にはヤフーと呼ばれる野蛮な生き物が居て、フウイヌムたちを悩ませていました。そのヤフーは、爪が鋭くて毛深いことなどを除けば人間にそっくり。ヤフーは利己的で欲深く、絶えず争っていました。

ガリヴァーは認めたくありませんでしたが、気高く誇り高いフウイヌムに比べると、姿だけではなく性質も、ヤフーの方が人間によく似ていたのです。

すっかり人間嫌いとなったガリヴァーは、このまま一生フウイヌムたちと暮らそうと決意。ところが、フウイヌムは野蛮な生き物であるヤフーの駆除を決定し、ガリヴァーも駆除の対象に。
 

一体彼はどうなってしまうのでしょうか。

いかがでしたでしょうか。子供向けの作品だと思っている方が多いのですが、実際は風刺が満載の、大人向けの小説となっています。この記事を読んで気になった方は、ぜひ本を手に取ってみてください。

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