高校生を主人公にした恋愛小説!おすすめ文庫本5選!

更新:2021.12.14

高校生が主人公で紡がれた物語。純粋であるからこそ、悩みもがく時期ですよね。でも、そこには底知れない勇気とパワーが秘められています。あなたの心にもそんな勇気とパワーを感じる恋愛小説を5作品ご紹介いたします。

ブックカルテ リンク

あったかいごはんを一緒にたべよう。『僕らのご飯は明日で待ってる』 瀬尾まいこ

他人に無関心な葉山亮太と、しっかり者であっさりとした上村小春の、高校生から大人になるまでの長編恋愛小説です。一緒に食事をすることでお互いを知り、やがて食卓を囲む家族になるまでの7年間を描いています。

高校最後の体育祭で、一緒に米袋に入って50m競走する競技に、出場することになります。
三年前に慕っていた兄を失ってから、亮太の心は時間が止まっていました。人が死ぬ小説ばかり読んで過ごす亮太は、天真爛漫でずけずけと物を言い放つ小春と過ごすうちに、止まったままだった心が動きだします。

好きという気持ち以上に、何かに惹かれ合う二人。情熱的ではない二人だけど、いざというときに伝える熱い想いに、胸を掴まれます。

著者
瀬尾 まいこ
出版日
2016-02-24

やがて、家族になった二人は、幸せな未来を思い描くのですが、待っていたのは、つらい現実でした。病気に襲われた小春の叫びは、胸に耐え難い痛みを生み出します。そして、亮太に支えられ、二人はある決断をするのです。

幸せのかたちは人それぞれで、二人の選んだ未来に、考えさせられ胸が熱くなります。そして、自分にはないものに、気付かせてくれるかもしれません。

淡白なのに、温かい優しさを感じる二人の会話は、コミカルに展開していくのですが、この絶妙な距離感で交わされるやり取りが「共に生きる」ということなのかもしれない、と思わせてくれます。「あなたがいれば、わたしは大丈夫」こんな風に思えるその気持ちは、最高の愛ではないでしょうか。

「絵」の真実 『黄色い目の魚』 佐藤多佳子

絵を書くことが大好きな悟木島悟と、絵が大好きな村田みのり。それぞれの視点で交互に、6章で恋模様が描かれた恋愛小説です。

16歳の、感情の針が激しく揺れ動く時期、授業中に落書きばかりしている悟と、叔父にしか心を許さないみのりが出会います。揺れながら、揃わない足並みながらも、少しずつ心を通わせていく二人。その二人が惹かれていくプロセスが、わかりやすく連ねられていて胸が捕らわれます。描かれた何気ない無意識なしぐさ、それらが与えた躍動感に、いつの間にか物語の中に引き込まれてしまいます。

著者
佐藤 多佳子
出版日
2005-10-28

死んだ父親の影響で絵と出会った悟と、叔父が漫画家であることで絵と出会ったみのりの、二人にしかない感情。終始、“絵”を通して「描く」「描かれる」ことで、自分自身やお互いを見つめ、そして向き合っていく様子は涙が止まらなくなります。それでいて、誰にでもある譲ることのできない自分を、自然な形で認めてくれるような、そんな作品です。どんなに時を経ても、自分の本質は何も変わらない。そのままの自分でいい、そう感じるだけで、心が温かくなる恋愛小説です。

恋心に、部活に、家庭問題に悩み、そして周りに迷惑をかけている大人の生き方を目の当たりにしてきた二人が、自分がどう生きたらいいのか迷いながら、心身共に成長していく様子が、とても綺麗に感じます。不器用で純粋な距離感は、二人の心情が凄く伝わり、二人の目を通して見える世界は瑞々しく、心が洗われるようです。

言葉にできない、心に潜む感情の激震が、丁寧に紡がれた恋愛小説に、心の奥深くでズシンとした青春と恋の痛みを感じてみませんか?

想い宝石箱 『放課後の音符』 山田 詠美

大人の感性が早くに芽生えてしまった「わたし」と、彼女を取り巻く少女たちの奏でる恋愛賛歌。恋に磨かれていく少女たちを傍観し、「わたし」も大人へ踏み出していく恋模様が8編で紡がれた恋愛小説です。美しい言葉で表現し包み込み、香りも音も感じられるほど魅力的な作品です。

主人公たちの恋、男の人と夜を共にすることへのひそかな興味、それをどう受け止めたらいいのか迷う少女たち。もう子供じゃないけど、まだ大人にはなれないもどかしさが、心の奥で共鳴します。アンクレットや香水で、少し背伸びしてみるドキドキ感がふんわり溶けていく様は、かつての自分の心も浄化されていくようで、じわじわ胸に沁みます。

友人の妊娠や片想いに失恋、友人たちが女性への階段を上りはじめる様子を傍観してきた語り手である「わたし」の心が揺さぶられるも、自分の想いを受け止め女性の階段を上り始めます。「わたし」のたどり着いた、女性への道のスタートラインはちょっぴりスパイスが効いていてドキドキしてしまいました。

男女をカクテルで表現したり、恋をスパイスと表現したり、じんわり胸を打ちながらも遊び心のある描写に読む手が止まらなくなる恋愛小説です。

著者
山田 詠美
出版日
1995-03-01

幼いけれど純粋な好奇心に満ち溢れた淡い想い。それは遅かれ早かれぶつかる壁ですよね。恋に恋したり、青春の時間を無駄遣いしたり、でもそれは費やさなきゃいけない大切な経験です。精一杯大人の女に見えるための努力をして、いくつもの放課後を乗り越え大人になっていくんですよね。

みずみずしさに溢れ、切なさがずっしりとつまった、宝石箱のような彼女たちの恋模様は、傍観者だった「わたし」が素敵な恋に出会えたように、傍観者だったはずのあなたも、いつの間にかこの恋愛小説の主人公にさせてくれるかもしれませんね。

心の路線図 『トーキョー・クロスロード』 濱野京子

優等生と言われるがそれに馴染めない栞と、人気者の耕也と、浮いてしまっている麟太郎。そんな三人が奏でる青春恋愛小説です。

淡い喪失感を抱えて過ごす日々。様々なことに揺れ動く定まらない心。そんな栞は、山手線の路線図を的にして矢を放ち、矢のたどり着いた場所へ向かってみます。違う自分に変装して見る風景にカメラを向け、なにを見るのか。彼女は、このダーツ巡りによって、答えを見出そうとしていました。出てくる場所は安易に想像しやくす、また馴染みの音楽が出てくるため、物語の中へと引き込まれてしまいます。

クラスメートとの距離に苛立ち、そして安堵し、自分の立ち位置を見定められない栞は、同級生だった耕也と再会します。曖昧な関係が続く二人ですが、周りの友人や大人たちの変化と共に、少しずつ変わり始めるのです。一線を超えそうになった夜は、なんともいえない感覚に襲われ、胸が締め付けられます。

著者
濱野 京子
出版日
2010-03-09

三人ともそれぞれ、誰かを想いみつめているのに、どうしても手が届かない、その切なくもどかしい揺れ動く想いは、連鎖してぐるぐる巡ります。人々の出会いと別れを繰り返す駅、円を描く山手線のように巡る、心の葛藤の果てに降りつく終着駅は……。生きづらいと感じる「今」を生きる術は、目の前の感情を隠すこと、そんなもどかしい現実に向き合い、もがく彼らの心の律呂に、思わず共鳴してしまうでしょう。

いつかの私たちも、いや、いつでも私たちは、様々なことに揺さぶられながらも、何かに動かされ、自分の道を歩み進めています。何度も立ち止まるも、そこから一歩踏み出す強さを誰でも持っているはずです。きっとその強さを、私たちに気付かせてくれるかもしれませんね。

不器用に生きよう 『百瀬、こっちを向いて』 中田永一

主人公たちが一様に自分を卑下していて、とても不器用。そんな不器用な主人公たちが繰り広げる、バラエティ豊かな4編の短編で紡がれた恋愛模様に、胸が締め付けられる恋愛小説です。

『百瀬、こっちをむいて』では、美少女の自覚のない百瀬と自称「人間レベル2」の主人公ノボルは、幼馴染の先輩に頼まれ、恋人のフリをすることになるのです。二人の中に芽生える感情や二人の会話は、ちょっぴりくすぐったくて愛しくなります。

著者
中田 永一
出版日
2010-08-31

『なみうちぎわ』では、事故にあい、5年の歳月を経て目を覚ました少女と成長していた年下の少年。その少年と少しずつ自分の生活を取り戻していくのですが、事故に至るまでの経緯が少しずつ明らかになり…。静かに展開されるストーリーが、見えてくる真実に胸が締め付けられます。

『キャベツ畑に彼の声』では、国語の教師が、作家というもう一つの顔を持っていること知ってしまった少女は恋心を燃します。キャベツ畑の描写が彼女の恋心を瑞々しく印象づけ、胸をくすぐられるでしょう。

『小梅が通る』では、過去に投げかけられた言葉に縛られ自分を隠し過ごす少女が、恋することで少しずつ乗り越えていくのですが、その姿は、思わず目頭を熱くさせます。

ひとつひとつの作品が短いながらも、ストーリーの最後には伏線の回収が織り込まれていて、その先を想像する楽しみも心弾ませます。ちょっとした台詞や仕草が胸をくすぐり締め付け思わず涙してしまう恋愛小説です。

高校生の純粋さとパワーに、心が軽くなる恋愛小説5作です。過去、現在、未来に何を思うでしょうか?きっとそれはあなたの強さを引き出し、確かな第一歩になるかもしれません。

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