その目つきの鋭さや人付き合いの苦手さから、少々周りから浮いている黒川美玲。そんな彼女に一目惚れし、執拗に黒タイツを穿かせようとする白雪姫こと白鳥雪菜の攻防や友情を描いた『白雪姫と黒タイツ』。 登場人物がみんなどこか抜けていて、なんだかかわいい本作の見所などを紹介していきましょう。
淑女の通う清流女学院に転入してきた黒川美玲。話に花を咲かせるクラスメイトたちを羨ましく思うものの、その鋭い目つきと、気合の入りすぎた自己紹介で、彼女はクラスメイトたちから避けられていました。
そんな彼女と同じクラスで、「清女の白雪姫」とも呼ばれる美しい女生徒・白鳥雪菜。美玲は彼女のことを、遠い存在だと思っていました。
しかしあることをきっかけに、美玲は彼女の本性を知り、一気にその距離を縮めていくことになったのです。
白雪姫と黒タイツ(1)
『白雪姫と黒タイツ』の見所は、やはりただの「〇〇好き」で終わらない、本気で気持ち悪いレベルのフェティシズムを見せる女子高生と、その餌食になる女子高生のゆり的な絡みではないでしょうか。
一応は「友だち」というくくりで、特別恋愛的なシーンがあるわけではないのですが、フェティシズムをこじらせた雪菜と、その標的である美玲の距離感が異常なのが特徴的。
彼女自身はまったく異常ではないのですが、こじらせている雪菜の距離感がだいぶおかしなことになっているのです。黒タイツの似合う理想の相手がいるからといって、寝ている間にズボンを脱がしてタイツを穿かせ、あまつさえ寝ながらそのタイツを口に含むということはしないと思います。異常です。
フェティシズムというものは友情や恋愛、倫理観といったものをふっ飛ばした先にあるとはいえ、さすがに友情以上にメーターが振り切ってなければこんなことはしませんよね。彼女はだいぶお金持ちのお嬢様らしいので、そういった特殊な環境から普通ではない距離感を取るのかもしれませんが、とはいえ、という感じです。
ただ、そんな彼女に引いたり怒ったりしながらも友だちで居続ける美玲も、やはりどこか特別ですよね。独特な2人の関係は見ていて、独特で楽しくなりますし、キュンとしますよ。
また本作の見所のひとつに、キャラクターの可愛さがあります。まず、主人公のひとりである、白雪姫こと白鳥雪菜は、その見た目はもちろん、性格が非常に可愛いです。何事にも一生懸命で、やり方はだいぶ間違ってはいますが、その大人になりきれていないところが、彼女のよいところでもあります。
そのやり方が冷静に考えれば恐ろしいこともありますし、彼女自身ただ天真爛漫というわけではないようですが、普段見せている明るい姿は、こちらも楽しくなってしまうような雰囲気です。
もうひとりの主人公である黒川美玲は、とにかくその性格のもったいなさが可愛いですね。転入初日からから回ってしまったり、せっかくクラスメイトが歩み寄ろうとしても、その鋭い眼光とは裏腹に逃げてしまったり、少々惜しいところがあるのが特徴的。
ただ、その惜しい部分こそが彼女の魅力で、人にいま一歩強く踏み込めないからこそ、じわじわと支持者を集めていったのではないでしょうか。
他にも彼女のことが好きすぎてツンデレになってしまう前の学校の友人や、雪菜が好きすぎるあまり美玲との距離を掴みあぐねるちびっ子、そのちびっ子を何かとフォローする子、雪菜の家のメイド、また彼女のライバル的ポジションにいる「藍姫」など個性的なキャラクターがとても多いです。
登場人物が徹底して女性ばかりということで、多種多様な女子キャラ・女性キャラが見られますよ。
「清く正しく美しく」がモットーの女子校・清流女学院に転入してきた黒川美玲。転入初日から挨拶に失敗しクラスに馴染めない彼女は、同じクラスで可愛く人気のある白鳥雪菜に憧れていました。
そんな憧れの彼女と2人になったある日、美玲は彼女から猛アピールを受け、黒タイツを手渡されます。彼女は、黒タイツの似合う少女に、黒タイツを穿いてもらうためだったら恥も外聞も無い、黒タイツフェチだったのです。
白雪姫と黒タイツ
すらっと高い身長に長い黒髪、少々鋭い目つきの美玲が、雪菜の理想の黒タイツ像にぴったりだったらしく、彼女は何かと黒タイツ攻撃を受けることに。下駄箱や机の中に黒タイツ忍ばせるなど、実際やられたら引くレベルの対応です。雪菜は相当拗らせているようですね。
黒タイツを穿かせることに執念を燃やしすぎる彼女ですが、1巻では燃やしすぎた挙句妖怪のようになっているお笑い的な場面、2人が友だちになる場面などが見所でないでしょうか。
最初から黒タイツを穿いてもらうためだったら、どんなことでも戸惑わずおこなうような人物ではありましたが、1度タイツを穿いてもらってからは遠慮が一気になくなっていきます。その姿は恐ろしく、また素晴らしいフェティシズム精神だなと感心させられます。
衝撃的なトイレのシーンなどは、特に見所。実際やられたら2度と友情など築けないと思わされるような内容です。なんだかんだ美玲は、雪菜の奇行に呆れつつも付き合おうとするだけ優しいです。2人が明確に友だちになるシーンというのがあるのですが、不器用なその様子がとてもかわいらしいですよ。
雪菜の少々奇抜すぎる行動が目立っていますが、人の心のことをよく理解している、ということが伝わってきます。また、人付き合いが苦手ながらも彼女に寄り添おうとする美玲もとてもかわいいので、2人が距離を縮めるシーンは必見ですね。
2巻では美玲に近づいてきた謎の美少女、谷々藍が登場。藍は学年が1つ下の1年生で、雪菜に負けず劣らずの美少女です。そのせいか何かと並べられることが多いらしく、「白雪姫」に対し「藍姫」という名前が付けられるほど。
そうして比べられるうちにいつの間にか互いに対抗心が芽生えたようで、クラスメイトたちはその2人の争いに巻き込まれていきます。この争いは中学時代からの定番らしく「姫君の舞踏会」と呼ばれ、翌日には全校生徒に周知されるほどの大きな騒動に。
女子校らしいですね。「白雪姫」「藍姫」という呼び方もそうですが、何かがおこなわれるにしても女子校としての品性をおとしめない、愛らしいネーミングの行事があるというのが、実に女子校らしいです。
争いなのに舞踏会とは、なかなかに優美。ただおこなう対決というのは、期末試験のクラス対抗です。ネーミングもさることながら、すぐにはっきりとした勝敗のわかるスポーツではなく、後々控えているテストを決戦の場に選ぶ限り、もともとの育ちの良さがうかがえます。
果たしてこの「姫君の舞踏会」の結果はどちらに軍配が上がったのでしょうか。
白雪姫と黒タイツ
また、本巻では夏休みに突入するのですが、そこでも雪菜の奇行を見ることができます。彼女の、どんな手を使っても美玲を自分のもとに居させようとする姿には感嘆しかありませんね。
ただ、その彼女のトンデモ行動により、美玲の普段では絶対見られないであろうかわいい衣装チェンジを見ることができます。どんなに衣装をチェンジしても黒タイツだけは変わらないところは、さすが雪菜ですね。
そして、ここではなぜ藍が最初から美玲に好意的だったのかも判明。彼女は藍にとって、たまらない要素を持っていたのです。かわいい子ほど変態なのかもしれませんね。また、黒タイツ好きと美玲好きをこじらせた雪菜も見所となっています。
本巻ではついに「王子さま」が登場します。
どういうことかというと、「王子」と「騎士」という派閥があるよう。美玲自身はまったく王子感も騎士感もないのですが、雪菜と藍が懐いていること、視線が鋭いことなどからそういった男性的役割に思われるのかもしれませんが、ここでの王子さまは彼女ではありません。
登場した「星の王子さま」こと星野霞子は、自ら望んで男性役に収まっているよう。女子校ものでは定番のかっこいい先輩ですね。清流女学院の生徒会長を務めているのですが、美玲の存在を確認するとすぐさま呼び出し「姫君の舞踏会」を開かないかと提案してきます。
白雪姫と黒タイツ
「姫君の舞踏会」とはいえ、霞子は争うつもりはなく、「白雪姫チーム」「藍姫チーム」「星の王子さまチーム+美玲」の3チームを作り体育祭をしないかと提案してきました。生徒会に美玲を取られそうになった雪菜の動揺っぷりと、そんな彼女を抑える藍の長年の絆はとても見所ですよ。
2人の過去話は2巻で語られるのですが、本巻を見ても、彼女たちがただいがみ合っているわけではないということがわかります。ソリが合わないにしても、彼女たちなりの絆があることがうかがえるのです。
ぜひ2人の関係性や、やりとりに注目したいですね。また、この2人のやりとりに合わせて、お嬢様である雪菜の抱える問題のようなものも本巻では登場。普段は明るい彼女のほの暗い面が見られる、初めてのシーンになりますので、気をつけて読みたいところですね。
藍もお嬢様なので、そういったところでも彼女にとっては良き理解者なのではないでしょうか。彼女と同類に思えた藍が、実はそうでもなかった、意外と大人っぽい姿を見ることもできるのも特徴です。
雪菜の強烈な黒タイツフェチと、それになんだかんだ応える美玲の話かと思いきや、ただそれだけでない、お嬢様だからこその悩みなども見所の『白雪姫と黒タイツ』。黒タイツ好き、女子校もの好きにはたまらない作品となっていますよ。