かわいらしい見た目のアナグマ。タヌキやハクビシンと間違われることも多く、「同じ穴のムジナ」という言葉の語源にもなっています。彼らは一体どんな暮らしをしているのでしょうか。この記事では、アナグマの生態や性格、タヌキとハクビシンとの違い、駆除方法などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。
イタチ科アナグマ属に分類される動物です。タヌキによく似た見た目をしていますが、タヌキはイタチ科ではなくイヌ科に分類されています。
ヨーロッパやアジアの広い範囲に分布していて、日本でも本州、四国、九州に生息しています。種類の名称は主に住む地域に当てはめられていて、「ヨーロッパアナグマ」「アジアアナグマ」「ニホンアナグマ」などと区別するのが一般的です。
体長は50cm前後でずんぐりとした体格をしています。指は前肢、後肢ともに5本ずつ生えていて、人間と同じように親指が他の4本と離れているのが特徴です。前肢の爪がとても長く、穴を掘ったり、獲物を攻撃したりするのに役立っています。
雑食性で、好物はミミズや昆虫類です。ヘビや小鳥、モグラなどを捕食することもあるようです。冬眠の直前直後の時期は、果実や植物も積極的に食して栄養を補給します。トウモロコシや麦なども食べるため、農家の方にとっては厄介な存在になることも珍しくありません。
寿命は10〜15年ほどです。
かわいい見た目とは裏腹に、とても獰猛な性格をしています。動くものにはなんでも襲いかかり、好奇心も旺盛です。人間がむやみに近づいて怪我をする例も少なくありません。
夜行性で視力はあまり良くないですが、嗅覚や聴覚が発達していて、暗い場所でも問題なく獲物を捕らえることができます。昼間は巣穴に身を隠して眠っているので、天敵に出くわす機会もほとんどなく、警戒心も強くありません。
そのためか、自身が襲われることにはあまり耐性がなく、勝ち目のない敵に目を付けられると「死んだふり」をすることがあります。体を硬直させて倒れ、まったく動かなくなるのです。
ただ彼らが意図的に「死んだふり」をしているのかどうかは、明らかになっていません。肉食動物に狙われた場合は、死んだふりをしても食べられてしまうでしょう。おそらく、猛烈な恐怖心を抱いた際の反応として擬死状態になってしまっているのではないかと考えられています。
アナグマとよく似た動物に、タヌキとハクビシンがいます。違いを説明していきましょう。
まずはタヌキとの違いです。アナグマの顔は、鼻の部分が前に突き出し、目の周りの黒い模様は縦長ですが、タヌキの鼻は低く丸顔で、目の周りの黒い模様は横に幅広い円形になっています。
次にハクビシンとの違いです。ハクビシンの顔には額から鼻にかけて白いラインが入っています。またアナグマの鼻は黒いですが、ハクビシンの鼻はピンク色をしているのが特徴です。
この3者のなかではアナグマがもっとも獰猛なので、違いを把握し、見かけても近づかないようにしましょう。
害獣として扱われ、狩猟の対象にもなっているアナグマ。畑などの農作物を荒らすこともあります。駆除方法を紹介しましょう。
まずは、箱型の罠に好物の餌を入れて捕獲する方法です。彼らは行動にパターンがあり、同じルートを行き来する習性があります。ルートを特定できれば、その線上に仕掛けると効果的です。中にはトウモロコシやスイカなどを入れるとよいでしょう。
また、農作物を害獣から守るための電気柵も有効です。アナグマ用には地面から20cmほどの高さに電線をセットすると、下をくぐることも上を乗り越えることも困難になります。
最後に、警告音を鳴らす装置もおすすめです。彼らの天敵であるオオカミやコヨーテなどの鳴き声を流すのがよいでしょう。アナグマの体を傷つけずに済む方法です。
近年、アナグマの狩猟数が年々増えている傾向にあります。これは、農作物を守ること以外に、彼らの肉をジビエ料理として扱う店が増えたからです。大きなビジネスになると、他の絶滅危惧種の動物たちが辿った道と同じ道を歩みかねません。捕獲や駆除をする場合は、生態系のバランスを考えて行動することが大切です。
- 著者
- 福田 幸広
- 出版日
- 2017-11-20
動物写真家の福田幸広が5年という長い年月を費やして、アナグマの生態を追った写真集です。とにかくかわいらしい写真がたくさんあり、見ているだけでも癒されるでしょう。雨が降って巣の中が濡れると、寝床の枯れ葉を外に出して「布団干し」をするなど、意外な行動も見ることができます。
その一方でコラムや解説文を読むと、撮影の苦労が垣間見え、作者の努力がうかがえます。アナグマは研究者のあいだでもまだ謎が多い動物だそうです。本書もただ写真を撮るだけでなく、四六時中アナグマのことを考え、執念で彼らの生活を追っていることがわかります。
見ても読んでも楽しく、興味をもったら最初に手に取ってほしい1冊です。
- 著者
- スーザン・バーレイ
- 出版日
イギリスの絵本作家、スーザン・バーレイのデビュー作です。アナグマを主人公に、親しい人の死をどのように乗り越えていくのかを描いています。
まず目に入るのは、水彩とペンを使ったイラストです。光の濃淡が美しく、細部まで丁寧に描かれていて、あたたかみがあります。
本書の主人公のアナグマは、とても賢くて、森のみんなから慕われていました。しかしある日、置き手紙を残して死んでしまうのです。残された動物たちは悲しみにくれますが、アナグマとの思い出を語りあううちに、彼が生前に残してくれたさまざまな宝物に気づいていきます。
それはつまり、アナグマの知恵や教え、記憶が生き続けているということです。小さなお子さんには「死」というものの存在に気づくきっかけになるでしょう。そして、大人が読んでも深く感動できる1冊です。