RPGゲームが好きな男の子・タクマはそのゲームの知識を買われ、異世界で勇者を育てる役目に選ばれました。彼と勇者の絆、どこかメタっぽい発言、突然訪れるお色気シーンなど、応援どころも笑いどころもある『ヘッポコ勇者に戦略を』。
RPGのゲームが好きな男の子・タクマ。いつものように学校の屋上でゲームをしていると、「異世界の神」という人物によって、無理やり異世界へと飛ばされてしまいました。
- 著者
- 悪介
- 出版日
- 2018-03-09
彼は混乱しながらも、魔王の宿敵である勇者の末裔の少女・アコとともに、勇者を倒す旅へ出発することを決意します。
隙あらばおもらしをしてしまう頼りないアコをうまく誘導しつつ、道中はさらに問題ばかりある仲間を集めながら、タクマは魔王討伐のためのパーティーを組んでいくこととなるのです……。
本作の魅力はなんといっても、タイトルどおり勇者がヘッポコすぎるところではないでしょうか。そもそもヘッポコをとおり越して、勇者としてのスタートラインにすら立てていません。作中、各キャラの修練度の話になるのですが、勇者の末裔である少女・アコはマイナス表記で出てくるのです。
普通は0スタートなのに、それがマイナスからとなると、レベル上げがほぼ苦行ですね。しかも、彼女は普通の虫でも泣き叫ぶほど怖がるので、魔物に対峙すると必ずおもらしをします。
今までいろいろなヒロイン・勇者がいたと思いますが、おもらし系ヒロイン、しかもオムツ使用勇者というのは、なかなか斬新です。
魔物なんてものがいない世界でのんびりと暮らしていたタクマが体を張るほどですから、アコのヘッポコぶりは常人よりすごいということになります。
勇者なのにヘッポコすぎるというのが彼女のどうしようもないところであり、かわいいところでもあるのですが、ここまでヘッポコだといっそ清々しいもの。「仕方がない」と思えてしまうほどのヘッポコ具合は、ぜひ注目したいですね。
本作は異世界転生ものになるのですが、転生ものならではの面白さというものが、タクマの思考回路です。RPGゲームが大好きな彼は、常にゲーマー脳で物事を考えます。
レベル上げのために弱い魔物を倒したいと思ったり、回復系キャラを手に入れようとするなど、「あるある」と言いたくなるような思考回路をしているのです。
ゲーマーでなくても、異世界ものの漫画やアニメなど読んでいる人なら共感できる部分が多そうですね。こういった読者側の視点があるというのは読みやすいですし、読んでいて楽しい部分でもあります。
本作に登場する異世界自体ゲームのような設定で動いているため、「もしゲームの世界に入ったら」という想像を掻き立てられるのもよいところ。タクマがゲーム好きな分、世界設定もわかりやすく説明してくれますし、より感情移入がしやすいでしょう。
擦り傷程度で回復アイテムの薬草を食べるアコに対してタクマがツッコミを入れる場面などは、ゲーム的で楽しい部分。また、わりとフランクな魔物たちの習性を現代風にツッコむところも、読んでいて笑えるポイントですね。
また、本作の魅力的な部分として、「この展開なら次はこうくるだろう」という予想を外れる展開というのも挙げられるのではないでしょうか。さらにギャグ要素の多い作品でもありますので、「今ここでそれを言うの!?」というような意表を突く展開も多くあります。
特に、最初に仲間になるヒューカという少女は、だいたい読者の予想を外れた行動をし始めます。かなりズレたところのある人物という設定なので、ほとんどの行動が予測不可能。「今はその時ではない!」という場面でよくわからない行動をすることが多々あります。
もちろんアコも、最後に仲間になるハルメンも「ここでそれはおかしい」という行動をするのですが、そもそも勇者がおもらしをするほどヘッポコという設定を考えると、王道ではない展開なのが普通なのかもしれません。
セオリーを覆す展開だからそこ多くのファンタジー作品を読んでいる人でも楽しめますし、魔王軍との戦いというなかなか重い題材でありながら、笑える場面が多いのかもしれませんね。
「この次はこういう展開かも」と予想しながら読むと、2倍楽しむことができますよ。
脳内に響く「異世界の神」という人物の声によって、勇者と魔王が戦う世界へと連れてこられたタクマ。最初は来ることを拒んだ彼ですが、どの道世界を救わねば帰れないということから、ここで勇者を育てることを決めたのです。
本巻での見所は、強力すぎる魔物を倒すためにタクマが知恵を絞り、最終的なトドメはアコがおこなうという展開ではないでしょうか。
- 著者
- 悪介
- 出版日
- 2018-03-09
RPGゲームをやり込んでいたタクマは、この世界の不思議なアイテムや生き物を、戦いの手段として利用することを即座に思いつきます。今まで普通に現代で暮らしていた男の子とは思えない適応能力は、見所ですね。
特に、隣村の限定スイーツを食べにいく、という名目上始めた旅の最初に出会った敵とのバトルは、ぜひ注目したいところ。直前にアコに教えてもらったことを戦いに活かしたうえ、それ以外の知識も活用して敵を追い詰めるのです。
すべてはアコがトドメを刺せるように、経験値を手に入れられるようにするための行動ですが、自分の命も危ないのにここまで動けるのはすごいところ。また、魔物や虫などこの世の多くのものにビビるわりに、敵を斬ることに躊躇のないアコも、また見所ですね。
隣村についたタクマは魔物図鑑を手に入れるため、鬼神と呼ばれる少女・ヒューカを仲間にするべく動き出します。そんななか凶悪魔物がやってきて、村を襲い始めたのでした。
本巻では、ヒューカの話の聞かなさ、強さや戦いっぷり、仲間になる過程など、彼女に関して多くの見所があるのですが、注目したいのは、2度目の登場を果たした魔物・スカーオックスとの戦いです。
- 著者
- 悪介
- 出版日
- 2018-05-09
スカーオックスは全巻に登場する魔物で、最終的になんだかんだ憎めない相手となるのですが、本巻ではその憎めなさと、勇者を目の敵にする魔物としての雰囲気ある様子が両方出ていて、かわいくかっこいい展開です。
お茶目な性格で、その場を切り抜けるための嘘としてファンだと言ったタクマに対し、サインを書いたうえ2ショット写真まで撮ってくれるほどのサービスをしてくれます。
しかし、アコが光のオーラを出し、勇者の末裔だと気付くとヒューカを一撃で倒し、タクマを拘束。アコを殺そうと攻撃を仕掛けるのでした。この切り替えの早さと強さが、スターオックスのかっこいいところ。
また、結局はタクマの作戦勝ちとなるのですが、その戦い方というのが、まったく勇者パーティーっぽくないのも特徴。この戦いぶりにも、注目してみてください。
回復役である僧侶のハルメンを仲間にしたタクマたち。しかし、ハルメンは盗賊の血を引いているせいで、お金の入った他人の荷物を盗むという習性を持っていました。正気に戻り反省はするものの、荷物を盗むことをやめられない彼女は、とうとうパーティーから抜けてしまいます。
そんな本巻の見所は、総勢100万軍勢を率いてきた魔王との戦いです。
- 著者
- 悪介
- 出版日
- 2018-07-09
もちろんスカーオックスも戦いに参加しています。まだまだアコはレベルが低く、それなのに魔王と戦うという展開になり、それに対するタクマのツッコミが、コミカル。
しかし基本的にはダメダメのヘッポコ勇者のアコが、唯一誰にも負けないのが「運」。豪運ともいえるラッキーさによって幾度となくピンチを切り抜けてきた彼女は、100万の軍勢を前に再びそれを発揮するのです。
偶然で1匹魔物を倒した彼女は、魔物が100万匹以上いる場合のみ発動できる魔法を会得。魔物を100万匹飲み込むまで消えないブラックホールをで敵を一掃します。
チート過ぎる魔法により、一瞬で戦況を変えたアコたち。そこで大量に経験値を獲得したアコは、最後に残った魔王との戦いで勇者として真の力を発揮することになります。
本作は、この3巻が最終巻。アコの成長ぶりに思わず心を動かされてしまうラストに向けての展開を、ぜひご覧ください。
ヘッポコすぎる勇者を、現代のゲーマーが育てて手助けするという『ヘッポコ勇者に戦略を』。予想外の展開やかわいい敵、難がありすぎる仲間たちとの出会いや冒険が非常に楽しい作品です。
もちろん、最大の魅力はおもらししちゃうというヤバい設定の勇者アコと、タクマ。2人の可愛いボケと、現代風なツッコミもぜひご覧ください。