海を描いたイラストでよく登場するカモメ。夏のイメージが強いですが、実はその多くが夏の間は日本にいないのをご存知でしょうか。この記事では、彼らの生態や種類ごとの特徴、特殊な睡眠法、ウミネコとの見分け方などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
チドリ目カモメ科に分類される鳥類です。春から夏にかけてカナダ西部やアラスカで繁殖をし、秋から冬にかけて日本や中国大陸に飛来して越冬をします。冬季には日本全国の沿岸や内湾、港、干潟などの水域で姿を見ることができます。
体長は45cmほどで、翼開長は110~125cmほどです。大きな翼と高い飛翔能力をもっています。
短い足には水かきがついており、泳ぎも得意です。海岸の風に乗って上空を漂い、餌の魚を発見したら水面に降りて捕食します。その他にもゴミを漁ったり果実を食べたりすることもあり、食性は雑食です。また人に対する警戒心が薄いことから、観光客の持つ食べ物を狙うことでも知られています。
繁殖期は春から夏で、この時期になるとコロニー(集団繁殖地)を形成します。集団活動をおこなう理由は、無防備になりがちな時にキツネやカラスなどの外敵から身を守るためだそうです。
ただ小さな島や半島の先端などの狭い面積に作られるため、かなりの数の巣が密集することになり、カモメ同士での縄張り争いも起こりやすくなるため、負傷をする個体も多くなります。
平均寿命は20年ほどだといわれています。
同じカモメ科に分類されるアジサシの仲間を除くと、日本で見ることができるカモメは25種類が確認されています。代表的なものを紹介しましょう。
ユリカモメ
体長は40cmほどです。東京都などの自治体の鳥にも指定されています。冬季になると全国の沿岸や河川、湖岸などで姿を見ることができます。
日本に飛来している時期はくちばしの色が赤色ですが、夏は暗褐色になり、頭部の羽毛は白からチョコレート色に変化するのが特徴です。
オオセグロカモメ
体長60cm以上と大型の種類で、日本で1年を通して姿を見ることができる留鳥です。東北地方以北で繁殖期を過ごし、秋になると南下します。
海岸線や砂浜に生息し、夏は黒い翼に白い体毛、冬は灰色の翼と、頭から胸にかけて褐色の斑が浮かんだ姿になります。
ミツユビカモメ
体長は40cmほどで、冬場に関東以北の沖合や沿岸で姿を見ることができます。海上を好むため、漁船から魚を盗ったり、船の上やオットセイの上で休んだりする様子がよく見られます。
また繁殖期以外も群れで行動するのが特徴です。
シロカモメ
体長は70cmほどと大型の種類です。関東以北の沖合や沿岸で越冬します。
全身が白っぽい羽毛に覆われていて、他種のカモメともよく行動をともにするのが特徴です。
一部の種類を除き、彼らは3月から4月のあたたかい時期になると数千羽にもおよぶ群れを作って日本を飛び立ち、繁殖地を目指します。
基本的には昼間に移動をし、湾曲した隊列を作って飛行します。隊列を作ることで、後ろを飛ぶ個体は前を飛ぶ個体の陰になり空気抵抗を減らせるため、通常よりも10%以上体力の減少を抑えることができるそうです。
中継地にはタカやハヤブサといった猛禽類が、渡り鳥を捕食しようと数多く集まってきます。そのためカモメなどの渡り鳥は追い付かれたり狙われたりしないよう常に飛び続ける必要があるのです。とはいえまったく休まずに飛び続けるのは不可能なので、彼らは「半球睡眠」という特殊な方法を使います。
これは脳の左右を半分ずつ休ませる方法で、眠ることと周囲を警戒することを両立できるというものです。カモメはこの睡眠方法を駆使しながら長距離を飛び続けているのです。
名前からは想像がつかないですが、実はウミネコもカモメ科の鳥です。夏の羽毛は白い体に青灰色の翼、冬は褐色がかるといった外見がよく似ていて、一見区別がつかないほどそっくりです。
2種の大きな違いとして挙げられるのは、カモメが寒くなると飛来してくる冬鳥であるのに対して、ウミネコが留鳥であることでしょう。ウミネコは北日本で繁殖をするため、1年を通して姿を見ることができます。特に青森県八戸市の蕪島や山形県酒田市の飛島は、国の特別天然記念物にも指定されているほど繁殖地として有名です。
夏の海にカモメがいるイメージがある方も多いかと思いますが、もしかしたらその多くはウミネコかもしれません。
外見上の特徴は、カモメのくちばしが黄色一色であるのに対し、ウミネコのくちばしは根元が黄色く先端部に赤と黒の模様があることです。また飛んでいる姿を下から見ると、ウミネコの尾羽には黒い斑があることがわかります。
鳴き声を聞いてみると違いがわかりやすく、ウミネコが低く太い声で猫のように鳴くのに対して、カモメは高音でのびやかという違いがあります。
- 著者
- 叶内 拓哉
- 出版日
- 2016-10-21
日本国内で姿を見ることができる300種類の野鳥を、科ごとに分類して紹介した図鑑です。カモメとウミネコのように、外見が似ていて判別が難しい種類の写真を隣に並べ、比較できるよう構成されています。
またなかなか見る機会が少ない種類は、大きさのイメージをしやすいようスズメなどの馴染み深い鳥とも比べられる工夫がされているのも嬉しいところです。
国内で姿を見られる時期や生息地、鳴き声などの基本的な生態ももちろん網羅しています。コンパクトサイズなので、バードウォッチングのお供にもおすすめです。
- 著者
- いしい ひろし
- 出版日
- 2015-07-03
カモメだけが働く運送会社「かもめたくはいびん」を舞台に、初めてやってきた異種の生物ペンギンとのやりとりを描いた絵本です。
ペンギンが空を飛べないことを誤魔化したり、カモメたちが海鳥なのに雨に濡れるのを嫌がったりと、大人が読んでも思わずくすりとしてしまう描写がたくさんあります。
イラストは妙にリアルながらも、優しいタッチで、表情豊かです。登場するキャラクターたちに親しみをもてる作品です。
現生するおよそ340種の海鳥のなかでも、軽やかに飛行ができるとされるカモメ科の鳥たち。種類によっては海まで足を運ばずとも都市部の河川で姿を見ることができるので、どのように飛んでいるのかじっくり観察をしてみても面白いのではないでしょうか。