シェイクスピアの4大悲劇のひとつである本作。もっとも短く、濃厚な内容であることで知られています。「3人の魔女の予言にしたがい、マクベスが王を殺す」というあらすじは有名ですが、細かい部分やセリフに関してはわからない方が多いのではないでしょうか。 今回の記事では、あらすじやセリフ、モデルに関してご紹介します。これを読んで、ぜひあなたも本作を手にとってください!
本作は4大悲劇の1つで、4つの作品のなかではもっとも短いです。
この物語は残虐な話なので、「マクベス」と口にすると必ず不幸なことが起こるという言い伝えがあります。なので、「スコティッシュプレイ(スコットランドの演劇)」という言葉におきかえる風習があったほどです。
16〜17世紀のヨーロッパでは、三一致の法則という演劇用語がありました。これは、演劇の脚本は24時間以内に1つの場所で起こる1つの物語を扱わなければならないというもの。当時は主流な考え方だったそうですが、シェイクスピアはこれを守っていません。
- 著者
- シェイクスピア
- 出版日
- 1997-09-16
スコットランドの武将であるマクベスは、森のなかで3人の魔女に出会います。彼女たちは、彼が王になるという予言を残して姿を消しました。その後、実際に彼の昇進が決定。予言は本当になったのです。
野心にかられた彼は、次は国王になりたいと望むようになります。
彼が魔女のことを夫人に話したところ、彼女は夫をそそのかして、王であるダンカンを暗殺させます。望みどおり王になった彼でしたが、自分の地位を失う恐怖から、次々と罪を重ねていくのでした……。
彼はイギリスを代表する詩人、劇作家です。本作に『リア王』『オセロー』『ハムレット』を加えた4つの作品は4大悲劇と呼ばれ、さまざまな小説や映画に影響を与えています。
- 著者
- ウィリアム シェイクスピア
- 出版日
- 1967-09-27
彼には「喜劇を書いていた時期」「悲劇を書いていた時期」「幻想劇を書いていた時期」の3つがあり、本作は悲劇の時期に書かれたものです。
この時期の彼は、人間や世界に対する洞察がずば抜けていて、物語の完成度も高いのが特徴です。登場人物のセリフも含蓄のあるものが多く、漫画や映画で度々引用されています。
ここでは、本作の登場人物を紹介します。
シェイクスピアは、作品の多くを史実や民話を参考にして作っていました。本作のモデルは、スコットランドに実在したマクベス王であるといわれています。コーダー城やダンシネインの森は、スコットランドの自然や史跡がモデルになっているのかもしれません。
史実のマクベスも、ダンカン王を殺して王位につきました。シェイクスピアの『マクベス』では、ダンカンは信望ある人物として描かれていましたが、実際には作戦に失敗して、部下の信頼を失ったという記録が残っています。
ダンカンが領地に攻め込んできたため、マクベスは戦って領土を守ったのです。スコットランド王になった彼は、法律を作ったり、キリスト教の布教に尽力したりするなどしました。イングランドとの戦争にも勝利するなど、めざましい活躍をします。物語とは違い、国民を思いやる性格だったのですね。
その後、ダンカン王の息子マルカム王子に王位を戻そうという運動が起こり、マクベスはマルカム王子に殺されました。
歴史上のマクベスは王殺しをしたものの、優れた統治をした、勇敢な人物でした。彼を悪人にしたほうがおもしろくなると思ったシェイクスピアが、本作のためにアレンジを加えたのでしょうか。
本作の見どころは、3人の魔女の言葉です。
など、意味深な予言がありますが、どういった意味なのでしょうか。
は、一見矛盾したことを言っているようで、実は人間の欲望を暴いているのです。マクベスは魔女の言葉に翻弄されて、悲劇的な運命をたどることになりました。
こちらは、物語の核心に迫るセリフです。一見すると、どんな人間にも負けないという意味にとれますが、意外な落とし穴が待っています。
本作を読み解くうえで、これらの魔女のセリフは重要です。読む際は、ぜひ彼女たちの言葉に注目してください。
本作の終盤では、マクベスが悲劇的な運命をたどることになります。魔女の予言は絶対に実現しないと高をくくっていた彼でしたが、意外な形でそれは現実のものになるのです。
これらの2つの予言は、どのような形で彼の運命に作用するのでしょうか。最後まで読めば、シェイクスピアの手腕に驚くこと間違いなしです。
シェイクスピア作品の見どころは、数々の名言です。本作は4大悲劇のなかではもっとも短いですが、名セリフ、名言が多くあります。
きれいは汚い、汚いはきれい。
さあ、飛んで行こう、霧のなか、汚れた空をかいくぐり
(『マクベス』より引用)
冒頭での魔女のセリフです。本作のなかでも有名で、さまざまな解釈ができます。
目に見える危険など、心に描く恐ろしさにくらべれば、高が知れている
(『マクベス』より引用)
魔女に未来を予言されたマクベスのセリフです。本作は彼の葛藤がテーマになっていますが、それを表す言葉といえます。
どうともなれ、どんな大あらしの日でも、時間はたつ
(『マクベス』より引用)
前のセリフのあとに続く言葉です。王位を手に入れるために、覚悟を決めたマクベスの気持ちが表れています。
人の生涯は、歩き回る影法師にすぎぬ。
あわれな役者だ、ほんの自分の出場のときだけ、
舞台の上で、みえを切ったり、喚いたり、
そしてとどのつまりは消えてなくなる。
白痴のおしゃべり同然、がやがやわやわや、すさまじいばかり、
何の取りとめもありはせぬ。
(『マクベス』より引用)
物語の終盤で、マクベスが語るセリフです。決戦に向けて、なんとでもなれという自暴自棄にも近い覚悟が読み取れますね。
ほかにも魅力的な言葉がたくさんあります、本作を手にする際は、ぜひ珠玉のセリフに出会ってください。
さまざまな読み方ができる本作ですが、教訓やテーマはどのように解釈すればよいのでしょうか。
- 著者
- シェイクスピア
- 出版日
- 1997-09-16
マクベスは野心を抑えきれず、ためらいながらも殺人に手を染めていきます。自分の意志で行動しているように見えますが、最後には魔女の予言によって死を迎えるのです。彼は運命の奴隷であり、自らまいた種によって殺されました。
彼の姿は、自分の弱さに負け、運命に翻弄される人間の姿を象徴したものです。強い意志を持っているように見えても、人間は運命に逆らうことはできず、魔女のような超自然的な存在には負けてしまいます。
シェイクスピアは本作をとおして、人間の弱さと小ささを描きたかったのではないでしょうか。ぜひ、呼んでみてあなたもシェイクスピアが語るテーマを感じてみてください。