あまりにもくだらない、けれどそのアホっぽさが癖になってしまうコメディ作品。それが、今回ご紹介する『癒されたい男』です。男の煩悩丸出しの主人公が、街中や職場で出会う女性達に対し、己の美学に乗っ取ったスケベなフェティシズム全開で心の中で語り続けるという、なかなかの問題作となっています。しかし、そのアホな妄想具合がなんともくだらな過ぎて、思わずニヤけてしまうこと間違いなしです。 今回は、そんな本作の魅力についてご紹介。ネタバレにご注意ください。
とある仕事に疲れた中年男性。彼はふとした時、街行く女性達を見つけては、脳内で彼女達から癒しを得るという妄想プレイに耽っていました。
- 著者
- 月島冬二
- 出版日
- 2018-01-09
ある時はレンタルビデオショップの店員。またある時はコンビニの店長。あらゆる場所にいる女性達は、彼にとって、スケベな癒しを与えてくれる素晴らしい存在だったのです。
そんな彼は今日も極上の癒しを求めて、街を1人歩いていくのでした。
あらすじのとおり、非常にくだらない内容が描かれる作品ですが、本作の魅力は、まさにこの「くだらなさ」を真剣に描いているところだといえるでしょう。
男という生き物は誰しも、魅力的な女性に対して劣情を抱いてしまうものです。しかし、当然ながら普段からそんな感情を表に出して生きていては、理性を持った人間の振る舞いとはいえません。
そのため、男はそんな並々ならぬ情熱を、脳内で発散するのです。その思考は女性からしてみれば馬鹿馬鹿しくて下劣に感じ、いい迷惑であるとしか考えられないものであるかもしれません。
しかし、本作はそんなくだらないと切り捨てられてしまうような思考に全力投球する男の姿を、コミカルに、しかも一生懸命描いているのです。
あまりにも本気で妄想に取り組み、女性達から癒しを受けようとする男の姿は、まさしく滑稽そのもの。しかし、真剣な様子であるからこそ、傍から見た時には思わず吹き出してしまうような笑いが生まれるのです。
真剣な表情で何を考えているんだ、という疑念に常に囚われながら、難しく考えずに笑える空気感こそが、本作の魅力であるといえるのではないでしょうか。
ここからは、本作に登場する女性達のなかから、おすすめのエピソードをピックアップしてご紹介致します。
まずは「#15自転車ガール」に登場する女子高生・藤田ニセルのエピソードからです。いかにもな元ネタを感じさせる名前と見た目をしている彼女ですが、初登場は「#11のアフタースクールガール」となっています。
初登場時に主人公を盗撮魔であると勘違いした経緯のある彼女ですが、実は作中でその後も何度か登場。あまり個々のキャラクター描写を掘り下げない本作ではありますが、彼女はそのなかでも、思春期の女子特有の可愛らしさが、わかりやすく描かれた人物であるといえるでしょう。
そんな彼女と主人公が少し距離を縮めるのが、この話です。街で自転車の調子が悪くなった藤田ニセルの様子を見て、主人公が悪絡みされないように、さりげなく自転車を修理してあげます。
そんな彼の様子を見て、少しだけ彼を見直した様子のニセル。しかし、自転車に乗って走り去ろうとする際に突風によってスカートがめくれ、主人公に思いっきりパンツを目撃されてしまう、というエピソードです。
基本的に1話完結型の作品であるためレギュラーキャラクターは貴重なのですが、そのなかでも個別のエピソードがある珍しいキャラクターといえるでしょう。
2人目にご紹介する女性は、「#2レンタルショップガール」に登場する、軽蔑マナ子です。彼女のエピソードは、女性そのものの魅力というのももちろんですが、主人公のフェティシズムが全力で発揮されているところが見所。
この話は、直接的なスケベ要素はあまりなく、かなりニッチな性的思考で楽しんでいるプレイの回だといえるでしょう。
その名もズバリ、「マイナー作品お尋ねプレイ」。
これは、レンタルビデオショップの店員である女性が映画通であると見込み、その通としてのツボを刺激する事によって普段クールなマナ子の隙を作り、彼女の本質を垣間見ようという試みなのです。
実際、主人公は巧みにこの作戦によって、クールなマナ子の人間らしさを引き出し、店員と客という関係から、人間同士の関わり合いといえる距離にまで近づくことが出来たのでした。
なんとも理解が難しい戦術ではありますが、確かに普段見せない女性の一面を見ようと考える行為には、何かしらの満足感が生まれるのかもしれません。本作におけるプレイの醍醐味を表現しているという意味では、もっとも顕著な内容であるといえるでしょう。
最後にご紹介するのは、本作のヒロイン的なポジションの女性・壇ノ浦リサが初登場する「#7手に負えガール」です。
彼女は非常にクセモノで、新入社員でありながら同僚や上司、果ては客先に対しても無遠慮で失礼な態度を取ります。その結果、客先との提携話に暗雲すら立ち込めるという展開に。とんでもない問題児といえるでしょう。
さすがの主人公も、そんな彼女の自由奔放な振る舞いには手を焼いており、このエピソードのなかでは、上司として彼女を説教しようとするところから始まります。
しかし、当の壇ノ浦はまったくもって問題意識を持っておらず、取引相手の口臭が酷すぎたので指摘したまでだと、とんでもないことを口走る始末。
そんな人としてかなり問題を抱えた彼女ではありますが、そんな性格だからこそ、ふとした時に見せる親しげな態度が、可愛く見えてしまうのです。ギャップが人の印象を変え、なおかつ女性の魅力的な態度は無視できないという男としての性を、実にうまく表現したエピソードであるといえるでしょう。
彼女についても本作中に何度か登場し、主人公を振り回す役割です。いずれも2人の掛け合いが絶妙な笑いを誘う内容となっているので、ぜひ読んで頂きたいと思います。
- 著者
- 月島冬二
- 出版日
- 2018-01-09
ここまでご紹介してきた本作はいかがだったでしょうか。
今回ご紹介した以外にも、多くの魅力的な女性達(に対するプレイ)が目白押しな作品となっています。
全1巻とコンパクトな内容となっており気楽に読む事が出来ますので、少し社会生活に疲れた際などに、手に取って頂いてはいかがでしょうか。