異性に対してかなり臆病になってしまった男女が織り成す、すれ違いだらけの切ないラブストーリー。お互いの事が気になっているはずなのに、さまざまな要因のせいで距離を詰めたり離れたりする、なんともじれったい2人の様子が心をかき乱してくる作品です。 そんな本作『バター猫のパラドクス』を、全巻分ご紹介します。本作はスマホの漫画アプリから無料で読むこともできるので、ぜひそちらもご利用ください。
恋愛経験のない女性社員・若芽は、同期の男性社員である兼末に対して、淡い恋心を抱いていました。
そんな若芽の話を聞いているうちに、彼女と仲良しの同期社員・有里(あり)も、徐々に兼末に対して好意を抱くようになっていきます。
- 著者
- ["きづき あきら", "サトウ ナンキ"]
- 出版日
- 2013-04-26
しかし肝心の兼末は、先輩社員の嘘の吹聴もあって若芽に対してよい印象を持っておらず、むしろ、かなり警戒している様子。
果たしてこの関係は、どう発展していくのでしょうか。
本作の魅力はいくつもありますが、そのなかでも特徴的なものは、「じれったさ」。
あらすじでもご紹介しましたが、物語は主人公の若芽が、ひっそりと同期社員の兼末を気にしているところから始まります。しかし、ここから当の兼末に恋心を認識してもらうまでが実に長く、じれったいのです!
若芽は仕事の同僚である兼末に対し、とにかく良好な関係を築けるように接します。しかし兼末は、若芽にフラれてしまった先輩社員の嘘によって、彼女を男をたぶらかすタイプだと思い込んでいるのでした。
そのため、自分に対し好意的に接してこようとする彼女の行動を感じると逆に冷たく突き放すなど、辛辣な対応をしてしまうのです。
しかし、そんな彼の反応を見て、若芽は色恋沙汰には簡単に傾倒しない男性なのだと、さらに好意を募らせます。このように常に関係の発展はストレートに進む事なく、進んでは後退をくり返し続けているような展開が多いです。
そのため話を読み進めていっても、ここまできたからもう安心!となることはなく、常にどう転ぶかわからないハラハラ感に満ちています。このハラハラ感こそが、本作を読み進めていく醍醐味ではないでしょうか。
また、話が進んでいくとともに、若芽の友人である有里や、1度若芽にフラれたはずの先輩社員まで関係に参入してくるようになります。これによりさらに話がややこしくなり、一進一退どころか一歩進んで二歩下がる程に関係がこじれていくのです。
このじれったさこそが先が気になる中毒性を生んでおり、魅力であるといえるでしょう。
ここからは、単行本ごとの見所についてご紹介していきましょう。
第1巻では、主人公の若芽が兼末に対し恋心を抱いているというところから始まり、当の兼末はそんな彼女からの告白をはっきりと断るという、ラブストーリーとしては珍しい段階を踏んでいきます。
断った理由としては、若芽が振った坂上先輩によって吹聴された嘘を、兼末が信じたからです。あまりにもスッパリと失恋してしまった若芽は、せめて友達としての関係で居させてほしいと、彼に頼みます。
そして、自分と同じように兼末に好意を持っている、同期であり友人の有里を彼に紹介し、付き合ってあげてほしいと提案するのでした。
若芽は2人の関係を成功させるために、いろいろとデートの練習などに付き添うのですが……。
- 著者
- ["きづき あきら", "サトウ ナンキ"]
- 出版日
- 2013-04-26
そんな本巻の見所は、気持ちが整理しきれずに迷走し続ける若芽でしょう。彼女は飲み会で酔いつぶれてしまった兼末を介抱して、宿泊したホテルで告白し、玉砕してしまいます。
しかし、彼女はそれでも自分自身の恋愛感情を捨てきる事が出来ず、内側で悶々としたものを抱え続ける事になるのです。
その一方で兼末にとってのよき友人であろうとするあまり、恋人候補として有里を紹介しようとしたり、その有里とのデートプランを考えたり、その予行練習として自分が有里役として同伴したりと、積極的に兼末と関わろうとする動きもあります。
友人として協力しようとする姿勢と、もう好きにはなるまいとする心がすれ違い続けている若芽の様子がなんともヤキモキする展開であり、そのじれったさが堪らない内容といえるでしょう。
どんどん関係がややこしくこじれていく第2巻です。
前巻で積極的に関わってきつつも、有里との関係を応援しようとしていた若芽の様子に、いよいよどう受け取っていいのかわからなくなった兼末。
思わせぶりな事ばかりして心をかき乱してくる若芽に対し痺れを切らした彼は、どうせ遊んでいる女なのならと、ついに強引な手段で彼女との性交を図ろうとします。
しかし当然、恋愛経験のなかった若芽は処女であり、性交中にそのことに気付いた彼は、自分のした事を振り返って青ざめます。そして、これまでの彼女に対する認識は誤解であったのだと知り、身の回りを整理してからあらためて若芽と付き合う決意をするのです。
対して一夜だけの相手として、遊びで強引に処女を奪われたという事を知った若芽は、兼末に対して失望してしまい、一気に恋愛感情が冷めてしまうのでした。
- 著者
- ["サトウナンキ", "きづきあきら"]
- 出版日
- 2013-08-29
そんな本巻の見所は、若芽と兼末、2人の感情の揺れ動きです。これまでは若芽が失恋を経てもなお諦めきれない憧れ混じりの恋愛感情を、兼末に向け続けているという構図でした。
それに対し、兼末は戸惑い、どう処理していいかわからなくなって、ついには強引に押し倒すという強行手段におよんでしまう事になります。
そして、この一夜以降、お互いの気持ちが逆転してしまう事になるのです。つまり、兼末は若芽が本当に真摯に自分を好きでいてくれたのだと知って、真剣に想いを寄せるようになり、対して若芽は、遊びの女として抱かれてしまったのだと、彼に失望して距離を置くようになります。
この両者間の想いを向け合う方向にすらすれ違いが起こっているのが、本作のなかでも面白いシーンといえるのではないでしょうか。
すれ違いの溝が広がり続けていく3巻。兼末は両想いになれたと思っていた若芽との関係が険悪となり、徐々に困惑していく事に。そして、仕事中は何事もなかったように、普段通り振舞おうとしつつ、無理が出てくる若芽。
両者の想いが加速度的にすれ違っていきます。
そして、いつしか両想いだったはずの2人は、別々の恋人と付き合う事になります。若芽は坂上先輩と、兼末は有里と付き合う事となるのです。
もはや、2人の関係は修復不可能となってしまうのでしょうか。
- 著者
- ["サトウナンキ", "きづきあきら"]
- 出版日
- 2013-12-27
本巻の見所は、2人の恋人となった坂上先輩と有里のアプローチシーンです。両者とも、2人には本当に想いを向けている相手がいるのを知りながら、それでも自分に振り向いてほしい一念を捨てずに頑張り続けます。
打算が入り混じる思惑ではありますが、純粋に相手を想う気持ちは本当なようで、その頑張りには素直に好感が持てるでしょう。
主人公2人だけではない、恋敵ポジションにもしっかりと見せ場がある巻。必見です。
いよいよ最終回となる第4巻。これまで紆余曲折だらけだった2人の関係も、ようやく終着点にたどり着くことになります。
お互いに恋人がいながら、別の人を思い続けている若芽と兼末。そんな彼らに、2人きりで話す機会が訪れます。
それぞれの恋人との関係はいかに。そして、2人の関係に新たな変化は……?
- 著者
- ["サトウナンキ", "きづきあきら"]
- 出版日
- 2014-04-28
本巻の見所は、2人の関係が収着してからの、ラストの一幕です。
本作のタイトルの意味についてしっかりと回収し、これまでの2人の歯がゆい関係の揺れ動きについても納得出来る最後となっています。
これまで延々と待たされてきた分、最後のオチの感動もひとしおです。