梅雨があけ、夏真っ盛り。 やはり、暑い日には、キンキンに冷えたビールが一番、という人も多いのではないでしょうか。 最近はクラフトビールブームや、オクトーバーフェスティバルなどの人気もあって、海外のビールやバリエーションに富んだビールが楽しめるようになってきています。とはいえ、一方で「とりあえずビール」という人も減ってきているのもまた事実。 え? 「とりあえず」だなんて、ビールに失礼だって? そんなわけで、明日飲むビールをちょっと美味しくしてくれる本を今回は紹介します。
- 著者
- ティム ハンプソン
- 出版日
- 2010-01-28
普段飲んでいるビールは何ですか? そのビールをどうやって選んでいますか? キレ、コク、苦み…。それだけじゃない、ビールにはもっと奥深い世界が……!
ということで、最近は海外のビールを扱うお店も増えてきていることもあって徐々に知られるようになってきていますが、世界にはさまざまな種類のビールがあります。そんな世界にある豊富で魅力的なビールをまとめたのが、本書『世界のビール図鑑』。
世界各国のビールについて、1000以上の瓶の画像とそのメーカーの代表的な商品の説明で、見やすくまとめられています。図鑑づくりで世界的に有名なDK社(ドーリング・キンダースレイ社)が作っているので、中身の充実もお墨付き。
2010年の本なので、若干最近のトレンドからずれてしまったり、日本についてはいわゆる地ビールしか載っていなかったりと突っ込みどころはあるのですが、それ以上の魅力が満載。コラムとして掲載されている世界のビール醸造所をめぐる「ブルワリー訪問」なども面白く、ビール好きなら本棚に飾っておきたい一冊と言えるでしょう。
なお、これは家に置くには大きすぎる、あるいはオクトーバーフェスティバルなど野外でのビアフェスには重たくて仕方ないという場合は世界のビール博物館が監修している『世界と日本のビール図鑑』(主婦の友社、2013年)もおすすめ。
『世界のビール図鑑』とは違って、そのビールのグラスとグラスに注がれている様子が写っているのも高ポイント。
- 著者
- 出版日
- 2013-06-29
- 著者
- 出版日
- 2009-03-20
ビールはなぜ美味しいのか。この問いに答えてくれるのがこの『ビールの科学』。著者はサッポロビールの開発者で、「エビスの伝道師」とも呼ばれています。
発祥や古代のビール、地域による発展の違いなどの歴史にはじまり、ビールの旨さの秘訣であるコクと炭酸の話、ビールの醸造工程、日本ではくせ者ともいえる法律、さらにはビールの美味しい飲み方や健康法まで。多岐にわたる内容をサッポロビールの叡智を駆使してまとめています。
章ごとにまとまっているので、気になった場所のどこからでも読むことができて読みやすい。中には、サッポロライオン直伝のビールの注ぎかたなんて項目も。
なお、これが書かれた時期はちょうど第3のビールをめぐる競争がひと段落してきた頃。この本を読むと、発泡酒や第3のビールに技術を駆使したのは果たして日本のビールの美味しさにとって良かったのかと考えさせられます。
- 著者
- ギャビン・D. スミス
- 出版日
- 2014-08-28
ビールについてのうんちくをいろいろ知ってくると、その歴史や文化的な違いなども気になってしまうところ。そんな知的好奇心を満たしてくれるのが“食の図書館シリーズ”のなかの一冊、『ビールの歴史』です。
ビールの起源が紀元前1万年前までさかのぼることや、ヨーロッパでは修道院を中心にビール醸造が始まったこと。ビールは煮沸させた水を使うので病原菌の心配がなく安全であったこと、ブドウが育つか育たないかでワインが広まったかビールが広まったかが分かれたということ、というくだりはとても興味深い。
修道院ビールからビール産業による大量生産ビールへの変化。ヨーロッパ、アメリカを始めとした世界各地のビール、醸造技術、ビールと文化のかかわりなどを豊富な写真資料とともに学べます。
なお、日本へのビールの伝来などについては、村上満氏の『ビール世界史紀行 ビール通のための15章』(ちくま文庫、2010年)によくまとめられています。
- 著者
- 東海林さだお
- 出版日
- 2014-07-08
ワインよりも、庶民的な印象のあるビールですが、もちろん文学作品に登場することもしばしば。本書は食をテーマにしたアンソロジーシリーズのなかの一つ。川上弘美、阿川佐和子、恩田陸、久住昌幸、内田百閒、星新一、遠藤周作などの作品の一節を掲載しています。
矢口純氏のプロフィールに誤植のためかシールが貼ってあったり、所々織り交ぜられている写真がどうも現実世界に引き戻される感があって、いまいち作品と噛み合ってなかったり、掲載している作品の順番などにあまり意図が感じられないなど、気になるところは多々……。それでも、何も考えずに、家でビールを飲みながらでもさくっと読めてしまうのはよいところ。飲まずに読むと、のどが渇いてきます。
本当はこのなかに掲載されている千野栄一氏の『ビールと古本のプラハ』を(したり顔で)紹介しようと思ったんですが、このアンソロジー経由で知ったので、正直にこちらを紹介します、はい。
- 著者
- ["山口 瞳", "開高 健"]
- 出版日
- 2003-08-28
昨秋から今春かけて放送されたNHKの連続テレビ小説「マッサン」。ウィスキーへの注目を集めさせるとともに、そのモデルとなった人物への関心も高まりました。堤真一演じる鴨居欣次郎のモデル、サントリーの創業者である鳥井信治郎氏もその一人。
その鳥井信治郎とその息子で二代目の佐治敬三を、山口瞳と開高健の二人が描いたのが本書。山口は戦前のサントリー創業期を、開高は戦後の鳥井か佐治への移り変わりと、サントリーのビール参入の奮闘を描いています。
タイトルにある「やってみなはれ」は鳥井の口癖でもあり、サントリーの精神とも言える言葉。
赤玉ポートワインで莫大な利益をあげながらも、守りに入らずあえて危険を冒して日本初の国産ウィスキー製造に取り組んだ鳥井信治郎。戦後の経済成長のさなか、父親譲りの「やってみなはれ」精神でビール市場参入を果たした佐治敬三。
その溢れるベンチャー精神や、豪傑さと人情深さなど、読めば読むほどサントリーの企業風土とその魅力がにじみ出てきます。
ちなみに、山口瞳と開高健は元々サントリー宣伝部出身。さらに、本書は元々サントリーの社史に掲載されていたものというのだから、なんとも贅沢ですね。
- 著者
- ["山田 一巳", "古瀬 和谷"]
- 出版日
ビールをつくっている技術者、醸造家についての本はあまりない。そんななかで、ビール職人がビールへの思いを綴ったのが、キリンビール開発部に長年在籍し、その責任者として会社を支えた、伝説のビール職人とも言える著者が書いた『ビール職人、美味いビールを語る』。責任者として携わったビールは「ハートランド」「一番搾り」など蒼々たる商品が。
ビールはどちらかと言えば他の酒よりも工場的な製造工程がイメージされますが、読んで伝わってくるのは、微妙な加減で味が変わってきてしまうその醸造の難しさ。文中にも出て来るとおり、まさしく「ビールは生き物」なのでしょう。
また、アサヒの「スーパードライ」が一大ブームとなって以降のドライ戦争や、社運をかけて開発した「一番搾り」の舞台裏などは、読んでいる者を引き込みます。
基本的には山田さんの言葉をもう一人の著者である古瀬和谷氏がまとめた形ですが、随所に山田さんのビールへの愛情とこだわりがひしひしと伝わってきます。
- 著者
- 石川 雅之
- 出版日
- 2009-07-23
ビールと言えば酵母、酵母と言えば菌、菌と言えば…ということで、『もやしもん』の第8巻を最後にご紹介。この第8巻は、一冊丸々ビール編。
世界のビール文化、ビアスタイル、ビールの歴史などを説明しながら、日本の地ビールを取り巻く問題点を描き出しています。
今回のメインキャラクターは武藤葵と地ビール蔵の加納はな。武藤による地ビール批判から始まり、その後紆余曲折を経て、武藤が大学で行うあるイベントに向けて「ビールとは何か」を考えながら奔走しながらのクライマックスへの展開は見事です。
オクトーバーフェスティバルにせよ、キンキンに冷えたビールを飲んで出るため息にせよ、ビールは「笑顔が一番似合う飲み物」ですね。
ビールそのものや提供されるビアバーを紹介するムックも最近多いのですが、どうしても「旬」のあるものですので今回は省きました。
流行り廃りに流されず、長く読めるものをチョイスしたつもりです。
うんちく系の本が多くなってしまいましたが、なかには飲みながら読むことのできる本もあると思います。
少しでも、皆さんの「明日飲むビール」が美味しくなれば幸いです。