いったい誰がデザインしたのか、白と黒のシンプルながらも芸術的な縞模様をしたシマウマ。その模様にはどのような意味があるのでしょうか。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴と、縞模様をしている理由などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
哺乳綱ウマ目ウマ科ウマ属に分類され、数種類いるなかから白と黒の縞模様をもつものをシマウマと呼んでいます。体長は2~3m、体重は200~450kgほどです。
名前にも分類にも「ウマ」とつきますが、実は耳の大きさやタテガミの質、鳴き声など、体のつくりは馬よりもロバに近い構造をしています。馬ほど背骨が丈夫ではないため、人が背中に乗ることはできません。
アフリカ大陸の東部から南部にかけて広く分布しています。もっとも有名なのは、サバンナに生息しているサバンナシマウマでしょう。数十頭から多い時には数百頭の群れを形成して生活しています。群れのなかに十頭前後の家族コミュニティがあり、それぞれのコミュニティにオスのリーダーがいるようです。
群れにガゼルやダチョウなどの草食動物を入れて、一緒に生活をすることがあります。天敵であるライオンやヒョウよりも体格のよい、キリンやヌーと行動をともにする場合もあるようです。
サバンナシマウマ以外の種類を紹介します。
平野部の草原で暮らしているイメージがありますが、本種は名前のとおり高原や山地に生息しています。群れは小規模で、オスのなかには単独で生きるものもいます。薄明薄暮性で、昼間はほとんど休んでいるほか、最長で3日間ほどは水分をとらなくても生きられるそうです。
主な生息地はアフリカ東部です。体長3m前後、体重350~450kgと、他の種と比べると体格がよいといえるでしょう。縞模様の幅が小さく、きめ細かいのも特徴です。
また持久力があり、天敵に狙われたとしてもかなりの距離を逃走することができます。
縞の間隔が離れているのが特徴で、体長は2m前後、体重も200kg台と小柄です。動物園などでもよく見かける種類です。
シマウマの最大の特徴である縞模様。なぜ体に縞模様が入っているのか、その理由は明確になっていませんが、有力な説をいくつか紹介しましょう。
まずは、天敵から見つかりづらくするというものです。
人間から見ると派手な縞模様ですが、実はほとんどの哺乳類は色の識別をすることができません。そのため草原にいると周りの景色にカモフラージュされてわかりづらくなったり、また群れで行動をしていると縞模様が重なって個体の判別がしづらくなり、ターゲットを絞りづらくさせているのではないかと考えられています。
ただこの説は、大型の肉食獣は色だけでなく縞模様自体を判別しきれていないことがわかり、そのため他の単一色の動物との差異はほとんど無いとされています。
大自然で暮らす動物にとって、脅威となるのは肉食獣だけではありません。サバンナにはアブやツェツェバエという吸血性のハエが生息していて、大群に襲われてしまうと命を奪われることもあるのです。また虫が媒介する伝染病も厄介なものだといえるでしょう。
カリフォルニア大学の研究チームが吸血バエの生態を調べたところ、縞模様を避ける習性があることが判明しました。吸血バエから他のウマ科の血液は検出されたものの、シマウマの血液はほとんど確認されなかったそうです。
このことから縞模様は、吸血バエや伝染病などから身を守るための手段なのではないかという見方が強まっています。
先述した2つの説は、どちらも天敵から身を守るためのものでしたが、まったく異なる理由を主張する説も存在します。
サバンナは、日中の気温が40度に達することもあり、特にシマウマが暮らす平野部の草原には日陰がほとんどありません。だからといって森の中などは天敵が多くいるので危険です。彼らの縞模様は、強い日差しの影響を緩和させるのに役立っているという説があります。
実際に、暑い地域に住む個体ほど縞模様が濃く、また縞自体の数も多い傾向があるそうです。他の単一色の動物の表皮の温度と、シマウマの表皮の温度を比べてみると、シマウマの方が3度ほど低いこともわかりました。
黒色と白色が吸収する熱の違いで空気の流れが生じ、表面の温度を下げるのに役立っているのではと考えられたのです。
ただ実際に実験をしてみると、この時に生じる空気の流れは非常に小さいらしいので、あまり有力な説だとはいえないかもしれません。
- 著者
- ガブリエラ シュテープラー
- 出版日
- 2017-02-13
弱肉強食の自然界では、どうしても草食動物に「弱い」という印象を抱いてしまいます。テレビなどで肉食獣に捕食されているシーンがたびたび流れるからでしょう。しかし実際のシマウマたちは、実にたくましく生きているのです。
本書はそんな彼らの姿を、子どもに焦点を当てて追っている写真絵本です。親の愛情、群れのリーダーの責任感、団結力などが伝わってきます。厳しい環境のなかでも強く育っていく様子に勇気をもらえるでしょう。
掲載されている写真はどれも美しく、躍動感があり、シマウマの魅力を余すことなく引き出しています。また生態の解説は、シーンにあわせた物語調で読者を飽きさせません。漢字にはルビも振ってあるので、小さなお子さんと一緒に読むことができる1冊です。
- 著者
- かわむら おさむ
- 出版日
- 2015-05-15
シマウマをはじめ、虎や蜂など縞模様をもった生物たちを独特のタッチで描いた絵本です。鮮やかな色彩と大胆なイラストが、多様な動物たちが生きるサバンナやジャングルの空気感を伝えます。
文字数は少ないですが、文章は韻を踏むような語感の面白さを活かしており、思わず声に出して読みたくなるでしょう。森や海に潜んだたくさんの縞模様がページを賑やかにしていて、ワクワクが止まりません。