『久住くん、空気読めてますか?』は「月刊ガンガンJOKER」で連載されている、もすこの作品。主人公の女子高生は、学校中から注目される美少女ですが、なぜか目立たない地味なクラスメイトにご執心。そんな彼らの噛み合わない日常が、4コマで描かれていきます。 本作は漫画アプリ「マンガUP!」からでも手軽に読むことが出来るので、気になった方はぜひお試しください。
主人公の女子高生・佐倉えりかは、学校中で評判の美少女。その一挙手一投足には、男子だけでなく女子からも溜息が漏れるほど。
そんな彼女に対して、学校の中で唯一無反応なのが、クラスメイトの久住でした。地味で冴えない彼は、ほとんど誰からも相手にされない無害な男子です。
その目立たなさすぎる異質さが、かえってえりかの注意を引きます。そしていつしか彼女は、彼の行動を目で追うようになり、誰も気にしていい、彼の空気を読まない奇行を目撃し、日常生活のペースを乱されていきます。
- 著者
- もすこ
- 出版日
- 2015-11-21
あまりにも対称的すぎる男女2人のストーリーである本作。えりかは一方的に振り回され、気が付けば段々と久住に惹かれていきます。そして当人は頑なに認めないものの、周囲の友人はそれとなく察しつつ、2人の様子を見守るのです。
本作は基本的に4コマ漫画となっていますが、普通の4コマ漫画が1ページに2本ほど載せるのに対して、1ページに1本と、コマがかなり大きめに取られています。そのため4コマ漫画にも関わらず、ストーリー漫画に近いくらい情報量が多いのが特徴です。
これによって『久住くん、空気読めてますか?』では、4コマ特有のショートコメディと、ストーリー漫画のような対人関係の変化を、同時に楽しむことが出来ます。
4コマの手軽さとストーリー漫画の面白さが、ゆるい日常と合わせて楽しめるのが、本作の魅力でしょう。
作品のタイトルにもなっている久住は、不思議なキャラクターです。
毎回必ず登場するのですが、決して喋らず、感情も出さず、何を考えているのかわかりません。ポジションとしては、えりかに並ぶ主人公格といえるのですが、作中での扱いは(えりかの認識を除いて)モブキャラに近いようにも思えます。
それでいて存在感だけは抜群。決して周囲から孤立しているわけではないのですが、色が違うというか、濃度が違うというか、クラスからはどこか浮いているのです。そんな久住というキャラクターを表すなら、「マイペース」の一語に尽きます。
授業中にシャーペンをいじりだし(でも勉強は出来る)、学校では場違いなヘッドフォンでリズムを取って鼻歌を歌い(でも誰にも気付かれない)、珍しく大人しいと思ったら目を開けたまま寝ていることも。
さらには窓辺や雑木林で黄昏れていることもあるのですが、実はそれは野鳥の観察だったりするのです。彼はなぜか、無類の鳥好き。
そして1番の不思議は、誰もが思わず目で追ってしまう美少女・えりかを気にも留めないということです。
常に空気を読まず、とにかくマイペース。でもキメる時はしっかりとキメる、憎いやつ、久住。えりかにまったく反応を示さないのも何だかかっこいいです。
本作の主人公で、今時の女子高生らしく垢抜けていて、クラスどころか学校中の人気者である、えりか。
どんな行動も、言動も、好意的に解釈されるスーパーモテガール。これまでに無数の男子が告白するも、ことごとく玉砕しています。これまで誰1人彼女の心を射止めた者はいませんでした。久住がその存在感を示すようになるまでは。
彼女の見た目は、いわゆるギャル系のリア充です。友人も含めてけっこう遊んでいそうなのですが、実は違います。言動こそパリピのそれですが、内面は完全に純情乙女。久住に惹かれる心を認められない、ピュアな少女なのです。
口では久住なんて地味で気にならないと豪語しつつ、その挙動を常に視界の端で追いかけてしまうなど、まったく素直になれません。あるいは、それはウブな恋心と、自他ともに認めるモテガールの厄介極まりないプライドの合わせ技なのかもしれません。
とはいえ、彼女の恋する乙女なムーブは、読者にはバレバレです。そして一部の友人にも周知の事実。認めないのは本人だけ。
気にしていない、と口にすることから気にしていることが丸わかり、という典型的な自爆を披露してくれます。そして、またそれに対して、真っ赤になって過剰なまでに否定するところが可愛らしいです。
想像力があるというか、案外妄想逞しくて、乙女フィルターのかかった想像の中の久住に、キャーキャー言い始めるところもポイントです。
『久住くん、空気読めてますか?』は、非常にゆるい世界観のラブコメ。
ドキドキするのは主にえりかの暴走具合で、他には傷付くことがない優しい世界です。傷付くことはないものの、恥をかくことはありますが……。
その一端を担っているのが、主役を脇から支える友人達です。ゆっここと市川祐子は、えりかと1番仲のいい女子で、えりかの気持ちに気付きつつ、フォローしたり、いじったりします。
そして久住の友人である、千葉榛名(はるな)。恐怖のヤンキーとして、誰からも恐れられているのですが、実は気配りの出来る好人物です。空気の読めない久住とは対称的。えりかやゆっことも、徐々に親しくなっていきます。
話が進むとライバルキャラも登場しますが……基本的に劇的なことが起こらない、そのゆるさが最大の魅力なのです。
季節は冬。えりかにとって見過ごせないイベントが迫っていました。彼女は榛名の口から偶然にも、久住の誕生日が近いことを知ったのです。
口ではどうのこうの言いつつ、プレゼント選びにまごつく榛名を手助けするという名目で、彼女も一緒に店舗巡りに勤しみます。
- 著者
- もすこ
- 出版日
- 2018-02-22
相変わらずえりかは素直に態度を表さないものの、潜在的デレ具合はMAX。数々の出来事を通じて、彼女は久住や友人達との距離を縮めていきます。見守る読者としても、ニヤニヤは過去最高潮に達することでしょう。
そんな誕生日を経て、作中では2度目のバレンタインがやってきます。どうやってチョコレートを渡すのか、それによって関係がどう変わってしまうのか、ハラハラドキドキさせらてしまいます。そして、ついに決定的な一言が飛び出し……。
この他にもクリスマスや初詣などイベント満載の冬が訪れます!ゆるゆるラブコメの行く末を、ぜひ実際にご覧ください。それにしても、相変わらず1巻につき一言しか発しない久住の存在感に笑えてしまいます。
いかがでしたか?ツンデレのツン成分が限りなく少ないえりかのべた惚れ具合、久住の鈍感さ、それを周囲が優しく見守る独特な4コマラブコメディ。きっと、あなたも癒やされることでしょう。