ちょっと……いや、かなり……というか完全におかしな女子高生が暴れまくる、痛快カオスギャグ漫画、『るみちゃんの事象』。今回は、そんな本作の魅力をご紹介していきます。 とにかく常識では図り知れない行動ばかりくり返す主人公と、それに振り回される周囲の様子に、頭が混乱しながらも吹き出さずにはいられない怒涛の展開が魅力です。
私立花ヶ丘女子高に転入してきた郁野るみ(いくの るみ)、通称るみちゃん。
彼女は、転校初日からご飯を片手に遅刻し、遅刻したにも関わらず先生におかずがないかと尋ねるような、とんでもない女の子でした。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2011-12-27
趣味・特技は脱臼(!)で、好きな男性のタイプは、ようすけ全般。カラオケでは千葉真一やちばてつやを歌うという、何から何まで理解出来ない生態を持つ彼女は、日常の行動も一切一般人には理解する事が出来ません。
そんな彼女は、今日も親友の吉田くみこや周囲の人々を困惑させながら、元気に登校するのでした。
ここからは、各単行本に収録されているエピソードのなかから、おすすめのカオスエピソードをご紹介していきます。まずは、るみちゃんによる猛威が振るわれる日々が始まる第1巻です。
本巻のおすすめカオスエピソードは、なんといっても転校初日を描いた第1話。転校初日から遅刻をかまするみちゃんですが、その手には枕と、ご飯茶碗と、箸が握られていました。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2011-12-27
家でご飯を食べる時間がなかったから持ってきたという彼女は、おかずをすべて落としたので餃子が欲しいと、なんと注文まで出してくる始末。
さらに枕を持ってきた理由については、学校で寝るためだと堂々と述べ、それについて先生から問い詰められれば、あっけらかんと笑いながら「そりゃ寝ますよ、だって学生だもん!」と答えるのです。
ここまでが、冒頭から3ページの間に怒涛の勢いで展開されます。読者は「なんだこいつ……」と思わずにはいられないことでしょう。しかし、そんな彼女だからこそ、目が離せない魅力を感じられるのです。
本作のテイストを感じるには十分すぎる濃密な第1話となっていますので、まずはこの話を読んで、本作の魅力に取り憑かれてみてはいかがでしょうか。
本巻に収録されているおすすめエピソードは、るみちゃんが合コンに参加するというお話です。
前後編に分かれて展開されるこのエピソードですが、そもそもるみちゃんと合コンという、まったく似つかわしくない組み合わせの時点で、嫌な予感しかしません。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2012-07-30
その予想通り、彼女は質問をしてきた男子に対して「ばかか!」と返したり、他の女子の質問に被せて意味のわからない質問を怒涛の勢いで浴びせ、くみちゃんに怒られたりと、ろくな結果にはなりませんでした。
しまいには、合コンに参加していたイケメン男子に思いっきり暴力を振るって、流血沙汰にまで発展するという異常事態に。しかし、ボコられた男子は、なぜか「こんな合コンも悪くない」と満足した様子で倒れ伏すのでした。
るみちゃんの行動ももちろんですが、登場人物が多い事による周囲のアタフタ具合がより強調されて、とにかく混沌としているのが面白いエピソードといえるでしょう。
まだまだ勢いが衰えない第3巻のおすすめエピソードは、調理実習のお話です。
くみちゃんとペアで料理を作る事にしたるみちゃんですが、肉料理が作りたいということから、とりあえず作る料理をチンジャオロースにした模様です。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2013-02-28
しかし、彼女が当日購入してきたのは、まさかのミートボール。どう考えてもチンジャオロースには使えません。選んだ理由は「丸いから」だそう。
そして、調理実習の最中も包丁の魅力に見入られて狂気に陥りそうになったり、細かく切り過ぎた肉をセロテープで接着しようとしたり、ガスコンロの火で自分の髪を燃やしたりするのです。
普通の授業が普通にならないという、るみちゃんの恐ろしさがわかる回といえるでしょう。
4巻では、るみちゃんが将来なりたいものについて語るエピソードが描かれます。
といっても、当然の事ながら普通の職業ではありません。それは、なんと「あくび止め師」という謎の職業なのです。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2013-08-30
実際るみちゃんは、冒頭からくみちゃんのあくびを無理矢理止めにかかります。理由は「あくびのない社会を作るため」というなんとなく聞こえのいいものでしたが、くみちゃんが突き詰めると、本当は「ただ人の邪魔になる事がしたいだけ」という事でした。
もはや単なるイヤなヤツでしかありませんが、「じゃま師」という謎の人物の教えまで出てきて、もっともらしいことをツラツラと語る、るみちゃん。頭がいいのか悪いのか、よくわからない不思議な印象を覚えるエピソードだといえるでしょう。
頭がいいのか悪いのかよくわからないとご紹介したるみちゃんですが、やはり学力テストでも常軌を逸した回答ばかりのようで、夏休みに補習として先生に呼び出されてしまいます。
おすすめエピソードは、その補修の内容です。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2014-03-28
当日は国語の補修という事で、空欄に文字を入れて言葉を完成させるという、よくある課題を出されます。
しかし、出てきた答えは「寝耳にB’Z」「泣き面にはち、へび、かに、そしてクビ」「住めば!!(空欄は「!!」の部分です)」といった、とんでもない回答が目白押し。
他の回答も、なんとなく聞こえの音だけ合っていそうなものが続いており、ニュアンスでしか覚えていないるみちゃんの適当さが目立ちます。
ちなみに、このエピソードに登場する生活指導教師の高田先生は本作で度々登場するのですが、なかなか勢いよく正統派のツッコミをする注目人物です。
カオスを追求するるみちゃんとセットになると、なんとなく読んでいて安心できるのもおすすめのポイントといえるでしょうか……。
とにかく勢いのいいシュールギャグが持ち味の本作ですが、6巻に収録されている、るみちゃんが不良を目指すエピソードは、勢いがフルスロットルです。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2014-10-30
1コマ目から、髪が異常に逆立った状態で現れた彼女ですが、どうしたのと尋ねるくみちゃんにも「うるせぇ!!」と返す反抗期ぶりを見せます。
しかし、不良とパンクを混同していたり、フーセンを割ったりタンポポの綿毛を吹き散らしたりすることを悪行だと考えていたり、頭の中はいつもどおりの様子。
このエピソードはとにかくスピード感が前面に出ていて、本作のなかでも特に勢い重視な内容だといえます。唐突さに思わず笑えてしまう、深く考えずに楽しめる内容でしょう(本作に深く考えるエピソードはほぼ皆無ですが……)。
最終巻となる、第7巻です。
最終巻のおすすめエピソードはもちろん最終回なのですが、特に感動的な雰囲気となるわけではなく、いつも通りのテイストが継続されるため、安心して(?)お読み頂けます。
- 著者
- 原 克玄
- 出版日
- 2015-07-10
そして物語の最後は、私立花ヶ丘女子高が他校と合併する事になり、共学になるという結末。
この合併については、次回作である『るみちゃんの恋鰹』に引き継がれるという設定となっており、そのためか本作における最終回は、特にクライマックス感がありません。
しかし、これからもるみちゃんの日常は続いていくのだという事がわかり、安心したような不安なような気持ちになる、珍しい最終回となっています。
次回作への期待とともに、ぜひご一読ください。