「人の目を気にしない生活」を選んだがゆえに「人の目が異様に気になる」。 「ユニークな人になりたい」けど「常識はずれな人にはなりたくない」。 「普通なんてない」といいながら「平均が気になる」。 変わった人だねと言われることに喜びを感じつつも、その裏の裏まで気になってしまう…自意識過剰を順調に育てて来た筆者が送る、「自分との戦い」ならぬ「自分との痴話喧嘩」に悩むあなたにおすすめの新書、ご紹介します。
ホンシェルジュ(運営:株式会社リグネ)に入社して、はや2ヶ月。
26歳にして4社目と、転職のハードルが昔に比べて下がりつつあるとはいえ、同世代の中では多い方だとも思う。これまで、小中高と転校をする機会はなかったので、大人になってから生活空間ならぬ「社会空間」が変わる経験が数年でばたばたっと起こったことになる。
変化はあまりストレスにならない質ではあるものの、やはり「周囲の目」は気になるもので、特に2社目と3社目は組織の大きい企業に入ったこともあり、昼休憩で話しかけた席の近い人に「面接の担当、部長の〇〇さんだったんですけど、どんなやつが来るとか言ってました?」というアナログなエゴサーチのようなものをついついしてしまっていた。ちなみにその会社を辞めてから、元同僚と飲みに行くときも然りである。文章にしてみても、なんだか自意識過剰な人間のようだけれど、やはり「周囲の評判」というのは誰でも大なり小なり気になるものではないだろうか。
中高時代に通っていた女子校は「まことの自由の追求」を掲げる学校だったこともあり、非常にのびのびと育てていただいた。自律心を促す校風もあったけれど、何より男の目がなく、中学受験で戦ってきた人達ばかりの環境ということで、ポジティブに言ってもネガティブに言っても「勝気な」人が多かった。
大学時代の友人や職場の人に話すと驚かれることが多いのだけれど、「クラスの係」「部活の幹部」は奪い合い。生徒会長など校内選挙では候補乱立。文化祭まで2〜3ヶ月の上級生ともなれば、昼休みには毎日何かしらの会議・集会があり、お弁当を食べるひまがないなんてもこともざらだった。今思い返してみると、「ちょっと社会人」ぽい自分たちに酔っていたところもあったのだと思う。「予算が足りなくて……」「後輩があげてきた資料がイマイチ」「会議のプリント、コピーしなきゃ」など、口にすること自体も楽しんでいた。
そんな環境だったから、ついついビジネスライクな関係を目指しがちで「先輩」「後輩」やら「部長」「ヒラ部員」やら「会計」「書記」やら役割意識は強かった。役割があれば、確執も生まれ、言葉を選ぶことも中途半端な血気盛んな女性が集っていると、摩擦が起こるのもあたり前である。合宿の夜には「話し合い」で泣く人も……前置きが長くなったがそんな生活の中で出会い、ちょっと救いになった本があった。
嫁と姑 (岩波新書)
2001年01月19日
中高生のくせに「嫁」も「姑」もあったものではないのだけれど、シンプルなタイトルとそこはかとないゴシップの匂いにひかれて手に取ったことを今でも覚えている。別に実家でそういうトラブルがあったわけではない。
章が「いままで」「どうして」「たとえば」「いまは」「これから」となっていて、「嫁と姑」に関する語録やことわざの引用から始まる。1ページ目の
当事者よりも、世間の噂が多く、「他人の不幸は蜜の味」。
ここには、「姑」主演、「嫁」助演によるエンターテインメントの一面があるように思える。
というちょうどよい「客観視」から始まる。当時の私も今の私も、まだ嫁姑問題とは無縁なので、気楽に読めそうだと独りごちる。
そして、この本の面白いところはそれがまた結論でもあることだ。
1人の男、姑にとっては息子、嫁にとっては夫、を間に挟むことで”できてしまった”関係性、「社会的立場」であるからこそ、折り合いがつかないことも出てくる。でもそれをそういうものだからしょうがないよね、と周囲が「嫁いびり」と笑って済ますのはちょっと違うんじゃないの?という問いかけがなされている。
題材が「嫁」「姑」なだけで、こうした「勝手に周りが作る関係性のおせっかい」みたいなものは多いように思う。「お姉ちゃんだからがまんしなさい」とか「派閥争い」とかなんとか……。自分も妄想たくましいので、勝手に関係性を推測して、噂話に加勢して……なんてことも多いのでそこは反省しなきゃと思いつつ、周囲の目もついつい気にしがちではあるけれども「まあでも結構勝手に作られるものだよな」とエゴサーチしてしまう自分にも、エゴサーチの結果にも傷つかないようになっていける……気がする。
ちなみにこの前飲んだ某雑誌の編集長が「エゴサーチするやつはだいたい暇人」も逆のベクトルで、教えになった。
困シェルジュ
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