原作小説『神酒クリニックで乾杯を』6つの魅力をネタバレ解説!登場人物など

更新:2018.12.31

医師や医療をテーマにした作品は数多くありますが、本作もその1つ。エンターテインメント性が高いミステリー作品で、2019年1月からはテレビドラマの放送も決定しています。 実際に医師として活動する作者が描く『神酒クリニックで乾杯を』の魅力を、6つに分けてご紹介。その独特な世界観を感じてみてはいかがでしょうか。

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原作小説『神酒クリニックで乾杯を』あらすじをネタバレ解説!2019年1月ドラマ化!

 

『神酒(みき)クリニックで乾杯を』は、2015年10月に角川文庫より発表されました。作者の知念実希人は現役の医師で、医療系のミステリー作品を数多く執筆。専門職だからこその深い知識や現場の臨場感は読者を魅了し、幅広い年齢層から支持される作家です。

泥酔により医療事故を起こしたという疑いで、職を失った若き外科医の九十九勝己(つくも かつみ)。週刊誌などのメディアの影響により再就職先も見つからず、学生時代の先輩・新庄雪子に相談します。

彼女のアドバイスを受けて恩師に頼んでみたところ、紹介されたのは「神酒クリニック」でした。

 

著者
知念 実希人
出版日
2015-10-24

 

青山一丁目駅のほど近くにあるビルにクリニックはありますが、看板は出していません。ここは、治療していることを知られたくない著名人がひっそりと通う、VIP専門の病院だったのです。

個性的ながら腕の立つ医師とともに働き始めた勝己は、病院に持ち込まれる事件や、自身の医療事故と向き合っていくことになります。

クリニックの入っているビルの地下にはバーがあり、イラスト版の表紙アングルも地下のバーからのもの。面接もバーでおこなわれたりと、物語でも主要な舞台の1つとなっている場所です。

本作は2019年1月12日より、ドラマが放送されることが発表されました。プロデューサーがとにかくこだわったというキャストは、三浦貴大や安藤政信のほか、松本まりか、柳俊太郎、板垣李光人、山下美月など。個性の強いクリニックメンバーのかけあいにも期待が高まります。

 

『神酒クリニックで乾杯を』の魅力1:登場人物のキャラが濃い!特殊能力が使える人も!?

 

神酒クリニックは、VIP専門の病院です。顧客には政治家や芸能人が多く、秘密裏にここを訪れているのでした。著名人ともなると、なんでも一流のものを好むものですが、もちろん神酒クリニックに在籍している医療スタッフも超一流。一芸に秀で、そして濃いキャラクターの持ち主ばかりなのです。

医院長の神酒章一郎は、患者の願いはどんな願いでもかなえるという、風変わりな信念の持ち主。文字通り治療のためなら何でもするため、クリニックのメンバーは思わぬ事件の調査に駆り出されることもしばしば。医師としてもズバ抜けた技術を持っており、手術のスピードは、勝己も驚くほどでした。

夕月ゆかりは、小児科、産婦人科が専門の女医です。看護師の一ノ瀬真美を除けば医師のなかでは紅一点で、赤い口紅の似合うセクシー系の美女。類まれなる演技力の持ち主で、声帯模写という特技も持っています。口を開けばかなりの毒舌ですが、恋多き女でもあります。

内科医兼麻酔医の黒宮智人は、1度見た者は忘れない超人的な記憶能力と知性の持ち主。ハッカーとしてもチームをバックアップします。

そんな彼の主治医もしているのが、天久翼。人の心が読めるという特殊能力を持つ精神科医です。

一ノ瀬真美は、ちょっとおっとりとした清純派。唯一の看護師として医師たちをサポートします。章一郎とは意外な繋がりがある人物です。かなりのスピード狂で、ハンドルを握ると性格が変わってしまいます。

勝己がクリニックで働くきっかけを作った、先輩の新庄雪子や恩師である三森大樹も、物語に関わってくる重要な人物。クリニックのメンバーのキャラクターの濃さはインパクトがありますが、勝己に関わる2人にも要注目です。

ちなみに章一郎が格闘技に強いというエピソードもあるのですが、勝己も総合格闘技をしており腕っぷしが強いという意外な特技の持ち主でした。さらに、マジックに関してはマジシャン並のテクニックを持っていることが判明。

周囲の有能さが目立ちますが、就職できているという時点で、勝己自身も有能であることがわかりますね。

 

『神酒クリニックで乾杯を』の魅力2:主人公の身に何があった?出だしから散りばめられた謎!

 

勝己は医療事故を起こした医師として、メディアで報道されてしまいました。通常の病院での再就職は難しく、人の伝手を頼って神酒クリニックにやってきます。

医療事故を起こしたのであれば、一流の腕を持つクリニックに就職することは難しいでしょう。しかも彼の起こした医療事故は、少々特殊なものなのです。

勝俣病院で働いていた彼は、事件当日に当直医をしていました。しかし当直中に意識を失ってしまい、運ばれてきた患者を死なせてしまいます。彼自身が病気だったわけではなく、飲酒していたことが発覚し、泥酔したことにより患者を死亡させたと報道されてしまったのです。

しかし、実際に彼が飲酒していたのは、当直の前日の深夜。勤務は夕方からで、酒は完全に抜けている状態でした。突然意識を失う病気の既往歴もなく、その前後の記憶もかなりあいまいです。

死亡した患者は覚醒剤依存で自殺未遂をくり返しているという人物ですが、勝己はさまざまな違和感と失意のなかで過ごすことになってしまったのでした。

彼は、なぜ意識を失ったのでしょうか。そして、なぜ患者は死亡したのでしょうか。神酒クリニックで請け負った事件の調査が進むにつれ、その医療事故についても、さまざまな思惑から発生した事件であったことが明かされていきます。

 

『神酒クリニックで乾杯を』の魅力3:次々明かされる意外な事実!

 

本作は手術や医療現場の場面も登場しますが、事件の推理やアクション、特技を生かした調査のシーンも登場するミステリー作品です。勝己が起こしたとされる医療事故のほか、神酒クリニックに持ち込まれた、とある事件の調査などさまざまな謎が複雑に絡み合っています。

医院長の章一郎の方針により、神酒クリニックでは患者の治療のほか、彼らの相談事を請け負っていました。大手ゼネコンの創始者である小笠原雄一郎は末期の膵臓癌を患っており、1年ほど前から往診をおこなっています。

彼には20数年前に愛人がいましたが、妊娠をきっかけに失踪。彼女は5年前に亡くなり、さらに息子の川奈雄太が数カ月前に殺人事件の被害者になっていたことを知りました。そして小笠原の頼みにより、雄太を殺した犯人を捜すことになったクリニックのメンバーは、事件の調査を始めるのです。

雄太が闇金からお金を借りていたこと、ヤクザとつながりがあったこと、そして勝己が起こしたとされる医療事故にも関わっていることが徐々に判明。さらに勝己が勤務していた病院や、相談相手である先輩の雪子、恩師である三森も、覚醒剤に纏わる裏組織に協力していたことが明かされるのでした。

 

『神酒クリニックで乾杯を』の魅力4:天久鷹央シリーズとの繋がり!

 

作者である知念実希人は医師の登場する作品を数多く発表していますが、なかでも人気なのが、新潮社文庫nex『天久鷹央(あめく たかお)の推理カルテ』シリーズ。表紙を、人気イラストレーターのいとうのいぢが担当しています。

主人公は、小柄で童顔な天才女医・天久鷹央。高校生にも間違われる彼女は、サヴァン症候群により超人的な記憶力や計算力、知能を持っています。彼女が病院に持ち込まれた患者や事件に診断を下し、解決に導いていくミステリー作品なのです。

実は、この鷹央には姉と兄がいます。

 

著者
知念 実希人
出版日
2014-09-27

 

姉は天久一族が経営する天医会総合病院で事務をしている、真鶴。鷹央が苦手としている人物の1人で、怒られる時には舌足らずになるほど。そして、あまりに折り合いが悪くて関係を絶っている兄が、『神酒クリニックで乾杯を』にも登場する翼なのです。

実は本作と「天久鷹央」シリーズにはさまざまな繋がりがあり、同じ世界線上での物語であることがわかります。翼が30代にしては少年のような容姿を持っていたりするところは、さすが兄妹ともいえるところ。彼は読心術を得意としており、表情筋から嘘を見破ることができます。

内科医の黒宮は医師であり、翼の患者でもある人物。天才として順風満帆な人生を送ってきた黒宮は、鷹央に出会ったことにより挫折を味わいました。彼女に怯えるという場面も登場するところから、相当深いトラウマのようです。

『神酒クリニックで乾杯を』には鷹央に関する会話も数多く登場するため、シリーズファンには嬉しいサプライズとなりました。

 

『神酒クリニックで乾杯を』の魅力5:続編もおすすめ!『神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶』を紹介!

 

本作には続編となる作品が存在します。『神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶』は、顧客から診察を依頼された記憶喪失の女性が、クリニックにやってきたことから始まります。爆弾事件が世間を騒がせるなか、彼女の治療がスタートするのでした。

爆発事件や父娘の死亡事故、不倫など、作中に登場する独立した事件が、すべて線になって繋がる瞬間は鳥肌もの。特殊な力をフルに活用した荒業という場面もありますが、よりエンタメ性に特化した展開になったといえるでしょう。

理不尽な出来事を突き崩していく痛快さも増しています。

 

著者
知念 実希人
出版日
2016-04-23

 

元々病気や医療専門知識に関する解説には定評がありましたが、今回も専門的な話題の解説は初心者にもわかりやすく丁寧で、知識不足に陥ってモヤモヤするという心配はありません。

そして、今回は翼を中心とした物語ということもあり、天久兄妹好きにはたまらない情報も満載。彼の遅すぎる初恋という、ちょっと甘酸っぱい展開も見どころです。

 

『神酒クリニックで乾杯を』の魅力6:結末まで目が離せない!ネタバレ解説

 

ミステリー作品の醍醐味は、点だった事件が情報開示と推理によって繋がり、事件の全容が知れる瞬間にあります。勝己の医療事故と、死が間近に迫った患者の依頼という、まったく接点のなかった出来事も、物語の終盤には意外な繋がりがあることが明らかになるのでした。

勝己は翼の催眠術により、医療事故のあった当日の出来事を思い出します。彼が死亡させたとされる患者は、バラバラ殺人事件の被害者となっていた川奈雄太でした。

雄太は、体内に麻薬を入れて運搬することでお金を儲けようとしていましたが、取り出す際に血管を傷つけ、勝俣病院で死亡してしまいます。

 

著者
知念 実希人
出版日
2015-10-24

 

事件の発覚を恐れた協力関係にある病院は、昏睡状態だった勝己にアルコール成分のある点滴を打ち、別の死体を用意して医療事故と見せかけたのです。なぜ雄太は、それほどまで無理をしてでもお金を稼ごうとしたのでしょうか。それは、恋人である芹沢久美子が関係していたのでした。

さらにこの問題に加え、数十億円ともいわれる「双子の涙」と呼ばれる宝石を巡って裏組織と神酒クリニック医師たちの攻防が展開されることとなります。

後半は謎解き要素に加え、アクションも見所。特技を駆使しながら難題を打開していくさまは、痛快です。果たして事件の決着はどうなるのでしょうか。また、雄太がお金を稼ごうとした理由はなんだったのでしょうか。

そして、恩師や信頼している先輩に裏切られるような形となった勝己は心に傷を負いました。しかし、それで医師を続けられなくなったわけではありません。

最初が不幸のドン底だっただけに、自分の能力を最大限に生かせる新たな職場で生き生きと仕事をできるようになった彼の姿を見ると、読んでいて救われたような気持ちになるでしょう。

 

超有能な医師たちがくり広げる、推理とアクションもたっぷりの本作。医療知識も詰め込まれ、知的好奇心を満足させてくれます。2019年1月放送のドラマでは神酒クリニックの面々がどのように表現されるのか、期待が高まります。

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