『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート) 』などの企画原案で知られる、志倉千代丸の超常科学NVL(ノベル)、「オカルティック・ナイン」。イラストはpakoが担当。2018年11月現在3巻まで刊行されています。また銃爺が作画を担当する漫画版は、全4巻完結で刊行されており、アニメ化もされている作品です。 この記事では、そんな本作の魅力をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。
オカルトまとめブログ「キリキリバサラ」の管理人・我聞悠太は、吉祥寺在住のオタク男子高校生。ブログのアフィリエイトで一攫千金を夢見て、ネタの発掘と更新の日々を過ごしていました。
そんな普通の日常に紛れ込み始める違和感。彼の運営するブログを通じて、とある9人の運命が交錯し始め、日本を震撼させる大事件に関わっていくことになるのです。
Occultic;Nine1 -オカルティック・ナイン- (オーバーラップ文庫)
2014年08月22日
入れ替わる視点、俯瞰の時間軸、謎が謎を呼ぶ伏線の数々……。
正体不明の組織が暗躍するなか、9人は事件を通じてそれぞれの繋がりを辿り、吉祥寺を取り巻くオカルトの真相へと辿り着くことができるのでしょうか。
『Occultic;Nine3 -オカルティック・ナイン-』には、さまざまなキャラクターが登場します。この項では、物語のなかで主な視点となる9人をご紹介させて頂きます。
我聞悠太(がもん ゆうた)
成明高等学校2年生、17才。オカルト板まとめブログ「キリキリバサラ」の管理人をしています。口癖はオタク要素バリバリの言葉、「マンドクセ」。一攫千金の野望だけはブレませんが、他はわりとブレブレの自他ともに認めるオタク男子です。自称クズニート神。
父の形見の特殊なラジオ「スカイセンサー」をいつも持ち歩いており、ある理由から幽霊の存在を信じていません。しかし、凄惨な事件に遭遇した際「スカイセンサー」が電源も入れてない状態で喋り出し、オカルトに否定的だった彼は、今までの常識を覆されていくのでした。
成沢稜歌(なるさわ りょうか)
成明高等学校1年生、16歳。通称は「りょーたす」で、悠太の事を「ガモタン」「ガモのすけ侍」と呼びます。巨乳の美少女ですが、天真爛漫かつ突拍子のない行動がデフォルトで、よく自作の歌を歌いながら踊っていたりします。口癖は「ぽや」「いししゅ」。
ある日突然、悠太の前に現れて「ガモタンの使い魔」の「りょーたす」と名乗り、それ以来バサラガールとして活躍(?)していますが、そのまま明かされる情報が少ない、どこかミステリアスな女の子です。変わった形の銀色の銃・ポヤガン(悠太命名)をいつも持ち歩いています。
相川実優羽(あいかわ みゆう)
成明高等学校1年生、16歳。人気動画サイトの占い師として活動しており、自作のタロットカードを使った占いと、悠太曰く「ほどよくかわいい」容姿で注目されています。基本は元気で明るく優しい女の子ですが、悠太の事を「面倒くさいタイプ」と評したり、やや毒舌な面も。
人の未来を見る能力を持っており、自らを占った結果「悠太と行動をともにすれば未来が開ける」というビジョンを得たため、バサラガールとして活動する事になります。事件の最中、謎のメールと写真を残して失踪した親友を探して奔走しますが……。
橋上サライ(はしがみ さらい)
成明大学1年生、19歳。成明大学教授の橋上諌征(はしがみ いさゆき)の長男で、かなりの合理主義者で、リアリストです。理工学者の父が、オカルト評論家に転身したことに反発しており、父との関係はあまりよくありませんでした。
「キリキリバサラ」の常連として、「SARAI」のハンドルネームでオカルト論破に撤していましたが、父の死に直面して悠太らと知り合ったことで、自身の価値観に大きな影響を受けつつあります。
澄風桐子(すみかぜ とうこ)
オカルト雑誌「ムムー」編集部の記者、23歳。口癖は「アセンション!」。サバサバしていて、明るく気さくな女性で、実優羽を取材した縁で意気投合。友人となります。
橋上教授の担当記者だったためサライとも面識があるなど、顔が広く、行動力もあり、知識量も多い彼女。「ミイラと1年間同居していた少女」の記事を書く過程で悠太の「キリキリバサラ」を知り、興味を持ちます。
紅ノ亞里亞(くれないの ありあ)
吉祥寺のハモニカ横丁で、黒魔術代行屋を営む年齢不詳の女性。外見は美少女でゴシック調の服を好み、貴族のような口調で話します。本名は水無瀬莉愛(みなせ りあ)。
「ミイラと1年間同居していた少女」本人であり、極度のブラコンだったため、年の離れた兄の死を認められずに「兄は生きている」と錯覚したまま生活していた過去を持っています。
精神的に不安定な部分を自覚しており、黒魔術代行屋の相棒、目に見えないその存在を「悪魔」と呼んで従うことで、今の不安定さのバランスをとっている節があります。
日下部吉柳(くさかべ きりゅう)
年齢などすべて不詳の、亞里亞が「悪魔」と呼ぶ存在の正体。目的や行動原理はわかりませんが、幽体でポルターガイスト現象などを起こす能力があります。数年前に燃料電池工場の爆破事故に巻き込まれたことが、彼の特殊能力発現に関係しているようです。
気まぐれから幽体で亞里亞の自殺を思い止まらせたことがきっかけで、現在の黒魔術代行屋での相棒関係となりました。
森塚駿(もりつか しゅん)
武蔵野署に所属する小柄で童顔のオタク刑事、26歳。銭形警部に憧れて、彼に似せたトレンチコートとハット姿をしているため、悠太からはコスプレ刑事と思われているようです。
アニメやゲームが大好きで、子供っぽい性格をしていますが、捜査能力は高く、独自の勘の良さで多くの情報を集めます。しかしとぼけた物言いとちょいちょい挟んでくるオタク知識が原因で、同僚からはいまいち掴みにくい人物と思われているようです。
何らかの組織との繋がりを持ち、橋上教授殺害事件においては、そのダイイングメッセージを隠蔽するなどの不可解な行動を取る、敵か味方かわからない物語のジョーカー的存在。
西園梨々花(にしぞの りりか)
成明大学3年生。レディコミ風同人エロ漫画を執筆している、思わせぶりなセクシーお姉さんです。年下の男をからかうのが趣味と公言している他、世の男性はすべてかわいらしいものと思う独特の感性の持ち主。
夢にインスピレーションを受けて絵を描く予知的な能力を持っていますが、本人はその事にあまり興味がないようです。彼女が過去に描いた同人誌が、現在吉祥寺で発生しているいくつかの事件を暗示していることから、一連の動きに関わっていくことになります。
この項では、『Occultic;Nine3 -オカルティック・ナイン-』の魅力についてご紹介していきたいと思います。
その1:オカルト好きをくすぐる設定!
黒魔術、死後の世界、超能力、占い、予言、超常現象に都市伝説……さまざまなオカルトネタが盛り込まれた本作。
「心霊写真」「ひとりかくれんぼ」「こっくりさん」「コトリバコ」など、よくある心霊現象から本気で怖いものまでぐいぐい盛り込まれています。オカルト系の作品が好き、という方には、特に面白く読めるのではないでしょうか?
その2:ミステリー?ホラー?続きが気になる展開
登場人物の視点が切り替わる群像劇で展開されていく本作。数多くの伏線があり、ミステリーのように読みながら先を推理する楽しみがあります。そして、不意に始まるホラーな展開に、思わず背筋がゾワっとしてしまう怖さも……。
情報量の多さに惑わされつつ今後の展開を予想してみたり、答え合わせに一喜一憂してみたり、純粋にホラーとして楽しんでみたりと、それぞれの楽しみ方で読み進められるのも本作品の魅力です。
たくさんの方の考察もありますので、読了後にからくりや展開がわかったうえで、それらを参考にもう一度読み返すのも、たくさんの発見があって面白いですよ。
その3:アニメも原作も気になる!
2016年にイシグロキョウヘイ監督作品としてA-1 Picturesによる製作で、アニメ化した本作。アニメを見てから、原作を手に取られた方も多いようです。展開の早いアニメと情報量の多い原作、どちらも合わせて楽しめるのも、この作品の魅力のひとつ。
叙述トリック的な部分が、一体どういう風な映像となっているのか?またホラーな展開などは、映像で見るインパクトもかなり強烈です。≒な部分もありますので、違いを探してみるのも面白いかもしれませんね。
一攫千金を夢見て、オカルトまとめブログ「キリキリバサラ(略してキリバサ)」運営に勤しむ我聞悠太は、ブログの特派員・成沢稜歌と、人気占い師・相川実優羽とともに、吉祥寺のオカルト事件を取材する日々を送っていました。
「キリバサ」の常連大学生・橋上サライ、黒魔術代行屋・紅ノ亞里亞、彼女と契約する謎の「悪魔」、武蔵野署の刑事・森塚駿、月刊ムムー編集者・澄風桐子、同人漫画家・西園梨々花。
それぞれの視点で語られる日常が「キリバサ」を通じて繋がり始める時、悠太は、とある事件に巻き込まれる事になるのです。
それをきっかけに、彼ら9人の運命の輪は回り始め、これから起こる未曾有の大事件へと向かっていくのでした。
Occultic;Nine1 -オカルティック・ナイン- (オーバーラップ文庫)
2014年08月22日
本巻の見所は、幾つもの伏線と、多くの謎です。
たとえば裕太が「キリキリバサラ」で取り上げた記事は、軒並今後の大事件に関わるものになっていきます。さらに日常のなかで起こっている出来事も、実は意味がある事だったりするのです。
まったく関係の無さそうなトレーディングカードショップでの森塚の会話や、裕太の帯電体質、そして橋上教授がTV出演した時に話した内容、桐子が編集部で交わした会話……。他にも何気なく散りばめられたものが、実は伏線になっていたりするのです。
そして、いくつもの謎。「バグレセプター」とは何を示しているのか、「CODEリスト」とは何なのか、裕太のスカイセンサーが電源も入れていないのに電波を受信するのはなぜなのか……。
暗躍する謎の組織の目的は?彼らの行動は、裕太達にどんな関わりがあるのか?多くの情報が飛び交う9人の日常を追ううちに、少しずつ彼らの感じている謎と違和感が重なっていきます。そのさまは、まるでミステリーを読むような感覚で、思わずワクワクしてしまうでしょう。
彼らのうち幾人かが見ている「水の底・満月・たくさんの人」のイメージを感じる夢やビジョンが大事件との繋がりを仄めかしながらも、繋がりそうで繋がらない、関わりがありそうでわからない、事件と謎に魅了されてしまいます。
橋上教授が殺されたーー。
教授への突撃取材を敢行した悠太は、死体発見現場に足を踏み入れてしまいます。動揺し、その場から逃走した彼ですが、自身にかかる教授殺害の嫌疑を晴らすために真犯人探しを決意しました。
それぞれが、教授の事件の一端に繋がる9人の運命が、ついに交わり始めます。
そして、突如として世間を震撼させる大事件が発生し、事態は混迷をきわめていく事になります。吉祥寺・井の頭公園の池で256人もの水死体が発見された、通称(悠太命名)・ニゴロ事件。
集団自殺、陰謀説、さまざまな憶測が飛び交うなか暗躍する謎の組織・パヴァリア啓明会、消えた橋上教授の遺稿、スカイセンサーから聞こえる謎の少女の声、コトリバコとアルビノの少年……謎が謎を呼ぶ急展開、教授の残したダイイングメッセージ・「CODE」から導かれる衝撃的な事実。
9人は、隠された真相に辿り着く事ができるのでしょうか。
- 著者
- 志倉千代丸
- 出版日
- 2015-04-23
本巻で注目して頂きたいのは、「ゾン子」の存在です。
橋上教授の殺害現場で、突如喋り出したスカイセンサー。悠太はその声に従って、教授の金歯に隠されていた鍵を持ち去ります。
悠太の前でしか喋らないその存在を、彼はスカイセンサーに着けていたキーホルダー・ゾン子の名前で呼ぶようになりました。有無を言わさぬ命令を下したり、時にはヒントをくれたりする謎の少女は、一連の事件のかなり深いところまで知っているような素振りを見せます。
彼女は一体「誰」なのか……まだ明かされないその正体を推理してみるのも、面白いかもしれません。
そして緊張感溢れる展開に、最後の最後で明かされるとある事実。読み終わったら、思わずもう一度最初から読み返してしまうかもしれません。
井の頭公園での集団自殺事件の死亡者リストのなかに、自分の名前を見つけてしまった悠太。思わず笑い飛ばしましたが、サライや桐子、実優羽たちの名前も次々と発見されていき……ついには自身の死体と対面することになります。
なぜ死んだはずの自分が、死んだ時の記憶もなく、生前と同じように行動しているのか?ダイイングメッセージ・「CODE」の暗号は犠牲者リストと一致し、教授の研究が事件の真相に関係しているのではないかと考え始める悠太たち。
女子高生FBI捜査官・鬼崎あすなも現れて、事件は意外な方向へと展開し始めます。256人の第一世代の一斉破棄をおこなったパヴァリア啓明会の目的、亡くなった悠太の父と宗教団体・八福神の会の繋がり、見える幽霊と見えない幽霊の違い。
事件が核心へと近付き始める第3巻です。
- 著者
- 志倉千代丸
- 出版日
- 2017-09-25
本巻の見所は、鬼崎あすなの登場です。主要なメンバーが皆死者だったという、衝撃の事実が判明した本巻。生者の世界での主な視点となるのは、あすなです。
実はFBIのエージェントでもあった恩人・森塚の後任として、彼の残したヒントを元に捜査を進めていたのです。彼女はサイコメトラーという特殊能力で、事件に新たな側面を浮かび上がらせていきます。
年齢の割に冷静沈着な彼女ですが、幽体として出会った悠太の「あすニャン」呼びには辟易したりと、年相応な反応も見せてくれます。
生者と死者、両方の視点から事件が解き明かされていき、ついに浮かび上がる隠されていた繋がり。
既刊までで明かされていない謎がどうしても気になってしまう方は、アニメの方をチェックしてみるのもおすすめです。
多くの楽しみ方がある本作品、おすすめです。