本作は、パイロットでもあり、『星の王子様』などで有名な作者サン=テグジュペリによって描かれた、郵便事業に命をかけた男たちの物語です。作者自身の体験が大きく影響した一冊となっています。 この記事では、そのあらすじから名言まで、詳しく解説。ぜひ最後までご覧ください。
本作は、郵便事業に命をかけた男達の物語です。1931年に、フランスで出版されました。当時はまだインフラが整っていなく、夜に飛行機を飛ばすという行為はとても危険なものでした。
そして、その危険な事業を使命としてやり続けた男が、リヴィエールという人物。彼はとてつもなく冷徹な男で、部下による1つのミスも許さなかったのです。誰かが1つでもミスをしてしまうと、即刻クビにしてしまいます。
- 著者
- アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
- 出版日
- 2010-07-08
ロブレという整備工も、たった1つの配線ミスをしてしまったせいで、リヴィエールにクビにされてしまいました。彼は、クビになりたくないと懇願しましたが、その願いを聞き入れてもらうことはできませんでした。
なぜ、リヴィエールはそんなにも厳しいのでしょうか。それは、彼が夜間飛行、そして飛行士の命、郵便事業の未来を全て背負っていたからです。
当時、夜間に飛行機を運転することは、大変危険なことでした。車、船などは夜間であろうとその目的を果たしていましたが、そこに加えて空を使えるようになれば、より多くのものを早く、そして遠くへ届けられるようになります。
国を超えての運搬が簡単になり、経済は大いに発展し、貿易が盛んになります。それだけ、物流は大事なことなのです。そういったことから、彼は自分の心を押し殺し、部活達に厳しく接していたのでした。そして、なんとしてでも夜間飛行を成功させ続けなかければいけないと考えていたのです。
飛行機は、たとえ小さなミスでも、命に関わります。些細なミスであってもです。だからこそ、彼は厳格に仕事を管理していたのでした。
しかし、国の発展と引き換えに飛行士達を危険にさらしている自分の仕事に疑問を感じ、やがて葛藤するようになっていき……。
フルネームは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。彼自身も陸軍の飛行連隊に所属し、飛行機を操縦していたパイロットでもありました。26歳のときに小説家としてデビュー。パイロットで経験したことを元に描かれている小説が多いことが特徴です。
そして、自身も本作と同じように、郵便輸送のためのパイロットとして、欧州から南米間の飛行航路の開拓にも携わっていました。代表作には本作意外にも、『星の王子様』がとても有名です。
- 著者
- サン=テグジュペリ
- 出版日
彼は数多くの名言を残しています。ここでは、その一部をご紹介させていただきます。
他人を裁くより自分を裁く方がずっと難しい
人はどうしても、自分を守ることを最優先にしてしまいがちです。他人のことは良くわかっても、実は自分自身のことがもっとも良くわかっていないのが、人間という生き物でしょう。
彼はその事実に気づいていて、この名言を残したのではないでしょうか。皆さんにも、どこかで納得できる部分があるかもしれませんね。
いったん出来事のうずの中に身をおいてしまえば、人はおびえないものだ。
人を不安にさせるのは、未知のことだけだ。
まさに、本作のことをいっているような名言です。現代の生活は、過去の犠牲の上に成り立っています。そして、この生活に対して、私たちは何も怯えていません。しかし当時のパイロットやそれに従事する人、本作でいえばリヴィエールは、とんでもなく怖かったのではないでしょうか。
計画のない目標は、ただの願い事にすぎない
目標と夢は、まったく別物だと言いたかったのかもしれません。目標には期限があり、行動スケジュールがあります。夢にはそれがなく、だから実現性も低いということを伝えたかったのかもしれませんね。
本作に登場する人物を、簡単にご紹介させていただきます。
この小説は、サン=テグジュベリが1939年に出版したエッセイ集です。飛行士としての15年の経験を、あますことなく書き綴っています。
- 著者
- サン=テグジュペリ
- 出版日
- 1955-04-12
新航路開拓に果敢に挑んでいく僚友の姿や、親友が飛行中に消息不明になった経験も語られており、その経験が本作の執筆にも多大な影響を与えているのです。
その他にも、飛行機での遭難体験をもとに描かれたのが『星の王子様』であったり、『南方郵便機』であったりと、『人間の土地』がその他の作品に、大きな影響を与えていることが読み取れる内容です。
本作には数多くの名言が登場します。どんな言葉が登場するのでしょうか。ここでは、その一部をご紹介させていただきます。
愛されようとするには、同情さえしたらいいのだ。
ところが僕は決して同情はしない。
いや、しないわけではないが、外面に現さない。
(『夜間飛行』より引用)
リヴィエールは、いつも孤独に苦しんでいました。たった1つのミスも許さない冷徹な男に、味方なんていなかったのです。しかし、それでも彼は、変わらずに厳しくし続けていました。そんな彼の本音が出ている言葉ですね。
僕は、自分がしていることがよいことがどうかは知らない。
僕は、人生に正確にどれほどの価値のあるのかも、
正義にどれだけの価値のあるのかも、苦悩にどれだけの価値のあるのかも知らない。
(『夜間飛行』より引用)
本当に正しいこと、本当に悪いことは誰にもわからないでしょう。わからないうえで、どう進んでいくかは、自分の信念が決めるのではないでしょうか。リヴィエールにはそういった覚悟があったのだと推測することができます。何があっても折れない確固たる信念を持って、仕事をしていたのではないでしょうか。
個人的な幸福よりは永続性のある救われるべきものが人生にあるかもしれない。
(『夜間飛行』より引用)
リヴィエールのおこなってきたことは、部分として見れば、皆が不幸に感じてしまうことなのかもしれません。しかし未来を考えれば、「ありがとう」というべきことをしていたのだと考えられます。
彼はそんな未来からの感謝や、未来の笑顔を考えて仕事に取り組んでいたのかもしれませんね。
- 著者
- ["サン=テグジュペリ", "バラエティアートワークス"]
- 出版日
- 2008-08-01
小説では少し難しという方には、『夜間飛行(まんがで読破)』がおすすめです。あまり長い小説ではないので、まんがでも省略などはなく、サン=テグジュベリの世界観を堪能することができます。
小説版も漫画版も両方読むことで、より一層、リヴィエールの苦悩や葛藤を理解できるのではないでしょうか。特に本作は読みやすいことを念頭に置かれて作成されたシリーズなので、活字が苦手な人への配慮が感じられる、入り込みやすい内容となっています。
原作の理解を深めるという意味でも、ぜひご一読ください。
- 著者
- アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
- 出版日
- 2010-07-08
ある日、ファビアンという飛行士がパタゴニアからブエノスアイレスに飛び立ちました。しかし途中で悪天候に見舞われてしまい、音信不通となってしまいました。妻であるシモーヌは心配で、リヴィエールのもとを訪れます。
リヴィエールは常日頃、絶えずこういう状況を想定しながら、絶対に起こることがないように原因を刈り取っています。それが、新航路を開拓するという仕事です。それでも今回のように、万が一が起こるのが空の仕事。彼は葛藤することとなります。
原因を探りながら、常に改善していく彼の仕事ぶりは、世の中の誰もが見習うべきところがあります。
死を想定しながら働いているリヴィエール。そんな彼は、どういった覚悟を持って決断をするのでしょうか。また、ファビアンは無事に戻ってくることができるのでしょうか。ぜひ本編で、その覚悟と結末をお確かめください。