世の中にはさまざまな昆虫がいますが、メタリックな体色をしたコガネムシはひと際美しく、輝いています。この記事では彼らの生態や種類ごとの特徴、卵から成虫までの一生、よく似ているといわれるカナブンとの違いなどを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
甲虫目コガネムシ科に分類される昆虫です。特徴はなんといってもその体でしょう。種類によって違いはありますが、光沢があってメタリックな体色をしています。
体長は15~25mmと小さいためあまり目立ちませんが、間近で見ると宝石のように美しく、自然の産物とは思えない色合いだと実感できるでしょう。
これほど美しければ人気が出そうなものですが、コガネムシはそれほど人間に愛されてはいません。その理由として、彼らは基本的に日本全国どこでも見つけることができること、そして糞を餌にする習性があるため公衆トイレなどで頻繁に見かけることが挙げられるでしょう。また農家や家庭菜園で育てている植物の葉を食べる害虫としても扱われてしまっているのです。
その一方で、夢に出てくると金運がアップするなど縁起のよい生き物として捉えられている一面もあります。
彼らの天敵である鳥は光るものを好まないため、光沢のある体色は身を守ることに役立っているそうです。
寿命は約1年で、成虫の活発な時期は6〜8月です。
非常に種類が多く、確認されているだけでも世界中で約2万5000種、日本だけでも300種はいるといわれています。そのなかから代表的なもの、珍しいものを紹介しましょう。
ヒメスジコガネ
全国各地に生息しているメジャーな種類です。代名詞ともいえるメタリックなボディーは緑がベース。山林地帯を好みますが、外灯などの光に近づく習性があるので、人工的な施設でもよく見かけることができます。
アシナガコガネ
北海道を除いた地に生息している種類です。体色にはそれほど光沢はありません。黄色の模様があり、遠目にはミツバチと見間違えそうです。
昼行性で花の蜜や花粉を餌にしていて、春先の4月頃から活動をしています。
オオトラフハナムグリ
もっとも芸術的で美しいといわれている種類です。なんといっても身体の模様が特徴的で、アーティスティックです。茶色いベースに黒色の模様、もしくは黒色のベースに茶色か黄色で模様が入っています。光沢はそれほどありません。
山間部でしか見かけることができないため珍しく、マニアの間でも人気の高い種類です。
コガネムシは卵から誕生し、幼虫、蛹を経て成虫になる完全変態の昆虫です。
卵から出たばかりの幼虫は、体長が5mmにも満たないほど小さく、形はカブトムシの幼虫とよく似ています。幼虫の間に土の中で越冬します。その際の栄養は植物の根や球根から補給しているので、なかなか植物が育たずに引き抜いてみると根が食われていた、ということも珍しくありません。
自分の唾液などを使って部屋を作り、その中で蛹になります。蛹から成虫になるまでの期間は2週間ほどです。羽化した直後はまだ羽に色がついておらず、約1日かけて光沢をもった体色になっていきます。
夏になると、地中に産卵します。1度に20〜30個ほどを産むため、人間にとっては「大量発生」となってしまうのです。
コガネムシとそっくりな昆虫として、カナブンが挙げられるでしょう。カナブンもコガネムシ科に属しているので、仲間であることには違いありませんが、違いがわかると昆虫採集の楽しさもアップするはずです。
コガネムシは漢字で「黄金虫」と書くだけあって、光沢があります。カナブンにも光を反射させる体色をしているものがいますが、艶があるだけでメタリックではありません。
さらに食性にも違いがあります。コガネムシは植物の葉や根などを食べますが、カナブンは主に樹液を食べます。
またカナブンは頭部が四角くて平べったい身体をしていますが、コガネムシの体は丸っこく、頭部が小さめです。羽に模様がある場合も、角張った模様をしているのはカナブンで、コガネムシには丸い模様が入っています。どちらか迷った時は、よく観察してみてください。
- 著者
- 岡島 秀治
- 出版日
- 2012-06-01
コガネムシにクワガタムシなどを加えた、445種の昆虫を収録した図鑑です。同じ科に属しているのに、こんなにも個性的で異なるタイプのものがいるという事実に圧倒されてしまうかもしれません。眺めているだけでも十分楽しめるでしょう。
また生態や分布などはもちろん、交尾器などの細かな図解も載っていて、ひとつひとつ詳しい情報を知ることができます。便利な検索表がついているのも嬉しいポイントです。
- 著者
- じゅえき太郎
- 出版日
- 2018-04-27
デフォルメされたゆるいイラストで、身近な昆虫の生態を紹介してくれる図鑑です。Twitterで話題となり、書籍化されました。
昆虫が苦手な人の多くは、その理由として見た目のややグロテスクなところを挙げるのではないでしょうか。本書で描かれている昆虫にはみなかわいらしい顔がついていて、親しみやすさたっぷりです。
その一方で大事な情報はきちんと押さえられているので、しっかりと知識をつけることもできます。
昆虫が苦手でも、昆虫博士になれるかもしれない1冊です。大人も子どもも楽しめます。