ミステリーの探偵役として活躍するシニア世代は昔から存在していましたが、どちらかというと安楽椅子探偵として、知恵だけを貸してくれる人物が主流でした。しかし「メゾン・ド・ポリス」シリーズのシニアたちは、まだまだ頭も体も現役の一流警察官たち。ちょっと腰や目が悪くなっただけ。 2019年1月からは、テレビドラマ化も決定している本作。そんな明るく陽気なシニア探偵たちが活躍するミステリーシリーズを、ご紹介します。
新米女性刑事、牧野ひより。
彼女はなかなか捜査に参加させてもらえず、雑用ばかりの毎日に飽き飽きしていました。そんななか、ある事件とよく似た殺人事件が発生。彼女は課長の命令で、以前起こったその事件を担当していた刑事から話を聞いてくるように言われたのでした。
訪ねていった先は、なぜか老人たちが暮らすシェアハウス。話を聞く相手は、刑事を途中退職し、そこで雑用として働いている、夏目惣一郎という男性だったのです。
しかし、まともに相手もしれくれない、心を閉ざしたその男に閉口してしまう、ひより。さらに、もっと驚かされたのは、そこにいる老人たちのクセの強さ。
実はこのシェアハウス、退職した元警察のメンバーたちが暮らす場所だったのです。しかも、まだまだ現役の頭脳を持つ強者たちばかり。そんな彼らの助けにより事件は解決しますが、それをきっかけにして、老人たちのデカ魂が復活!ことあるごとに彼女を呼び出し、事件に首を突っ込むようになるのです。
しかも、それが結局難事件の解決に結びついてしまうので、彼女も彼らの実力を認めざるを得ません。
- 著者
- 加藤 実秋
- 出版日
- 2018-01-25
そんな、いろいろな事件と並行して語られるのが、老人たちの過去です。彼らは、それぞれの問題を抱えて生きています。特にひよりが最初に訪ねた夏目は、過去の辛い事件がきっかけで、自ら刑事を辞めたらしいことが判明するのです。
シリーズ第1作のラストの事件で、その事件を再捜査することになりますが、それにはなんと、ひよりの過去も絡んでいて……実は彼女も、複雑な家庭事情を抱えている人物なのでした。
本作は2019年1月から、ドラマ化も決定。牧野ひより役を高畑充希、夏目惣一郎を西島秀俊が演じます。シェアハウスのクセのある面々を小日向文世、角野卓造、近藤正臣、野口五郎の、豪華な個性派たちが彩っている作品です。主題歌は人気バンド・WANIMAが担当することも発表され、ますます注目されている作品です。
1966年、東京都生まれ。
2003年に創元推理短編賞を短編「インディゴの夜」で受賞し、デビュー。ティーンズ小説や漫画の原作なども手掛け、幅広い読者層に支持されている作者です。
インディゴの夜 (集英社文庫)
2013年04月19日
読みやすく、入っていきやすい内容のミステリー小説で、キャラクターがどの作品においても魅力的なのが特徴。その辺のところにも、シリーズ化される人気の秘密があるのではないでしょうか。
デビュー作をはじめシリーズものが多く、ドラマ化、舞台化される作品も多数あります。
「メゾン・ド・ポリス」の登場人物たちは退職刑事ということですが、全員ヨボヨボの人たちなのでしょうか?確かに老眼だったり、腰にきたりしている年配の方たちが主ですが、実はプロフェッショナルたちの集まりでもあるのです。
ことの発端は、ある事件。
1人の男性が、火をつけられて焼死する様子が、ネットで中継されました。それを見た世間の人たちは衝撃を受けるとともに、以前にも似た事件があったことを思い出すのです。
犯人はすでに逮捕されているので模倣犯ということになりますが、殺された男性は、いたって評判のいい人物。容疑者すら浮かびません。
- 著者
- 加藤 実秋
- 出版日
- 2018-01-25
そんな折、雑用ばかりやらされていた新人刑事のひよりは、捜査に参加させてくれるよう直訴。そして言い渡された仕事が、今回と似た事件を担当していた夏目という男を訪ねて、参考になる話を聞いてくることでした。
当の夏目本人は非協力的でしたが、そこにいた他の退職刑事たちの協力により、この事件は解決に向かいます。
このことをきっかけにして、退職刑事たちのデカ魂に火がつき、その後に起こる事件にも首を突っ込んでくるように。彼らに振り回されるひよりですが、結果すべてはよい方向にいくのでした。そして、それとともに、それぞれの人物が抱える問題も解決に向かっていくのです。
本作に収録されているのは全部で5つの事件なのですが、最後が、夏目が退職に追い込まれた問題の事件になります。暴力団や建設会社、政治家の名前まで出てくる大規模なものへと発展していき、なんと、ひよりの過去にも繋がる事件だと判明するのです。
それには、彼女の失踪した父親が大きく関係していました。夏目、そして、ひよりの過去に何があったのでしょうか。
1冊目に引き続いて、シェアハウスの面々の活躍奮闘ぶりが好調です。
- 著者
- 加藤 実秋
- 出版日
- 2018-10-24
歩道橋で発見された転落死体の事件に首を突っ込んできたおじさんたちに、ひよりはまたもや振り回されてしまいます。そんな彼女は、今回は上司からスパイの役目を仰せつかるのです。
スパイとして与えられた使命は、シェアハウスの雑用係・夏目惣一郎の行動を観察すること。事件、お役目、そしてデカ魂に燃えるおじさんたちの間で、彼女はさらに戸惑うことに……。
果たして彼女が与えられた使命の狙い、そして、それが意味することとは?
本巻の見所として、元科警研・藤堂の元妻、美人鑑識さんの登場が挙げられます。新たな登場人物を巻き込んで、また一騒ぎ起こりそうな予感……。また本巻では、元警察犬・バロンの活躍が見られるので、こちらにもぜひご注目ください。
ラストは、1冊目から読んでいる人には納得のものなのではないでしょうか。その結末が気になる方は、ぜひ本作を手に取ってみてください。
とにかく楽しいキャラクターがたくさん出てくる、このシリーズ。どの人物が話の中心になっても、面白い話になりそうです。小説初心者にも読みやすい内容となっているので、ぜひこの機会にお試しください。