「デッドエンドの思い出」切なくも優しい恋愛小説!3つの魅力【祝・映画化】

更新:2018.11.17

「デッドエンドの思い出」は、切なくも優しい恋の物語を描いた恋愛小説です。表題作で刊行されている短編集に収録されています。作者は『キッチン』『白河夜船』などで有名な、よしもとばなな。少女時代のスヨンが主演の、映画化も決定しています。 この記事では、そんな本作のあらすじから結末まで、詳しく解説。ぜひ最後までご覧ください。

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小説「デッドエンドの思い出」のあらすじを紹介!スヨン主演で映画化

本作は、主人公であるミミの悲しき恋物語です。

婚約者から裏切られた彼女は、おじが経営する飲食店で西山と出会います。傷ついていた彼女は、この西山の存在によって、徐々に元気を取り戻していくのです。

本作は映画化も決定しており、韓国のチェ・ヒョンヨンがメガホンを握ります。この映画はクラウドファウンディングで資金を集め、映画化をする運びとなりました。主演は、少女時代のスヨンが務めます。
 

本作は、『デッドエンドの思い出』という短編集に収録されている作品。本作以外にも、その他4つの短編集が収録されています。

まずは、その他の短編作品を、簡単にご紹介させていただきましょう。

著者
よしもと ばなな
出版日
2003-07-26

 

幽霊の家

ケーキ屋の息子である岩倉くんと、フレンチレストランの娘である「私」の恋模様を描いた作品。彼と私はお互いの家が近く、実家がお互い飲食店ということもあり、いつの間にか意気投合していました。

当初、2人は体だけの関係でよいと考えていたのですが、あまりにもお互いの体の相性がよく、それがいつしか愛情に変わっていたことに気づきました。しかし岩倉くんの留学が決まっていたため、彼らは正式に付き合うことをしなかったのです。

そして時が経ち、岩倉くんが帰国。なんと、そこで偶然にも、私と岩倉くんは再開したのでした。久しぶりにあった彼らは、果たして……。

「おかあさーん!」

私と、ゆうちゃんの恋模様を描いた短編小説。主人公である私は、出版社に勤めていました。そこの社員食堂のカレーに毒が混入されており、私はそれを食べてしまいました。命に別状はなかったものの、心と体に大きな傷を追ってしまった私。しかし、その後も休まずに働き続けたのです。

しかし、その後、体調が悪くなってきた私は休みを取り、そのことをきっかけに結婚話が進むこととなります。祖父母は喜んでくれているのですが、実は私には複雑な家庭事情があって……。

あったかくなんかない

みつよと、まことくんの恋物語。みつよにとっての初恋が、まことくんです。小さい頃、まことくんとはたくさん話をし、とても仲よく過ごしていました。しかし、彼の家は複雑な家庭の子でした。

そのせいで、ある事件に巻き込まれてしまうのです。

ともちゃんの幸せ
 

主人公のともちゃんには、特殊な感受性がありました。彼女は過去にレイプされた経験があるのですが、その場所を嫌いになったりはしないような、性格なのでした。

そんな彼女は、下の階で働く三沢さんという男性を好きになります。しかし彼には彼女がいて、彼女と楽しそうにランチをしている光景を、ともちゃんはいつも見ていたのです。

彼女は、三沢さんと距離を縮めることができるのでしょうか。

このように、4つの短編小説が掲載されており、その最後に「デッドエンドの思い出」が収録されているのです。この小説は幻冬舎から出版されており、文庫化もされています。
 

 

著者・よしもとばななを紹介!

よしもとばななは、1964年7月24日、東京都の文京区出身の小説家。日本大学芸術学部文芸学科を卒業しています。父親は、批評家であり詩人でもある吉本隆明。姉は漫画家の、ハルノ宵子です。

1987年に描いた『キッチン』が、海燕新人文学賞を受賞。その後も、『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学書を受賞、『うたかた/サンクチュアリ』では芸術選将新人賞を受賞しました。その他にも代表作として、『アムリタ』や『不倫と南米』など数多くの名作があります。

著者
吉本 ばなな
出版日

彼女の作品は、その多くで「死」をテーマにしています。その他には、科学では説明しきれない神秘的な内容を扱っており、作中には予知夢や幽霊などが出てくることも。

こういったオカルトのジャンルや、死に関することを扱っても不気味な印象を受けず、最後には温かい気持ちになれる。そういったところが、彼女の作品の大きな魅力といえるでしょう。

「デッドエンドの思い出」の魅力1:ミミの境遇が切ない……高梨、西山との関係!

 

本作は、始まりの切なさで読者を引き込んでくる作品です。

ミミは、高梨君という男性と婚約をしていました。大学時代からの付き合いで、お互いの親にも紹介を済ませ、婚約指輪の交換も済ませていたのです。彼が地元の支社に帰ってくるタイミングで結婚するという手はずは、すっかり決まっていました。
 

その間は遠距離恋愛をしていたのですが、なぜか彼からの連絡が滞り始めます。さらに、いつも週末には帰ってきていたのに、だんだんと帰る回数が減ってきて、メールや電話の返事も、だんだんと返ってこなくなってしまったのです。

それでも彼のことを信じていたのんびりやのミミは、連絡がくることを待ち続けていました。そのように何となく気長に待っていた彼女でしたが、ついに彼のもとへ会いに行くことに。

そこで見たのは、新しい恋人と暮らす彼の姿でした。しかも、その彼女と結婚すると言うのです。ミミはショックのあまり東京に帰れず、おじが経営する飲食店で働くことにしました。

そこで出会ったのが、西山です。彼は、いつもミミのことを心配しています。そんな彼のあたたかさに、ミミはたくさん助けられるのです。

高梨君くんによって傷つけられた彼女は、西山によって救われていきます。そして、徐々に距離が縮まっていき……。

 

「デッドエンドの思い出」の魅力2:藤子・F・不二雄に捧げた物語!?意味を考察!

 

本作の一部は、藤子・F・不二雄の『ドラえもん』をオマージュしているように考察することができます。

のび太の家にドラえもんが居候しているように、西山の家にミミは居候しており、それが絶妙に持ちつ持たれつな関係で過ごしているのです。

 

著者
藤子・F・不二雄
出版日
1974-07-31

 

本作のなかで、ミミと西山が『ドラえもん』について語る場面があります。そこでミミは、居候であるドラえもんが、のび太の家で、のび太と一緒に漫画と読みながらどら焼きを食べているのが、なんだか幸せだと言うのです。これは、ミミと西山の関係を表すものでもあります。

家族とも、恋人とも、友達ともいえないその関係性は、『ドラえもん』独特のもの。そして、それこそが本作の魅力、象徴であるともいえるのです。

本作の冒頭には、「藤子・F・不二雄先生に捧ぐ」と書いてあります。このことからも『ドラえもん』から影響を受け、その世界観が反映された作品であると考えられるでしょう。

 

「デッドエンドの思い出」の魅力3:名言が刺さる!

本作は、切ない始まりで幕を開け、それが癒される過程の物語ですが、その途中にも数々の心にしみる言葉が用意されています。

「世の中には、ひとそれぞれの数だけどん底の限界があるもん。
俺や君の不幸なんて、比べ物にならないものがこの世の中にはたくさんあるし、
そんなの味わったら俺たちなんてぺしゃんこになってすぐに死んでしまう」
(『デッドエンドの思い出』より引用)

ミミを励ますように、西山が投げかけた言葉です。ミミは、自分は甘い環境にいるからダメだと自分を否定します。しかし、それは自分の世界しか見ていないだけだという事実を、西山は彼女に突きつけたのです。

自分の世界しか見ていないと、何か辛いことがあった時にそのことだけに考えを集中させてしまうかもしれません。しかし、客観的に見直すと、意外と変哲のない不幸であることに気づけるでしょう。

「私が、あの家に生まれたのは、そして、家族とうまくいっているのは、
私の財産だと思っているし、さだめだと思っているから。
ちょっと神秘的な言い方だけれど、
いつかどこかできっと自分で選んで生まれた環境だと思っているから」
(『デッドエンドの思い出』より引用)

西山に自分の生まれた環境について指摘されたことに対しての、ミミの回答です。彼女はきちんと、自分が置かれている立場を理解していました。生まれた環境を憎む人も多いなかで、財産だと気づける彼女は、とてもすごいのではないでしょうか。

生まれる環境を選ぶことは誰もできませんし、生まれたからにはどんな環境でも生き抜く義務があります。それを喜ぶのも恨むのも、すべて自分しだいです。生き抜く義務がある限り、肯定的に環境を受け入れられる人間の方が、強く生き抜けるのではないでしょうか。

「人の心の中にどれだけ宝が眠っているか、
想像しようとすらしない人たちって、たくさんいるんだ」
(『デッドエンドの思い出』より引用)

西山が、ミミに言ったセリフ。彼はミミを慰めるために、あえて高梨を非難しました。しかし、ただ彼女のためという訳ではなく、本当にミミの味方で、高梨よりも良い人が絶対にいる、と思っているんだ、というような言い方で。

高梨は実際、彼女の心の中まで見ることはありませんでした。それゆえに彼女の本質的なよい部分、宝物を見ることなく別れてしまったのでしょう。自分の価値観だけで人を判断して、自分の枠組みに当てはめてしまうことは、とても悲しいことだと伝えたかったのかもしれませんね。

「デッドエンドの思い出」の結末の内容をネタバレ解説!優しい気持ちになれるラストとは?

ミミの婚約者であった高梨には、いつの間にか恋人がいて、すでに同棲をしていました。ミミは、婚約破棄をされていたのです。彼女に別れも告げずにです。

これには、さすがのミミも動揺を隠しきれません。

著者
よしもと ばなな
出版日

そんなミミを支えてくれたのは、西山でした。彼は彼女のよさを心からわかっており、そして高梨を否定することで、ミミの考えが間違っていないことを示したのでした。
 

そんな彼に、ミミは今まで誰にも言えずにいた、高梨くんとのある出来事を話すのです。実は彼女は、高梨くんに100万円を貸していました。そして、それはまだ返されずにいたのです。そしてずっと誰にも話せずにいて、自分でもすごく引っかかっていたのに無意識に押さえつけてきたことに気づきます。それをやっと他者に話せたことによって、彼女は気持ちの整理ができたのでした。

一緒に過ごすなかで、徐々に距離が縮まる、ミミと西山。店長と従業員、そして家主と居候という関係であるこの2人の関係。しかし、そんなあたたかな心の交流を描いたストーリーですが、最後は少し切ない終わり方です。人と人との出会いは、一緒にいるべき時というのがあり、それを過ぎるとまたそれぞれの人生が続いていくのだと感じさせられる内容です。

『デッドエンドの思い出』の結末が気になる方はぜひ本編をお確かめください。