小説『とらドラ!』の魅力、名言を全10巻分ネタバレ考察!

更新:2018.9.25 作成:2018.9.25

本作は、電撃文庫から出版されている竹宮ゆゆこの作品です。小柄な容姿に反して凶暴な少女と、強面の外見に似合わず繊細で温厚な少年を軸とした学園ラブコメディですが、単なるラブコメに終始しない奥深さがあります。 ライトノベルとして始まり、漫画やアニメ化もされて大ヒットとなった本作の魅力を、余すことなくご紹介!ぜひご覧ください。

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小説『とらドラ!』のあらすじ

 

強面に似合わない心優しい少年・高須竜児は、2年生に進級したばかりのクラスで逢坂大河と出会います。彼女はお人形のように可憐で小柄な少女でしたが、それと不釣り合いな凶暴性を秘めており、誰彼構わず噛みつくことから「手乗りタイガー」と呼ばれていました。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2006-03-25

 

彼らにはそれぞれ、心の許せる親しい友人がいました。竜児は北村祐作、大河は櫛枝実乃梨です。そして2人は互いに互いの親友――竜児は実乃梨に、大河は祐作に片想いをしていたのでした。

偶然にもその事実を知った2人は、協力関係を結ぶことに。周囲には、それこそ竜児と大河同士こそ息の合ったコンビだと認知されていきますが、本人達は至って真面目に、意中の相手にアタックを続けていくのです。

その不思議な関係に美少女転校生の川嶋亜美が加わって、単なる学園ラブコメを越えた複雑な事情が描かれていきます。

恋と、愛と、友情。個人の繋がりと、家族の絆。誰もが知っていて、誰も知らない純粋な想いの物語が紡がれていくのです。

 

作品の魅力を徹底考察!

 

『とらドラ!』を一言で表すなら、青春学園ラブコメといったところ。一口にするとさらりと流してしまいそうですが、本作は非常に多様な要素を含んでいます。

ライトノベルでありながら少女漫画に近いテイストを持っているうえ、彼氏と彼女の関係という単純な恋愛モノではなく、もう一歩踏み込んだ絆の物語となっているのです。

作者の竹宮ゆゆこのデビュー作『わたしたちの田村くん』(正確には同作に収録された中編「うさぎホームシック」)は、本作と同じくコメディタッチではあるものの、中高生の恋愛を鮮やかに描いた秀作でした。

『とらドラ!』は意識的に同作を踏襲し、パワーアップさせた物語となっているのです。恋愛関係から一歩踏み込んでいるのは、このためでしょう。

いずれにしても、感情表現が途轍もなく巧みに描かれます。竹宮は現在でこそ『ゴールデンタイム』など他の代表作も発表していますが、本作は当時、まだ2作目の作品でした。

どうやらデビュー前にノベルゲームのライターをしていたらしく、数々の表現力はそこで培われたようです。それらがあったからこそ本作は笑いあり、涙あり、感動あり、家族のドロドロありの、極上の作品になったのです。

そして、その物語を魅力的に演じる登場人物も忘れてはいけません。ヤクザ風の風貌なのに妙に所帯じみているというかオカン気質の竜児、作中随一の凶暴お嬢さま大河、ムードメーカー実乃梨、優等生でまとめ役の祐作、シニカルな亜美。誰もが一筋縄ではいかない、ギャップのある破天荒なキャラクターばかりです。

このギャップ――限られた者だけが知る、そのキャラの別側面というのも、物語の原動力になっていきます。

物語、キャラの両面で練り込まれているのが、本作の1番の魅力といえるでしょう。

 

『とらドラ!』1巻の見所、名言をネタバレ紹介!

4月、ある公立高校。2年生に進学した高須竜児は、親友の北村祐作と、密かに恋心を抱いている櫛枝実乃梨と同じクラスになり、明るい学園生活へ期待を胸膨らませていました。

そこに現れた台風の目――それが逢坂大河でした。

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2006-03-25

 

北村に片想いしていた彼女は、ラブレターを間違えて竜児に送ってしまいます。それがきっかけとなって、2人は意中の相手と互いに近しいことから、協力関係を結ぶのでした。

すれ違いと勘違いは、ラブコメの醍醐味。まさしく王道の展開がくり広げられていきます。

「俺は、竜だ。おまえは、虎だ。
――虎と並び立つものは、昔から竜と決まってる。
だから俺は、竜になる。
お前の傍らに居続ける」
(『とらドラ!』1巻より引用)

大河は可愛くて凶暴で、そのうえ不器用で放っておけない少女。北村の誤解を解くために頑張って、そして玉砕した彼女に、竜児は力強くこう告げました。名コンビを生み出した名言です。

 

『とらドラ!』2巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

近いようで遠い、竜児と実乃梨、大河と北村の4人。順調なのは友人関係だけであって、なかなか進展しません。

ある時、竜児の申し出で2人はファミレスへ行きました。何度となく、くり返されたその目当ては、バイト中の実乃梨です。そこへ偶然、北村が女性を伴って現れたことで、物語が動き始めます。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2006-05-25

 

売れっ子美少女モデル・川嶋亜美。彼女はなんと、北村の幼馴染みでした。この5人目の主要人物である亜美が、ストーリーに新風と波乱を呼び込みます。

「もうやめろよ、その外面。
全部とっくにばれてんだ。
取り繕った外面なんか、かわいかろうがなんだろうが、
見てる方にしてみりゃ気分いいもんじゃねえんだよ」
(『とらドラ!』2巻より引用)

亜美はさまざまな事情から素の自分を隠し、人気者を演じる少女でした。大河とはまた違ったタイプの彼女の素顔を見た竜児は、またしても生来のお節介を焼くことになるのです。

彼のお節介によって変化していく亜美。果たして、彼女は変わることができるのでしょうか。

 

『とらドラ!』3巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

顔に似合わない野生を隠さない大河と、本性をひた隠しにする亜美は、完全にベクトルの違うキャラ同士で衝突が絶えません。ただでさえ水と油、犬猿の仲であるのに加えて、前巻で不意に起きた竜児と亜美のハプニングが、さらに大河を苛立たせていました。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2006-09-01

 

来る夏の季節に向けて、さまざまな思惑がこじれた結果、竜児の予定を賭けて大河と亜美による水泳対決が決定します。ところがこの大河、実は水着にコンプレックスがあるうえに、カナヅチだったのです。

こうしてまたもや竜児が世話を焼く結果になるのですが、果たして……。

「竜児は、私のだぁぁぁぁぁ――――――――――っっっ!
誰も触るんじゃ、なあああああ――――――――――いっっっ!」
(『とらドラ!』3巻より引用)

虎、咆哮。

ある出来事で竜児の身に大変なことが降りかかり、混乱した大河が思わずこう吼えます。彼女はツンデレとカテゴライズするにはいささか無理のあるキャラですが、そんな彼女の本心が垣間見えるデレ。もしかして、竜児に対して恋心が……?と、思わず勘ぐってしまいます。

 

『とらドラ!』4巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

ついに始まった、高校2年生の夏休み。竜児達も揃って羽を伸ばしていました。しかし、夏休みはそれで終わりません。

前巻の水泳対決から決まった、亜美の別荘への旅行。彼女の予定では竜児だけのつもりだったのが、結局は大河や実乃梨、北村までもがどやどやと参加することになりました。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2007-01-06

 

海辺の別荘で、いつもの面子の少し違った夏が始まります。竜児をサポートする大河、恋を知らない実乃梨、真意の見えない亜美。三者三様の夏が描かれます。

「……俺は、おまえがいつか幽霊を見れたらいいな、と思う。
見たいと望んで欲しい。
怖がりのおまえにこんなこと言ったらかわいそうかもしれねぇけど……
おまえに見てほしがってる幽霊が、多分、この世にはいる……とか、思うから」
(『とらドラ!』4巻より引用)

恋愛について聞かれて、実乃梨は幽霊にたとえて、そのことを話し出します。幽霊(恋愛)を知らないと言う彼女に対して、竜児はこう返しました。もうこれは、ほぼ告白といってしまっていいのではないでしょうか。

この絶妙な言い回しが竹宮ゆゆこの真骨頂です。

 

『とらドラ!』5巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

夏休みが明けた学園生活にも、次のイベントが控えていました。それは文化祭です。

慌ただしくも楽しい雰囲気で、竜児達の周囲がにわかに活気づいていきます。そしてそんななか、ずっと1人暮らしをしていた大河のもとに、突然、実の父親が現れます。

父を知らない母子家庭の竜児は喜ぶのですが、大河と仲がいいはずの実乃梨がなぜか反発するのです。その理由は……?

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2007-08-01

 

実乃梨の様子がおかしい理由。並行して進む文化祭のどんちゃん騒ぎ、物語はいよいよ深みを増していきます。

「あたしはね、たとえば手乗りタイガーみたいに、
べったり高須くんと一体になったりしない。
(中略)あたしは、川島亜美は、
高須くんと同じ地平の、同じ道の上の、
少し先を歩いて行くよ(後略)」
(『とらドラ!』5巻より引用)

竜児はあろうことか、意中の実乃梨と口論してしまいます。へこむ彼に対して、亜美はひっそりと寄り添うのでした。一歩退いた彼女の本音が窺える台詞です。

また、本巻では、大河の父親を巡って一騒動が巻き起こります。それによって、彼らの関係はどうなっていくのでしょうか。

 

『とらドラ!』6巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

あれほど熱を帯びた文化祭も一段落した時期。竜児達の関係に少しだけ変化が出ていました。雨降って地固まるの如く竜児と実乃梨は接近し、後夜祭の一件から大河と北村が噂され始めていたのです。

そして、次期生徒会長を選ぶ選挙が始まります。そんななか、生徒会役員にして次期会長候補と目されていた北村は、何を思ったか突然非行に走り出すのです。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2007-12-10

 

原因は彼の敬愛する「みんなの兄貴」こと、狩野すみれ現会長にあるようですが……。真面目を絵に描いた男が、どうしてこうなったのか。竜児と大河達は奔走することになります。

「踏み出したい1歩が、あるんだろ!? 
あるから迷うんだろ!?
(中略)とっくに、てめえの腹は決まってるんだよ! 
とにかく下ろしゃいいんだ!
それ以外になにがあるんだよ!!」
(『とらドラ!』6巻より引用)

狩野すみれ渾身の兄貴節。この一言が、鬱屈していた北村を立ち直らせました。

本巻では、変わり始めた竜児達の葛藤に注目です。好きという想いと、ずっと友達でいたいという相反する想い。読んでいて、思わず胸が苦しくなるでしょう。特に竜児と実乃梨のやり取りは見所です。

 

『とらドラ!』7巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

季節は冬になりました。生徒会選挙の一悶着で2週間の停学となっていた大河も、お務めが明けて学校に戻ってきます。

クリスマスを目前に控えて、取って付けたように「いい子」を演じ始める彼女。それとは対称的なのが実乃梨でした。気がかりから部活でミスを起こし、いつもの明るさを失って塞ぎ込んでいるのです。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2008-04-10

 

北村率いる新生生徒会主催のクリスマスパーティで生徒達が浮かれるなか、実乃梨はひっそり苦悩します。果たして大河は、実乃梨は、報われるのでしょうか。

「(前略)あんたがそんなにやる気なら……大丈夫。
心配しないで、あんたはそのやる気を燃やし続けるのよ。
あとのことは、このエンジェル大河さまにすべて任せなさい」
(『とらドラ!』7巻より引用)

トラブルに見舞われてきたクリスマスパーティの当日。実乃梨に同行を断られた竜児へ、大河はこう請け負いました。その努力がどんな実を結ぶのか……。

彼女は、竜児への気持ちに気づいてしまいました。それでも2人のために動こうとするのです。2人が一緒にいるであろう時に、1人孤独と戦う彼女の心境は、読んでいて思わず切なくなってしまいます。

 

『とらドラ!』8巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

クリスマスの出来事から竜児はインフルエンザにかかり、気付けば年が明けていました。その間、大河が珍しく親身にしてくれていたのですが、新学期早々に独り立ちを宣言します。実乃梨との仲が進展しないのは、自分が傍にいるからだと。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2008-08-10

 

はっきりしない竜児と実乃梨の2人に対して、はっきり失恋した大河と北村の方は妙な雰囲気になっていきます。その意味に竜児が気付かないまま、2年生最後のイベントである修学旅行が始まりました。

「みんながうまくいく、
魔法みたいなきっかけがバシッ! とここで欲しいわけよ」
(『とらドラ!』8巻より引用)

楽しいだけのはずの修学旅行先で、実乃梨は竜児にこう言います。表面上どれだけ整えても、ぎくしゃくした関係は元通りになりません。それは2人の関係にも当てはまることでした。

本巻では、この微妙な人間関係の果てに、実乃梨と亜美のバトルが発生してしまいます。怖すぎる、女のバトルも必見です……!

 

『とらドラ!』9巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

2年生も終わりに近付き、最終学年3年生の生活と、その先にある進路について考える時期がきていました。まだ半分子供の高校生が将来について考えるのは難しく、竜児は母親の泰子と意見が衝突します。

そして大河にも放蕩の父親に代わって、音沙汰のなかった母親の影がちらつくのです。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2008-10-10

 

竜児と大河を巡る環境が、有無をいわさず変化していきます。彼らは進路と同時に、人生の岐路にも立つことになるのです。

「私の幸せは、私が、この手で、
この手だけで、掴み取るんだ!
私にはなにが幸せか、
私以外の誰にも決めさせね――――――――――っ!」
(『とらドラ!』9巻より引用)

嵐の前の静けさ。ささやかなバレンタインの当日に、実乃梨が爆発しました。想いを隠そうとする大河へ、こう言って詰め寄るのです。彼女が竜児に好意を抱いているのは明白ですが、それよりも夢を優先させると決めたからこその台詞。

彼らの今後の運命は?目が離せない一冊です。

 

『とらドラ!』10巻の見所、名言をネタバレ紹介!

 

親との訣別、あるいは駆け落ち。そこまで考えていたわけではないものの、竜児と大河は手を取り合って姿を消します。それは彼らなりの意地であり、矜持であり、覚悟の表れでした。

実乃梨、北村、亜美やクラスメイトですら、彼らが逃げに回らざるを得なくなった横暴に立ち上がります。

伝説のラブコメここに完結です。

 

著者
竹宮 ゆゆこ
出版日
2009-03-10

 

『――この世界の誰1人、見たことがないものが、あった。(中略)
そう簡単には手に入れられないように、世界はそれを隠したのだ。
だけどいつかは、誰かが見つける。
手に入れるべきたった1人が、ちゃんとそれを見つけられる。』
(『とらドラ!』10巻より引用)

これは台詞ではありませんが、第1巻にも書かれたメッセージが、ほとんどそのまま最終巻にも出てきます。本作が「見たことないもの」を伝える物語だったことわかる象徴的な1文です。

大きく変化していった、彼らの関係。果たして、その行き着く先とは?そして、竜児と大河の運命は?感動の結末は、ぜひご自身でお確かめください。彼らの生きざまから、きっと希望が見出せるはずです。

 

いかがでしたか?入り口はポップで軽く、なのに全巻読み終わった時には独特の感慨深さが残ります。これこそ名作といわれる所以なのではないでしょうか。