「みゃあみゃあ」とまるで猫のように鳴く「ウミネコ」。日本では1年中姿を見ることができる、カモメによく似た鳥です。この記事では、彼らの生態や鳴き声、国の特別天然記念物にもなっている繁殖地、カモメとの見分け方などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
チドリ目カモメ科カモメ属に分類される鳥類です。ロシアの南東部から中国の東部、朝鮮半島、台湾、日本に生息していて、国内では各地の沿岸で姿を見ることができます。
体の大きさは45cmほどです。くちばしは付け根から半分ほどが黄色でその先が黒、先端が赤色をしています。眼球は黄色く、また目の周りに赤色のアイリングがあるのが特徴です。
腹部は白色、背中からお尻にかけての羽は濃い灰色で、尾に黒い帯があります。派手な容姿ではありませんが、シンプルながらもコントラストの美しい鳥だといえるでしょう。
雑食性で、昆虫や爬虫類、魚類、哺乳類の死骸などを食べます。餌があるとわかると、他の動物から奪おうとすることもあります。ただ猛禽類のように狩りに優れた攻撃性はありません。余程のことがない限り争いは避ける傾向にあります。また天敵のいるカラスやキツネが生息する場所にはほとんど現れません。
寿命は平均で12年ほどで、なかには20年以上生きるものもいるようです。
名前だけを聞くと、海の近くに暮らす猫を想像してしまうのではないでしょうか。実際に漢字では「海猫」と書きます。容姿はまったく異なるのにこのように名付けられたのは、彼らの鳴き声が猫にそっくりだからです。
ウミネコの鳴き声は「みゃあみゃあ」とまさに猫そのものです。離れた場所で聞くと、聞き分けられないこともあるようです。地域によっては「ハマネコ」や「ネコドリ」とも呼ばれてきました。
ちなみに、彼らの鳴き声を猫のようだと感じているのは、日本人だけかもしれません。たとえば犬の鳴き声が英語で「bowwow」、ニワトリの鳴き声が「cock-a-doodle-doo」とされるように、国が異なれば聞こえ方も異なるのです。現にウミネコの英名は「Black-tailed Gull」で、「尾に黒い帯があるカモメ」という意味になります。
ウミネコは繁殖期になると、それぞれの生まれた場所に戻り、大規模なコロニー(集団営巣地)を形成する習性があります。
コロニーが作られる場所は、無人島や断崖に囲まれた半島などです。天敵やほかの生物に極力邪魔されない場所を選んでいます。東京上野にある不忍池周辺では、ビルの屋上にコロニーが作られたこともあるようです。
なかには数万羽が集まる場所もあり、岩礁の一帯がウミネコで埋めつくされる光景は圧巻です。こうした風物詩と生態を守るため、国内では10か所ほどの繁殖地が国の天然記念物として指定されています。
特に有名なのが、青森県八戸市の蕪島です。毎年3万羽のウミネコが集まり、1万羽の雛が孵るといわれています。間近で子育ての様子が見られる貴重な場所だそうです。
日本での繁殖は主に4〜5月にかけておこなわれ、枯草や木の枝、海藻などで皿状の巣を作り、1度の産卵で2~3個の卵を産みます。6月中旬頃に孵化し、1か月ほどで雛は巣立っていきます。
彼らとよく似た鳥に、カモメがいます。ウミネコもカモメ目に分類されるのでたしかに近縁種なのですが、とにかく見た目がそっくりで、見間違えてしまう人も多いようです。ただ決定的な違いもあるので、説明していきましょう。
もっともわかりやすいのが、くちばしです。ウミネコは付け根が黄色く、その先が黒、先端には赤色の模様があると先述しました。しかし、カモメでは模様がなくほぼ黄色です。
またウミネコの尾先には黒い帯状の模様がありますが、カモメにはなく白一色です。離れたところから見分けるポイントになるでしょう。
ウミネコの特徴でもある鳴き声にも違いがあります。カモメの鳴き声は猫とは似ても似つかず、カラスのような声色を高くしたものです。
さらに、ウミネコは国内で1年中姿を見ることができる「留鳥」ですが、カモメは冬になると日本へやってくる「渡り鳥」です。夏場にカモメだと思って見ていたのは、ウミネコの可能性が高いでしょう。また彼らはコロニーで魚の群れを狙うため、漁師からは「漁場を教えてくれる鳥」としても親しまれています。
- 著者
- 叶内 拓哉
- 出版日
- 2015-02-06
ウミネコとカモメのように、見た目がよく似ている鳥というのは世の中に数多く存在しています。本書は、それらをとことんくらべることにこだわった図鑑です。日本国内で見られる野鳥を中心に、300種以上を収録しています。
似ている鳥たちをずらっと並べているため、芋づる式にさまざまな知識をつけることができるのが嬉しいポイントです。近縁種が多い鳥には数ページが割かれている場合もあります。
細かな識別方法もしっかりと解説しており、内容の濃さは抜群です。また実際に野鳥を見る際の深い観察力を養うことにも繋がるでしょう。
- 著者
- 畑 正憲
- 出版日
- 2012-09-25
動物ブームの元祖火付け役といっても過言ではない、「ムツゴロウさん」こと畑正憲の作品です。学術書のような堅苦しいものではなく、彼が動物たちと接するなかで感じた愛らしい姿や生態を綴った、ノンフィクションです。
本書は海辺の動物に特化していて、ウミネコをはじめオオサンショウウオやカブトガニなど、さまざまな種類の動物たちについて知ることができるでしょう。
彼らの暮らしを語るには、きれいごとだけでなく命の残酷な部分も避けてはとおれません。直接触れ合うことで体験した死や病気などについても記されていて、大自然のなかで生きる過酷さや、動物たちの力強さを感じることができるでしょう。