臭いからカメムシになんて絶対に近づきたくない、そう思っている方も多いのではないでしょうか。ただ彼らが強烈な臭いを放つのには、ちゃんと理由があります。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、臭い、駆除方法などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
カメムシ目カメムシ科に分類される昆虫の総称で、強烈な臭いを放つことで知られています。「屁こき虫」や「へっぴり虫」という俗称で呼ばれ、悪臭のうえに農作物を荒らすことから、害虫として扱われることも多いです。
日本全国に生息していて、もっとも活発に活動するのは5~10月頃です。植物を好む種がほとんどで、かじって食べるのではなく、頭の下に収納しているストロー型の口器を突き刺し、水分や養分を吸って栄養を補給しています。
頭の先端が 三角形に尖り細長い触覚があること、背中の羽の付け根に小楯板(しょうじゅんばん)と呼ばれる硬い部分があるのが特徴です。体長は種類によってバラつきがあり、5mm前後の小さなものから、20mmにまでなるものもいます。
天敵はカマキリや蜘蛛、鳥類など。悪臭も彼らから身を守るために放っていると考えられています。
幼虫の頃から羽や生殖器をもっていて、蛹にはならずに成虫になる不完全変態です。脱皮をくり返しながら成長していきます。
日本にはおよそ90種類が生息しているそうです。そのなかから代表的なものを紹介していきます。
クサギカメムシ
大きさは15mmほどで、体色は黒っぽい褐色です。よく見ると黄色っぽい斑点模様が確認できます。
全国で姿を見ることができる、日本にもっとも多く生息している種類です。ホームベース型の体に頭部がついているという、いわゆる一般的なカメムシの形をしています。
屋内に侵入してくることも多いため、人間との関わりが深く、害虫として扱われることが多い種類です。
マルカメムシ
成虫でも5mmほどにしかならない小さな種類で、丸みを帯びた体型が特徴です。体色は暗黄褐色で、黒の斑点があり、光沢があります。マメ科の植物に寄生する習性があり、特にクズなどツル状の植物が大好きです。また稲穂も好みます。
成虫の姿で越冬をするため、冬の時期に家に入り込むことが多いそうです。条件がそろうと大量発生することもあるので、体は小さくても厄介な存在になることがあります。
ニシキキンカメムシ
九州の一部地域にしか生息していない種類です。体長は20mmほどにまで成長します。
体型は一般的なカメムシと変わりませんが、特筆すべきはその体色です。光沢のあるエメラルドグリーンに、オレンジや黒の鮮やかな模様が入っていて、まるで錦織のようです。背面部だけでなく、腹部や足、頭部、触覚など全身が色づいているのも珍しいでしょう。
昆虫マニアの間では人気ですが、独特の臭いは健在です。
彼らの最大の特徴ともいえる臭いは、あくまでも身を守るために発するものです。外部から刺激を受けると分泌されます。
主な成分は「酸」で、種類によって臭いは異なります。毒性のある「アルデヒド」という成分も含まれていて、カメムシを密閉された瓶などに入れると、自身の発した臭気で気絶をしたり死んでしまうこともあるほどです。
また仲間に対する警報の役割を果たしていて、集団でいる際に1匹が臭いを放つと、群れごとその場を逃げ出すそうです。
悪臭を放つだけでなきく、大量発生して農作物を荒らすこともあるため、害虫とされることが多いカメムシ。彼らは植物の葉をかじるのではなく、口器で水分や養分を吸収するので、口をつけた部分だけでなく植物全体の細胞組織を壊して大きな被害に繋がってしまうのです。
大量に発生した場合は殺虫剤を用いるのが有効です。「ピレトリン」という成分が入った薬剤は、散布された葉を食べた幼虫がそれ以上成長できなくなる効果があります。
少量であれば、ガムテープを使いくっつけて取るのがおすすめです。葉裏までよく見て、卵を産み付けられている場合はこちらもあわせて取ってしまいましょう。
- 著者
- ["林 正美", "井村 仁平", "菊原 勇作", "河野 勝行", "宮本 正一", "長島 聖大", "中谷 至伸", "庄野 美徳", "友国 雅章", "山田 量崇", "山本 亜生", "山下 泉"]
- 出版日
種類が豊富で、個体ごとの個性もあるため、実は観察のしがいがあるカメムシ。しかしやはりあの臭いがあるため、実際に採集するのは躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな時におすすめなのが、本書です。貴重な種類も含めて数多くの写真をカラーで掲載しているほか、生態や興味深い雑学などの情報が満載です。検索表もついているので、実用性もあります。
およそ10年に1度のペースで発表されているシリーズで、本書ではカメムシ科に分類される昆虫の最新の動向がわかります。忌み嫌われることの多い彼らの魅力に気付ける1冊です。
- 著者
- 新開 孝
- 出版日
- 2014-07-11
卵と幼虫の姿を中心に、カメムシの姿を追った写真絵本です。
葉っぱの裏に綺麗に並べるように産み付けられた卵や、その卵がまるで蓋を開けるように孵化する様子は意外性があり、つい惹きこまれてしまいます。
臭いがあるため不衛生な印象を受ける人も多いかもしれませんが、その体の模様からもわかるように、カメムシは実はとても美しい虫なのです。豊富な写真とともに、壮観ともいえるその姿を堪能してみてください。これまでのイメージが覆るかもしれません。