『てるてる×少年』『ゴールデン・デイズ』などで知られる高尾滋の少女漫画作品。2000年から2001年にかけて「花とゆめ」で連載されていました。単行本は全4巻完結、現在新品で入手可能な文庫版は全2巻で、白泉社から刊行されています。 このページでは、スマホの漫画アプリから無料で読める本作品の魅力を、文庫版からご紹介していきます。
高校生・倉田咲十子(くらた さとこ)は、母子家庭ながら母と2人、慎ましく暮らす優しい女の子。ある日帰宅すると、アパートの部屋はもぬけの殻で、母親は引っ越したと大家さんに聞かされるのです。
突然の事に混乱する彼女の前に現れたのは、大財閥・和久寺グループに仕える青年・藤田鋼十郎(ふじた こうじゅうろう)でした。
- 著者
- 高尾 滋
- 出版日
- 2008-07-15
彼から事情を説明され、母が倒産した友人の会社の連帯保証人になっていた事、友人が逃げたせいで莫大な借金を負ってしまった事、そして、その借金を咲十子の許嫁である財閥令息・和久寺風茉(わくでら ふうま)が肩代わりしてくれた事を聞かされます。
そのまま和久寺家に居候する事になった彼女は、突然の借金、引っ越し、初めて聞かされた許嫁の存在に混乱しますが……お相手の風茉は、なんと、10歳!?
10歳にして、大財閥・和久寺グループの総帥を務める天才少年に振り回される咲十子。年の差カップルの優しいロマンス、開幕です。
1996年の投稿作『人形芝居』で花とゆめまんが家コースの優秀賞を受賞し、同年『不思議図書館』でデビュー。以来「花とゆめ」を中心に活動している少女漫画家です。
- 著者
- 高尾 滋
- 出版日
1997年に『人形芝居』の続編を発表し、1998年には同作品で第23回白泉社アテナ新人大賞を受賞しました。以後不定期ながら、同作は10年以上に渡って発表され続け、2018年11月現在既刊4巻まで刊行されています。
- 著者
- 高尾 滋
- 出版日
代表作品は『てるてる×少年』『ゴールデンデイズ』。長期連載の『いっしょにねようよ』『マダム・プティ』完結後は、2018年11月現在「花とゆめAi」で『ミセス・マーメイド』を連載中です。
- 著者
- 高尾 滋
- 出版日
- 2012-10-19
独特の柔らかな絵柄で描かれる、登場人物の心の動きや触れ幅を繊細で丁寧に映していく、鋭く深い人間描写、心に響く言葉で紡がれる名言に支えられた作風。
それらは根強いファンを獲得し、デビュー当時から変わらず高尾作品の特徴となっています。
また、上記にあげた作品は『不思議図書館』以外、すべて同じアプリで読むことができますので、気になった方はそちらからご覧ください。
少女漫画らしい心理描写の巧みさと、言葉の選び方のセンスが抜群で、高尾作品は読後感が秀逸です。どの作品も、登場人物の心の動きが丁寧に描かれていて感情移入しやすく、デビュー初期の作品である『人形芝居』の頃から、それは変わりません。
心の流れが、手に取るようにわかる、そして、その心に共感できる。選び抜かれた言葉で表現される、うまく言葉に出来ない、その手触りを感じるようなあたたかさが、高尾作品の魅力の1つ。
特に『ディアマイン』はそんな温かみある作風が際立ったもの。人物たちの言葉や表情からまっすぐな世界観が伝わってきます。読んでいると一生懸命恋をする彼らの姿に、心がほんわかしてしまうこと間違いなしです。
見る人によっては、どこか野暮ったいと感じるかもしれませんが、レトロな味がある独特の絵柄も、高尾作品の魅力の1つです。特に女性や子供の柔らかそうな頬や体のラインは、思わず触れてみたくなってしまうほどの趣。
あたたかな作風とあいまって、より女性らしさをかんじさせる世界観となっています。
また、言葉に合わせた繊細に変化させる表情も巧み。動きのひとつひとつに意味や背景を感じ取ることができます。また一方で、繊細さをかなぐり捨てていきなり現れるギャグ顔も魅力。普段の繊細な様子とのギャップが可笑しく、親しみも湧いてきます。
突然、婚約者・風茉の存在を知らされて、さらに和久寺家での居候が決まり、困惑する主人公・咲十子。
父を小学生の時に亡くし、それ以来、貧乏でも母と2人助け合って暮らしてきた生活に愛着がある彼女は、和久寺家での生活にすぐには馴染めないでいました。母の莫大な借金を肩代わりしてくれたとはいえ、10歳の少年が婚約者という事にも戸惑いを隠せません。
超ド級のお金持ち、和久寺家での新生活は、風茉の弟・寿千代(ひさちよ)や、風茉の第2の婚約者・一美(かずみ)も登場して波瀾万丈。
風茉自身は、どうやら真剣に咲十子自身を好きでいてくれているようですが、彼女は自分がどうしたらいいのかわからず……?
- 著者
- 高尾 滋
- 出版日
- 2008-07-15
風茉と咲十子の優しい触れ合いが、心をあたためてくれる1巻です。
今はどうしたいかわからないけれど、状況も環境も、他の人も関係なく、「咲十子が好きだ」と真摯にぶつかってくる風茉。それをうけて、咲十子も彼と向き合おうと決意します。
2人の関係性が徐々に築き上がられていく過程が丁寧に描かれており、初々しさにドキドキする一方で、もどかしく、つい背中を押してしまいたくなるような様子が描かれています。
また、その関係性が育まれるなかで風茉が少年からどんどん男性らしくなっていく姿にも注目。咲十子でなくともドキドキしてしまいでよう。年の差がありながらもいじましく、まっすぐに育まれていく恋模様が満喫できます。
風茉と過ごすうち、彼が自分を大切に想っていてくれる事を1つずつ知っていく咲十子。そして同時に、彼を取り巻く環境の過酷さや、それらに負けまいと戦う彼の強さや弱さも、身に染みて理解できるようになっていきます。
そんな時、咲十子の高校の文化祭に来た風茉と一美が、周囲からかわいい小学生カップルだと言われていて、思わず咲十子は2人にヤキモチをやいてしまいます。
ふいに訪れた自分の感情の変化に気づいた咲十子は……!?
ディアマイン 第2巻 (白泉社文庫 た 8-2)
2008年07月15日
咲十子が風茉への愛情を自覚する2巻です。
ついに両想いになった2人。しかし、上流階級である和久寺の親族からの強い風当たりが、彼らの前に立ちはだかります。風茉と咲十子の恋の行方は、一体どうなってしまうのでしょうか。
1巻を読めば、風茉の気持ちは痛いほど伝わってくるのですが、「どうして」そこまで咲十子が好きなのか?という疑問は残ります。しかし最終回まで読み進めて頂ければ、その疑問もすっきり解決!どうして彼は彼女に恋をしたのでしょうか。
咲十子の宝物、亡父から贈られた「シンデレラの指輪」と、風茉と咲十子にまつわるエピソードも明かされて、読後はじんわりと幸福感を感じられる内容です。
優しくて、あたたかい、おすすめの作品です。