今までにない東野圭吾を見ることができるミステリー小説。出てくるのは、悪い奴ばかり……!本作は2019年3月にテレビドラマ化もされ、記憶を失った主人公と彼の周りの人物たちによる不可解な言動が、謎に謎を呼ぶ展開を巻き起こす、目が離せない内容なのです。 この記事では、そんな『ダイイング・アイ』のあらすじから結末まで、詳しく解説!ぜひ最後までご覧ください。
ある交通事故で亡くなった、岸中美菜絵という女性。彼女の死をきっかけに、さまざまな出来事が巻き起こることになります。
主人公は、雨村慎介という若いバーテンダー。彼は、ある男から頭部をいきなり殴られ、病院に送られてしまいます。その時に、ある時の記憶だけなくなってしまったのです。
それは、美菜絵が亡くなった交通事故の記憶。実は慎介は、その交通事故に大きく関わった人物だったのです。
しかし、この交通事故には、ある大きな謎が隠されていました。その謎をどうしても知りたくなった慎介は、事件の真相へと迫っていきます……。
- 著者
- 東野圭吾
- 出版日
- 2011-01-12
光文社から出版された本作は、累計発行部数が100万部を突破している人気作品です。
2019年3月には、WOWOWで実写ドラマ化。主演は三浦春馬です。本作の世界観を映像で描き切ったこちらの作品も、要注目でしょう。
本作は作者にしては珍しく、登場人物全員が悪人ばかりです。正義役は登場しません。そのせいか、ミステリー作品でもあるのですが、まるでホラーとも受け取れる怖さがあります。
『白夜行』『幻夜』のように悪女が登場する物語はこれまでもありましたが、ここまで悪人ばかりなことは初めてなのではないでしょうか。
白夜行 (集英社文庫)
2002年05月25日
東野圭吾の作品は「ガリレオ」シリーズに代表されるように、理論的で、後味がすっきりする作品が多いのが特徴。しかし本作は、人の怨念が主なテーマです。テーマ自体が科学的に証明できないものであるため、物語の展開としては霧の中を手探りしているかのような感覚にもなるでしょう。
そして怨念をテーマとして扱っているため、人の感情が直接的な表現で記載されていますし、性描写もまるで官能小説のように書かれています。
そんな東野圭吾の異色作ともいえる本作は、今までの作品を想像して読むと期待が裏切られ、しかし、だからこそ続きが気になって、思わず読み進めてしまうでしょう。
小説のタイトルである「ダイイング・アイ」とは、いったいどんな意味なのでしょうか。
本作のプロローグには、美菜絵の事故の様子が描かれています。自転車で帰宅途中の、不慮の事故でした。事故の描写は実に生々しく、読んでいてその凄惨さが感じられるでしょう。
そして、そこには美菜絵が亡くなる瞬間に、運転手の目をじっと睨みつけたと記述されているのです。
殺された人物が、犯人を見つけてほしいという願いを込めて記されるメッセージを「ダイイング・メッセージ」といいます。
美菜絵はもしかすると、そういったメッセージを残す代わりに、犯人の目にしっかりと自分を焼き付けさせ、罪の重さを忘れさせないために、その人物を睨みつけたのかもしれません。
そして結果として、この「ダイイング・アイ」は、本作において非常に重要な役割を果たすこととなるのでした。
先ほどもご紹介しましたが、本作に登場する人物は悪人ばかり。そして、多くの謎に満ちています。そんな謎だらけの人物たちを、簡単にご紹介させていただきましょう。
慎介は、美菜絵の夫・玲二に襲われたことで記憶を失いました。しかも、慎介が美菜絵を轢き殺したとされる事故の記憶だけ。もう、この時点から謎だらけです。そこから彼はこの件について、独自に捜査を始めます。
その結果、彼が美菜絵を轢いた後、もう1人別の人物も彼女を轢いたことが判明するのです。しかも、その人物は、自分のように襲われていない様子で……。
さらに玲二の自宅にあったリアルすぎるマネキンや、美菜絵のような人物が部屋の窓から飛び降りたという信じがたい証言も謎を深めます。こうしたオカルト要素とも思える点があるのも、他の東野作品にあまりない魅力ではないでしょうか。
さらに物語が進んでいくことで明らかになる、慎介が起こした事故の真相。実は、裏でこの事故の情報を操作している人物が存在していて……。
こうした謎に加え、本作には多くの悪人が登場し、それぞれの思惑が交差しています。そのためしっかり読み進めていかないと、なかなか謎が明らかになりません。そしてすべての謎が結末に集約していくさまは、まさに圧巻。ぜひご注目ください。
自分が事故を起こしたと周りが言うので、それを信じていた慎介。しかし徐々に記憶が戻り、本当は自分が事故を起こしたのではないという事実を思い出します。
本当に事故を起こしたのは、別のある人物でした。
慎介は、その人物の運転する車の助手席に乗っていただけ。その人物は過去にも事故を起こしており、実刑になってしまうと考え、慎介とある取引したのでした。その内容とは……。
そして、この事故の関わっている人物は、なんともう1人いるのです。さらに、実はこの男も身代わりで……。
徐々に明かされていく真実、いくつかの事故が重複して絡み合ってしまった事件。知れば知るほどに、その内容の見事さにうなることでしょう。
慎介に近づいてきた美女・瑠璃子とは、いったいどのような人物なのでしょうか。
彼女はお金を持っていそうではありますが、仕事は不明。そして、苗字も不明です。慎介は、そんな彼女の目に魅了にされ、何度も男女の仲になり、快楽の頂点に達します。
しかし、彼女について、ある事実が発覚します。なんと、瑠璃子という人物は、そもそも存在していなかったのです。
それは、どういうことかというと……。
からまりあった事件が、またさらに新たな波紋を広げたことが感じられるのが、この瑠璃子の正体に関する事実です。
美菜絵が亡くなった本当の原因が判明し、その事故にさらなる他の事故がからまりあっていることが判明しました。
そこで動く多額の金、それぞれの人物の思い。
さらに、その事件は終わった後にも、次なる悲劇を生み出してしまうのです。
- 著者
- 東野圭吾
- 出版日
- 2011-01-12
事件の真実をすべて知った慎介は、ある反抗を企て、復讐を遂げようとします。
しかし、そんな彼の前にある人物が現れ……。
東野圭吾作品では異色の、悪人ばかりが登場する一冊。金によって人々が動き、また運命まで左右されてしまうさまには、つい恐ろしさを感じてしまうでしょう。それぞれの人物の結末は、ぜひ作品でご覧ください。