ガイ・リッチーの映画に強く影響を受けたという成田良悟。驚くほど大量の個性的なキャラクターを巧みに操る展開が魅力です。 そんな成田良悟の作品のおすすめを5作ご紹介します。
成田良悟は日本の小説家です。東京都で生まれ、埼玉県で育ち、日本大学文理学部地球システム学科のリモートセンシング研究室を卒業しました。小説家志望だったため、就職活動の名目のもと20日前後で『バッカーノ!』を書き、電撃ゲーム小説大賞の金賞を受賞し、デビューしました。
群像劇とB級映画嗜好で、作風の中にもその影響が多く見られ、多数のキャラクターたちが登場する群像劇を得意にしています。速筆ですが、誤字脱字も多く、その誤字をきっかけにしたキャラクターや設定を追加してしまうこともあるのだとか。
年に12回以上という締め切りをこなしつつ、たくさんのゲームもやり込んでいるせいで常に不健康な状態で、よく身体を壊していることを話のネタにしています。作品を楽しみにしている読者が多いのですから、身体には気をつけてほしいですよね。
また、過去には『撲殺天使ドクロちゃん』『とある科学の超電磁砲』『悪魔城ドラキュラ』『Fate/staynight』『BLEACH』などの人気作のスピンオフ小説も担当しています。
作家の知り合いが多く、おかゆまさき、浅井ラボ、三田誠、奈須きのこらと交流している様子が、サイトの日記などでうかがうことができます。
洋上の船アドウェナ・アウィス号で錬金術師たちが不老不死のために召喚した悪魔は、「不老不死になる酒」を与えると同時に、その酒の製造法を召喚主であるマイザー・アヴァーロに教えました。
それから300年後の1930年、禁酒法時代のアメリカを舞台にして、その不死の酒を巡る「馬鹿騒ぎ」がはじまっていくのでした。
- 著者
- 成田 良悟
- 出版日
- 2003-02-10
タイトル『バッカーノ』はイタリア語の「馬鹿騒ぎ」を意味します。そのタイトル通り、多くの登場人物たち――なんと、90人にものぼるキャラクターたちが繰り広げるにぎやかでスリリングな群像劇です。シリーズに一貫した主人公はいません。
最初は1930年、2作目は1931年と1エピソードにひとつの年が綴られる形ですが、上下巻や同時進行のものもあり、必ずしも1巻で完結しているわけではありません。禁酒法の時代の他に1700年代を舞台にした過去編、2000年代を舞台にした現代編があります。
それにしても、各年代に渡って、これだけのキャラクターをよくも見事に動かせるものだと感心するとともに、スリリングで楽しい展開にずっぽりとはまってしまいます。これだけ長きにわたりファンの心を掴み続けるのもわかる作品です。
舞台は現代の池袋。都会の非日常に憧れる竜ヶ峰帝人は、幼なじみの紀田正臣とともに来良学園に入学するために上京した初日、都市伝説の「首なしライダー」を目撃してしまいます。
やがて、帝人は想像を超えた非日常の数々に巻き込まれていき、事件には「首なしライダー」を含むさまざまなキャラクターたちが関わって……。
- 著者
- 成田良悟
- 出版日
- 2004-04-10
池袋を舞台にして、メインのふたりや「首なしライダー」セルティの他にも、浮世離れした美少女・園原杏里、セルティと同居する医者・岸谷新羅、多くの事件の黒幕的存在で新宿を拠点にする情報屋・折原臨也、池袋最強の男・平和島静雄など、多くのキャラクターが登場する群像劇です。
なんといっても、本作の最大の魅力は個性的なキャラクターたち!誰もがひとりはお気に入りのキャラクターを見つけられると思います。
13巻をもって竜ヶ峰帝人たちのエピソードは完結していますが、2014年以降は、1年後を描く続編の『デュラララ!!SH』がスタートしています。
佐渡と新潟を繋ぐために架けられた世界一巨大な橋・越佐大橋と、その橋の中央部に造られた人工島は、レジャー施設兼観光スポットになるはずだったのに、不景気などの要因が重なって完成直前で放棄されてしまっていました。
その場所には、犯罪者や居場所をなくした流浪人などが移り住み、やがて、危険な無法地帯となっていき……。
- 著者
- 成田 良悟
- 出版日
越佐大橋をいっしょに訪れた幼なじみが組織抗争に巻き込まれて死んだことが受け入れられない狗木誠一、西の組織の自衛団リーダー・葛原宗司、地下街の食堂で働く霧野夕海、西組織の当主の娘・イーリー、東区画を仕切るマフィアのボス・ギータルリンなどなど、多種多様の癖のあるキャラクターが登場し、目まぐるしく展開していきます。
日本であって日本でないという世界観が素晴らしく、ストーリー展開の面白さが際立っている作品です。
全身が液体であるという姿形も、嘘や屁理屈を多用しつつもとにかく紳士な性格も、喋ることはできずに念力で身体を操作して感情を地文字の大きさやフォントで表現するというコミュニケーションの方法も、与えられた称号の「子爵」も、なにもかもすべてゲルハルト・フォン・バルシュタインは吸血鬼らしくありません。まさに、この世で最も吸血鬼らしくない吸血鬼なのです。
そんなおかしな彼が治める島で起こる事件は、まったくもって普通ではないのでした。
- 著者
- 成田 良悟
- 出版日
つかみどころのないゲルハルトの称号「子爵」はドイツに存在しないはずのもので、彼が本来なら存在しないはずの吸血鬼であることへの皮肉にもなっています。城内でもっとも弱いというのも逆に魅力的です。
多種多様の吸血鬼、半人半鬼、食鬼人、人間たちが入り混じって、グローワース島を舞台にした騒ぎを繰り広げる成田良悟定番の展開ですが、それが実に面白い。さすがのストーリーテリングで、どんどん読んでしまいます。吸血鬼らしくない吸血鬼の滑稽な言動を楽しみつつ、ぜひ読んでみてくださいね。
自分は情報屋だと嘯く男――折原臨也は、実際に情報屋と呼べるような生業をしているのかどうかはわからないものの、数多の情報を手に入れるだけの力やルートを持っているのは確かでした。正義の味方でも悪の手先でもなく、自分がないというわけでもない平等さを持つ彼は、ただ情報を流し、誰かの背中を押すのです。
- 著者
- 成田良悟
- 出版日
- 2015-07-10
『デュラララ!!』の人気キャラクターをメインに据えたスピンオフものですが、本作単体でも充分に楽しめます。
平和島静雄との決戦後に所在不明となっていた折原臨也は車椅子に載っていますが、もう歩けないというわけではなく、リハビリさえすれば普通に戻るのに面倒になってやめてしまい、面白そうな事件があった場所へと情報屋として出向いているという状態です。
今回は、鉱山を所有する阿多村家と有力政治家である喜代島家というふたつの一族が牛耳っている武野倉市が舞台。折原臨也の好き勝手ぶりを楽しめるシリーズとなっています。臨也が好きでもそうでもなくても、しっかりと成田良悟節が味わえますよ。
速筆ゆえの誤字脱字すら怪我の功名とばかりに活躍を続けている成田良悟。シリーズものだからこその群像劇の魅力をぜひとも堪能してみてください。