昆虫マニアの間でも熱烈なファンの多いオオクワガタ。他とは一線を画す迫力があります。この記事では、彼らの生態や採集方法、飼育方法、ペアリングと呼ばれる繁殖方法についてわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
数多くいる昆虫のなかでもトップクラスの人気を誇るオオクワガタ。「黒いダイヤ」と呼ばれることもあり、重厚感と存在感、そして高貴な美しさが我々を魅了してくれます。
分類はコウチュウ目クワガタムシ科オオクワガタ属。日本に生息しているクワガタのなかでは最大級のサイズで、寿命は5〜6年と長生きです。日本では全国に生息していて、海外では中国の北東部から朝鮮半島にかけて生息情報があります。
野生の体長は、オスが20~75mm、メスが20~50mmほど。ただ飼育下で丁寧に栄養管理をするともっと大きく育つこともあり、オスの90.5mmはギネス世界記録にも認定されています。
棲み処は、「樹洞」と呼ばれる木の幹が腐敗するなどして空洞となった穴の中。どちらかというと臆病な性格をしているため、危険を察知するとすぐに巣の中に隠れてしまいます。
翅はあるものの飛ぶのは得意でなく、外灯などの光に引き寄せられる時か、引越しをする時くらいしか飛びません。夜行性のうえ基本的には身を隠しているので、自然に姿を見かけることは珍しいでしょう。
全国各地に生息するオオクワガタですが、素人が採集するのは困難です。むやみやたらに森などに入ったとしてもなかなか捕まえることはできません。プロのハンターの方法を参考にするとよいでしょう。
まず採集に適した時期ですが、彼らが活発になるのは5月上旬から8月頃。ただ7月や8月は他の生物の活動も活発になるので、警戒心が強くなりがちです。そこで狙い目となるのが、6月の梅雨時だといわれています。雨が降った後は空気が涼しくなるので、暑すぎる気温が苦手なオオクワガタも姿を現しやすくなるのです。
次に、探す樹木の種類にも注目しましょう。主にクヌギ、コナラ、ミズナラを好みます。これらの原生林が残る場所に、昼間のうちにライトを設置し、夜になってから光で誘う方法がメジャーなようです。
幹を削って樹液を出しておくことも効果的。ただ他の生物が近寄ってくると、警戒心の強いオオクワガタはなかなか寄ってこないため、いくつかポイントを作って彼らが好む場所を探してみましょう。
寿命が長いので、ペットとして飼育をしても楽しめるところが魅力です。うまく育てればどんどん大きくなっていくので、世話のやり甲斐もあるでしょう。
自分で採集するのもよいですが、購入することも可能です。一般的な国産のもので2000円程度から販売されています。幼虫であれば500円前後でしょう。ただし、血統がついたり、サイズが大きいものになったりすると万単位の値段がつくこともあります。
飼育をする際は、大きめのケースにオスとメスを分けて1匹ずつ入れます。マットは無添加の発酵しているものを敷いてあげると、カビ対策になるでしょう。次に転倒防止のために木片や餌皿を入れます。
餌は昆虫ゼリーが一般的。蓋は取らず、カッターなどで切り込みを入れておけば倒しても中身がこぼれません。夏の虫というイメージからかスイカを与える人もいますが、水分が多いものはお腹を下してしまう恐れがあるので注意してください。
飼育ケースは、直射日光の当たらない、涼しくて風通しのいい場所に置きましょう。中が乾燥してきたら霧吹きで水分を与えます。11月頃からは冬眠に入るので、越冬の準備をしてください。多めにマットを敷き、餌を置いて、ビニールやラップに穴を開けたものを被せ、最後に新聞紙を挟みましょう。室内の温度差があまり無い場所に置いておくことをおすすめします。
オオクワガタは交尾(ペアリング)の際、相手との相性を見極めます。オスとメスを同居させればいいという簡単な話ではありません。
まず双方がきちんと成熟した成虫である必要があります。成虫になって3ヶ月未満だとまだ活動的ではありません。交尾欲が出てくるのは半年を過ぎたあたりだとされています。また、その間に一冬を越せていたらなおよいそう。室温は20~25°Cに設定しておきましょう。
ペアリングをさせる際は、少し小さめのケースにオスとメスを数日間同居させます。餌はひとつだけにすると、お互いの距離が近くなります。4日ほど経つと、たいていの場合は交尾が終わっているはずです。
また、同居の手間を省くための産卵セットや、オスの性欲をかきたてて両者を密着させるハンドペアリングという方法もあります。ハンドペアリングはメスをがっちりと捕まえていられるところに置き、オスを上に乗せるという方法です。この場合は、交尾が終わってからも自然に離れるまでは手を触れないようにしましょう。交尾器の損傷は命を落としかねません。
交尾の時間は、数十分から1時間以上かかることも。人間でいえば愛を分かち合っている状態なので、邪魔をしないようにしましょう。
- 著者
- 安藤“アン"誠起
- 出版日
- 2017-06-30
オオクワガタを飼育する魅力は、なんといっても長い時間を一緒に過ごせるところです。犬や猫のように人間になついたり、芸を覚えたりすることはありませんが、日々の成長を見て深い絆を作ることができるでしょう。
本書では、オオクワガタの飼育方法について徹底的に解説されています。もちろん図鑑なので、生態や特徴などの知識も豊富。そしてそれらはすべて適切な飼い方へと繋がっているのです。
また飼育ケースなどグッズの紹介も充実しています。飼育を考えている方はぜひ手元に置いておきたい一冊です。
- 著者
- 齋藤 洋介
- 出版日
- 2016-08-01
本書は、野生下で暮らすありのままのオオクワガタの姿に迫り、その一生を追いかけた作品です。ドキュメンタリー調で綴られている文章を読むと、彼らの人生にもさまざまな努力や苦難があることがわかるでしょう。
人間と比べると小さな虫の世界ですが、その迫力に圧倒されることも。まさに同じ視点に立って、知られざるオオクワガタの世界へと入り込める一冊です。
作者の愛情も十分に伝わってきます。飼育をするだけでは味わえない彼らの姿を堪能してください。