「王さまの耳はロバの耳」のあらすじと結末、教訓を解説!おすすめ絵本も紹介

更新:2021.11.16

イソップ童話のひとつ「王さまの耳はロバの耳」。さまざまなバリエーションがあるようですが、そもそもどうして王さまの耳はロバの耳になってしまったのでしょうか。この記事では、あらすじや教訓とともに元となったギリシャ神話を解説し、あわせておすすめの絵本も紹介していきます。

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「王さまの耳はロバの耳」のあらすじと結末

 

イソップ童話のひとつ「王さまの耳はロバの耳」。まずはあらすじを紹介していきましょう。


あるところに、ひとりの王さまがいました。王さまはいつも深い帽子をすっぽりとかぶり、人前で取ることはなかったそう。なぜかというと、王さまの耳はロバの耳だったのです。他の人に見せるわけにはいきませんでした。

その秘密を知っているのは、王さまの髪を切っている理髪師のみ。もちろん王さまから口止めをされているので、理髪師は誰にもしゃべることはなく自分の胸の内に留めていました。

しかし、秘密をずっと抱え続けるのは苦しいもの。話したいけど話せない日々を送るうちに、理髪師は病気になってしまうのです。

理髪師が医者を訪れると、「抱えている秘密を打ち明けることで楽になる」と言われます。そこで理髪師は、井戸に向かって「王さまの耳はロバの耳!」と叫びました。

しかしその井戸、なんと国中の井戸と繋がっていたのです。理髪師の声は井戸を通じてあちこちに届き、「王さまの耳はロバの耳」という噂が瞬く間に広まってしまいました。

もう秘密を隠しとおすことができなくなった王さま。帽子を脱ぎ、自分の耳がロバの耳であることを民衆に明かします。その時、「民の声がよく聞こえるように、このような耳をしているのだ」と言ったことから、民衆は王さまを怖がることはなく、これまで以上に信頼するようになったそうです。


このほか、「理髪師が森で穴を掘って叫ぶと、そこから生えた葦が王さまの耳はロバの耳だとささやくようになる」「王さまの耳が最後に人間の耳に戻る」などさまざまなバリエーションがあるようです。

 

「王さまの耳はロバの耳」から学べる教訓は?

 

噂は思いもよらぬところから広まるものである

理髪師は王さまから口止めをされていたにも関わらず、誰も聞いていないと思い井戸に向かって秘密を打ち明けてしまいました。しかしその噂は瞬く間に広まってしまいます。

井戸が国中に繋がっているとは思いもよらないことですが、秘密を1度口にしてしまうと、思わぬところから広まってしまうということがわかるでしょう。

秘密や悩みを抱え込むことは体に悪い

王さまの秘密を唯一知っていた理髪師は、重圧と戦っていました。自分しか知らない秘密を抱え続けるというのは、とても苦しいことです。そして彼は、そんな日々を送るうちに病気になってしまいます。秘密を抱え続けることは、体や心に悪い影響を与えるということがわかるでしょう。

お腹がどんどんと膨れる病気になるというバリエーションもあり、秘密は溜め込むと膨れ上がっていくものだということも表しているのかもしれません。

寛容さは大切な美徳である

結果的に秘密を広める行為をしてしまった理髪師ですが、王さまは彼を責めることはありませんでした。それどころか、民衆に本当のことを打ち明けるのです。その結果、王さまは以前よりも深い信頼を得ることになります。

 

「王さまの耳はロバの耳」の元ネタ、ミダースとはどんな人?

 

このお話では、そもそもどうして王さまの耳がロバの耳になってしまったのか、その事情についてはまったく触れられていません。

ただ実は、ギリシャ神話に登場する古代アナトリアのフリュギアという都市の王、ミダースというものが、耳をロバに変えられてしまうのです。そのエピソードを見ていきましょう。


ある日、酒と豊穣の神とされるディオニューソスの師、シレノスが行方不明になってしまいました。どうやらワインを飲んで酔っ払ってしまったそうで、たどりついたミダース王のもとで手厚くもてなされているようです。

そのことを知ったディオニューソスは、ミダースに対し、お礼として何でも願いを叶えようと言いました。するとミダースは、「触れるものすべてが黄金に変わる力が欲しい」と申し出ます。

願いどおり力を授かったミダース。しかし、食べ物や酒などすべてが黄金に変わり、飢えてしまいました。やがて富や黄金を憎むようになり、最終的にはディオニューソスに祈って力を取り除いてもらったそうです。

その後ミダースは、富を憎み田舎で暮らし始めました。田園の神パーンを信仰するようになります。

ある日パーンが、芸術の神であるアポロンと、音楽の腕試しをすることになりました。圧倒的な演奏をしたアポロンの勝利となりますが、ミダースはその結果に異議を唱えたのです。怒ったアポロンは「このような不埒な耳は、ロバの耳に変えてしまおう」と、ミダースの耳をロバの耳に変えてしまいました。

これが、王さまの耳がロバの耳になった理由です。それからというものミダースは自分の耳を隠して生活をしますが、秘密を隠しきれなかった理髪師によって、噂が国中に広まってしまうのです。しかしその理髪師を処刑しなかったミダースを見て、アポロンは耳を元に戻してやったとのことでした。

 

ハッピーエンドの「王さまの耳はロバの耳」

著者
岸田 衿子
出版日

 

大きな耳のある王さまの姿が特徴の本作。どこか気弱な顔立ちをしている印象も受け、彼もまた秘密を抱えて辛い日々を送っていたことがわかるでしょう。

エンディングは、秘密を知られてしまった王さまが、もう耳を隠す必要がなくなったことで理髪師に感謝するものになっています。

細かな書き込みで細部まで楽しめる村上勉のイラストにも注目です。

 

ロバの耳をもった「王子さま」の物語

著者
岡田 淳
出版日

 

本書の主人公は「王さま」ではありません。「人の言葉をよく聞けますように」という西のおばあさまのお告げで、ロバの耳をもって生まれた「王子さま」のお話です。

ポルトガルに伝わる民話を、作者の岡田淳が自らの解釈を織り交ぜて描いた物語。美しく繊細なイラストが花を添えています。

ロバの耳をした王子さまはお見合いをすることになるのですが、皆彼の耳にばかり気を取られて、本当の姿を見てくれません。王子さまは幸せを手に入れることができるのでしょうか。「心を見つめること」の大切さを教えてくれる素敵な作品です。

 

ギリシャ神話も楽しめる「王さまの耳はロバの耳」の絵本

著者
平田 昭吾
出版日
1999-01-21

 

本書は、「どうして王さまの耳はロバの耳になってしまったのか」というエピソードから描かれている絵本です。ギリシア神話のミダース王の話を取り入れ、理由と顛末がしっかりと紹介されています。

新しい解釈を楽しめる一冊。昔話だけでなく、神話に興味を抱くきっかけにもなるでしょう。

 

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