「月刊少年マガジン」で連載中の本作は、松本明澄による一風変わったグルメ漫画です。普通と違うのは、主にコンビニ食のスナックやファストフードに限定しているという点。それらがお嬢さまの奇想天外な発想によってアレンジされていくのが魅力です。 今回は既刊5巻のなかから、選りすぐったコンビニグルメをご紹介しましょう。
京都のどこかにある名門女子校、いろは女学園。主人公の兎月翠里(うづきみどり)は、そこに通う2年生の女子高生です。
彼女は高貴な家柄のために、幼いころから厳しく育てられてきました。そのおかげで成績優秀、スポーツも万能。何をやらせても完璧にこなすお嬢さまとして、学園内でも一目置かれています。
- 著者
- 松本 明澄
- 出版日
- 2016-07-15
そんな彼女には、知られざる秘密がありました。それは厳格な躾への反発、反動によるもの。彼女は学校を一歩出ると――安っぽいコンビニで買い物したくなる、ちょっと変わった性質を持っていたのです。
完璧な美少女が人目を憚ってコンビニに入り浸り、しかも毎回珍妙な格好(変装のつもり)をするという、なんとも面白い絵面が展開されます。そして普通に食べるということもしません。これがまた微妙に庶民感覚とズレていて、笑えてくるから不思議です。
1巻で目立つのは、大人買いしたアメリカンドッグのアレンジでしょう。わさび醤油に焼き肉のタレ、マヨ、ゆずぽん、田楽みそと梅ペースト。仕上げではなんと、シュークリームをディップ代わりにしてしまいます。どの組み合わせがどんな味となるのか、実際にご覧(ご賞味)ください。
ある日のこと、翠里は不思議な少女と出会います。その名は伏見桃子。植物や動物、有形無形問わずあらゆる美しいものをメモしていると豪語する彼女は、美少女の噂を聞いて翠里に会いに来たのです。
そして桃子のメモには、翠里の欄に「コンビニ」の走り書きがありました。誰にも知られていないはずの彼女の秘密を、桃子が知っているのでは?翠里は珍しく取り乱すのでした。
- 著者
- 松本 明澄
- 出版日
- 2016-12-16
だからといって翠里のペースが変わるかというと、まったくそんなことはありません。残念なほどにマイペースです。自重しようと心に決めたその直後、コンビニののぼり看板であっさり前言を撤回する残念っぷり。
今回は、街でよく見かけるホットステーション的な店舗の定番カウンターフーズ、一口サイズからあげです。もちろん、普通に食べるだけでは終わりません。からあげは期間限定の味も楽しみの1つですが、彼女はオリジナルの味付けをしてみせます。
レシピは簡単。チョコレートクッキー、梅グミ、バターキャラメルキャンディを乗せて焼くだけです。どう考えても危ない組み合わせですが、これが意外や意外、思わぬ化学反応を起こすのです。結果やいかに……?
季節はいつの間にか冬になっていました。
ある日偶然、翠里は自分とはまた少し違ったタイプのお嬢さま・墨染(すみぞめ)さくらと帰りが一緒になりました。冬の寒さが身に染みる時期だけに、翠里の気持ちはコンビニのホットスナックに向かってしまいます。
人目を憚ってコンビニを楽しむ彼女ですが、その趣味はやはり、さくらにも理解されそうにありませんでした。
- 著者
- 松本 明澄
- 出版日
- 2017-06-16
イメージというの、はなかなか厄介なものです。それは先入観となって、世間は知らず知らずのうちに対象のあり方を制限していってしまいます。そして、それは何も人に限ったことではありません。コンビニフーズも同様です(少なくとも翠里のなかでは)。
本巻で最初に彼女が目を付けたのは、冬のド定番といえるコンビニおでん。出汁のしっかり利いたアツアツおでんを、奇想天外な発想でアレンジしていきます。ポテトスナックやあられを砕き、衣に付けておでんをフライのように焼いてしまうのです。まさにおでんの常識を覆す奇行、もとい発明。
餅巾着が微妙だった以外は、こんにゃくも大根も卵も普通に美味しそうです。スナック感覚のおでん、ぜひ試してみたくなります。
あれからさくらと打ち解けて、転校してきた桃子も加わり、翠里の周囲はにわかに活気づいてきます。
しかしガールズトークは恋ではなく、ペットの話題で大盛り上がり。唯一、翠里の家はペット禁止だったため、彼女だけは憧れの猫のいる生活を夢想します。
その直後、彼女はコンビニに寄りつく野良猫を見かけて、うっかり餌付けしてしまい……。
- 著者
- 松本 明澄
- 出版日
- 2017-12-15
さて、早速本題に入りますが、今回注目のコンビニグルメは猫缶――を再現したアレンジレシピです。猫缶に限らず、ペットフードのCMは人間向けではないのに、妙に美味しそうに見えることがあります。翠里も例外ではなく、餌付けした猫の食べ物をヒントにアレンジを思い付きました。
コンビニのプライベートブランドの総菜、ビーフシチューとサラダチキンを適度に角切りにして、猫缶風に仕立て上げたのです。皿に盛って香草を添えれば、コンビニ食材とは思えない高級感あるメニューに大変身。これは間違いなく美味しいです。
動物が美味しそうに食べる姿、その香り。確かにペットフードは一見美味しそうに見えますが、ここまでして再現するとは……。翠里のコンビニグルメ愛、恐るべしです。
翠里達の周囲は基本的に平穏に満ちていますが、人間関係が完全に円滑かといえば、そうとも言い切れません。
ムードメーカーの友人の意外な過去に、翠里は少しショックを受けます。でもそんな一面も感じさせない彼女だからこそ、彼女も他のお嬢さま達も助けられているのです。
- 著者
- 松本 明澄
- 出版日
- 2018-06-15
少ししんみりした形で始まる5巻。翠里のコンビニグルメ以外にも、調理実習やファミレス初体験など、これまでなかった形のグルメがいくつか登場します。ワイワイはしゃぐ彼女たちの日常生活には、ほっこりさせられるでしょう。
そんななかでピックアップしたいのが、禁断の組み合わせ。カレーパンとコロッケ、カレーパンとからあげという、揚げ物×揚げ物のカロリー爆弾です。どちらも単体で食べるのが常識(コロッケはコロッケパンがありますが)ですが、よりによってカレーパンに挟むという、ウルトラC。
絶対にハズレのない組み合わせではありますが、やはりカロリーが気になるところです。年頃の女の子たちには劇薬ともいえる食べ物ですが、果たして彼女たちの反応は……?
ここまで『コンビニお嬢さま』のコンビニグルメをご紹介してきましたが、なかなか挑戦的なレシピが多くて面白そうと思っていただけたのではないでしょうか。
本作のいいところは、失敗した組み合わせであっても、そのまま失敗として扱っている点でしょう。美味しい一点張りだと嘘くさくなってしまいますよね。
そんな本作ですが、漫画アプリ「マガジンポケット」でも掲載されています。気になった方はまずアプリでお試しになってはいかがでしょう?
いかがでしたか?本作には美味しそうなものから、ちょっとしたゲテモノまで数多くのアレンジが登場します。いずれもコンビニですぐ手に入る材料ばかりなので、ちょっとタメしたくなりますね。