なんと約6万もの種類が存在するゾウムシ。人間にとっては厄介な一面もありますが、調べれば調べるほど容姿や生き方の魅力にはまってしまう生物です。この記事では、そんな彼らの生態や種類ごとの特徴、鼻のように見える器官が長い理由、駆除方法などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
昆虫綱甲虫目ゾウムシ上科に分類される昆虫の総称です。さまざまな生物の分類があるなかでも最大級の数を誇っており、わかっているだけでも約6万種、そのうちの1000種以上が日本にも生息しているといわれています。
体長は20~40mmほどで、草食性です。体はそれほど大きくないですが食欲旺盛で、農業や園芸などをしている人にとっては害虫として扱われることもあります。また同じゾウムシでも、種によって食べものの好みに違いがあり、積極的に葉を食べるものもいれば、茎や果実を好むものもいるようです。
いずれにせよ、大量発生した場合は人間にとって厄介な存在になるでしょう。「虫こぶ」という茎や葉自体に膨らみを作り、その中に卵を産み付ける種もいて、その丁寧な習性から幼虫の生存率が高いのも特徴です。
多くの種は森や林、草原地帯に暮らしていますが、穀物の貯蔵庫などに棲みついてしまう種もいます。
最大の特徴は、名前の由来ともなっている容姿でしょう。幼虫の時は脚が無くウジ虫状で大きくなりますが、成虫になると頭の前部分が細長く突起して、象の鼻のような形をした口吻になるのです。
それでは代表的な種類を紹介していきます。
体長は12~24mmほど。日本産のゾウムシ科のなかでもっとも大きな種類です。体色は灰色をベースとした褐色で、小さな黒紋があります。朝鮮半島や中国、東アジアの熱帯地域にまで広く分布しています。
オトシブミ科に属し、体長は2~10mmほどと小さく、金属光沢のある硬い体が特徴です。葉を綺麗に折り曲げてゆりかごを作り、そこに卵を産む習性から「ぴったり」という意味の「チョッキリ」と名付けられました。
香川県で栽培されていたオリーブの木を枯らしてしまったことでニュースにもなったゾウムシです。オリーブの根元に卵を産み付け、孵化した幼虫が幹をぐるりと食べてしまいます。
ゾウムシの代名詞ともいえる長く伸びた口吻。いったい何のためにこのような器官をもっているのでしょうか。その理由は主に2つ挙げられます。
まずひとつは、彼らの食生活です。とにかく食いしん坊なため、同じ植物食の昆虫が届かない場所にある餌も食べようとします。花の奥にある実や種、枝の中にある組織も好んで食べるため、咀嚼ができるよう先端に顎の付いた細長い口吻をもっているのです。
もうひとつは、子孫繁栄のため安全に卵を産み育てるためです。口吻を使って植物の茎などに穴を開け、そこに産卵をします。さらに穴を塞ぐ成分を分泌することもできるのです。
植物の中に卵を産むことで、卵は環境の悪化や外敵から身を守ることができ、また孵化した幼虫もすぐそばに餌が豊富にある状態なので、栄養をたっぷりとって成長することができます。
象の鼻に似た細長い口吻は、生きるために役立っている器官ということです。
どうしてもゾウムシの駆除が必要になった場合の対処法を紹介します。
植物に寄生するタイプの場合、もっとも害の少ない方法は捕獲でしょう。ただゾウムシは体が小さいため、くまなく探す必要があります。対象植物に食害された跡がないかを確認してみてください。
また彼らは「死んだふり」をする習性があります。地面に落ちると見つけにくくなってしまうので、落ちたゾウムシが目立つような色の布などを敷き、受け皿を作っておくと効果的です。
さらに、彼らは繁殖能力が高いため、数があまりにも多い場合は薬剤を散布するほうが効率的だといえるでしょう。
次に食材に寄生するタイプです。身近なものだとお米に棲みつくコクゾウムシという種類が挙げられます。米びつの中に唐辛子を入れたり、蓋の裏側に防虫剤を付けたりしておくと侵入を効果的に防ぐことができるでしょう。
ただ、すでに米びつの中に卵を産み付けられていた場合は効果がありません。その際は天日干しをすることがおすすめです。コクゾウムシは日光を嫌うので、新聞紙などにお米を広げて干してみましょう。しっかりと駆除できたお米は、きちんと洗えば問題なく食べることができます。
- 著者
- 小檜山 賢二
- 出版日
- 2009-08-01
講談社出版文化賞「写真賞」を受賞した作品です。実は1億年以上前から生存するゾウムシ。昆虫のなかでももっとも種類が多く、その多様性は計り知れません。
本書はそのなかから100種類以上をピックアップして、さまざまな形や色をした彼らの姿をとらえた写真集です。特徴として、すべての細かい部位にピントが合うように工夫された「マイクロフォトコラージュ」という撮影方法を用いています。
実際に見ると数ミリの大きさのものが、ページいっぱいに広がります。そのディティールの美しさはまるで芸術作品のよう。ゾウムシの魅力を堪能できる1冊です。
- 著者
- 養老 孟司
- 出版日
- 2006-07-06
大ベストセラー『バカの壁』の著者としても有名な養老孟司が特集した、昆虫図鑑です。彼の綴る文章が面白いのは、どこかひねくれた要素がありながらも理にかなっていて、目から鱗が落ちるところでしょう。そのメカニズムを紐解くと、嫌いなことは一切せず、好きなことに没頭しているというスタイルに行き着きます。
そしてそんな養老孟司は、大の昆虫好きでもあります。なかでも「ヒゲボソゾウムシ」の研究はライフワークでもあるのだとか。本書は、彼が自らスキャナを使ってコレクションである標本を撮影して作った、手作りの昆虫図鑑です。
写真はもちろんオールカラー、合間にはエッセイも挿入されていて、見ても読んでも楽しめる1冊だといえるでしょう。