アメリカの絵本作家、アーノルド・ローベルが手掛けた『ふたりはともだち』。「がまくん」と「かえるくん」というふたりのやりとりから、友達の尊さや相手を思いやることの大切さを学ぶことができ、読書感想文の課題本にもおすすめです。この記事ではあらすじや作品の魅力を、シリーズの続編も含めてご紹介していきます。
アメリカの絵本作家、アーノルド・ローベル。1933年にロサンゼルスで生まれ、高校を卒業後は、ブルックリンにある名門の美術大学でイラストレーションについて学びました。
20代前半で同じく絵本作家のアニタ・ローベルと結婚。共著でも作品を発表しています。
アーノルド・ローベルの代表作は、『ふたりはともだち』。子ども向けの絵本のなかでもっとも優れた作品に贈られる「コールデコット賞」の次賞と「全米図書賞」を受賞しています。本書に収録されている「おてがみ」という一編は、日本の小学校の国語の教科書にも採用されているので、読んだことがある人も多いでしょう。長年にわたり愛されている作品です。
そのほか、『ふたりはいっしょ』でアメリカの児童文学賞「ニューベリー賞」、『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』で「コールデコット賞」を受賞するなど数々の実績を残し、20世紀を代表する絵本作家だといえるでしょう。
がまくんとかえるくんは、仲のよい友達。いつもふたりで散歩に出掛けたり、お互いの家を訪ねたり。病気のときは心配しあい、ごく自然に相手を思いやっています。
本書には「はるがきた」「おはなし」「なくしたボタン」「すいえい」「おてがみ」の5編を収録。なかでももっとも有名な「おてがみ」について紹介していきましょう。
- 著者
- アーノルド・ローベル
- 出版日
- 1972-11-10
ある日、がまくんが悲しそうに玄関の前に座っているところへ、かえるくんがやってきます。がまくんは毎日誰かから手紙が来るのを待っているけれど、今まで1度ももらったことがないため、待っている時間は「ふしあわせ」な気持ちになるそう。
「だれも、ぼくにお手紙なんかくれたことがないんだ。毎日、ぼくのゆうびんうけは、空っぽさ。お手紙をまっているときがかなしいのは、そのためなのさ。」(『ふたりはともだち』より引用)
それを聞いたかえるくんは急いで自分の家に帰り、がまくんへの手紙を書きます。そして知り合いのかたつむりくんに、がまくんの家へ届けてほしいと頼みました。それからがまくんの家へ戻り、昼寝をしているがまくんにこう言うのです。
「きみ、おきてさ、お手紙が来るのを、もうちょっとまってみたらいいと思うな。」(『ふたりはともだち』より引用)
しかしがまくんは、今までも誰もくれなかったんだから、今日も同じだと起きてきません。
「きっと来るよ。」
かえるくんが言いました。
「だって、ぼくが、きみにお手紙出したんだもの。」
「きみが。」
がまくんが言いました。
「お手紙に、なんて書いたの。」
かえるくんが言いました。
「ぼくは、こう書いたんだ。『親愛なるがまがえるくん。ぼくは、きみがぼくの親友であることを、うれしく思っています。きみの親友、かえる。』」
「ああ。」
がまくんが言いました。
「とてもいいお手紙だ。」(『ふたりはともだち』より引用)
それからふたりは「しあわせな」気持ちでお手紙を待ち、4日経ってかたつむりくんから届けられたお手紙を見て、がまくんはとても喜んだのです。
ほとんどがふたりの会話のやりとりで進んでいく物語。ちょっとだけ手のかかるがまくんと、しっかり者のかえるくんは、性格はまるで違うのに、強い絆で結ばれていることがわかります。
相手を思いやり、気持ちに寄り添うことのすばらしさ、友達のすばらしさを感じられ、心がじんわりとあたたかくなるでしょう。
教科書に採用されていることもあり、『ふたりはともだち』のなかの「おてがみ」は、小学校低学年向けの読書感想文の課題としてよく取りあげられています。がまくんとかえるくんの友情や、相手を思うことの尊さ、友達といるとしあわせな気持ちになれることなどが描かれているので、作品を通じた追体験には大きな価値があるでしょう。
読書感想文を書く際は、まずは物語をとおして読み、気に入ったシーンをいくつか書き出してみましょう。次に、なぜそのシーンが気に入ったのか、それぞれ理由を書きます。
また物語の感想を書くだけでなく、かえるくんががまくんに手紙を書いたように、友達が自分のために行動してくれたことを思い出してみるのもよいでしょう。それをきっかけに、もしも自分が友達に手紙を書くとしたらどんな内容にするのか考えるのもおすすめです。
『ふたりはともだち』に続くがまくんとかえるくんの物語集です。「よていひょう」「はやくめをだせ」「クッキー」「こわくないやい」「がまくんのゆめ」の5編が収録されています。
『ふたりはともだち』のスタイルを変えることなく、がまくんとかえるくんの自然体で素朴な日常が展開されていきます。
- 著者
- アーノルド・ローベル
- 出版日
- 1972-11-10
予定表を書き、そのとおりに行動するためにはどうすればいいのか奮闘したり、種を植えて芽が出るのを一緒に待ってみたり……日常生活に寄り添ったお話なので、小さな子どもが読んでも共感できるはずです。
特におすすめなのは、「クッキー」。がまくんがおいしすぎるクッキーを焼き、ついつい食べる手が止まらなくなってしまいます。
「ぼくたちたべるのをやめなくちゃ!」と叫ぶがまくん。一方でかえるくんは、「ぼくたちにはいしりょくがいるよ。」と、やや冷静。
子どもはおやつが大好きなもの。ふたりのやりとりも面白く読めるはずです。しかし最終的にがまくんは、「いしりょくはぜんぶきみにあげるよ」と言い残して、またお菓子を作りに家に帰ってしまうのです。
なんともほっこりするお話。物語に書かれていない続きを想像するのもおすすめです。
「そりすべり」「そこのかまどで」「アイスクリーム」「おちば」「クリスマス・イブ」という、四季をめぐるがまくんとかえるくんの物語が収録されています。
季節が移り変わっても、ふたりでいれば毎日楽しいことばかり。今度はどんなことをするのかなと、ページをめくるのが楽しみになるでしょう。
- 著者
- アーノルド・ローベル
- 出版日
- 1977-05-15
「おちば」では、秋になって庭にたくさん落ち葉があるのを見て、お互いがお互いの家に行き、こっそりと落ち葉掃きをしてあげるお話。友達の喜ぶ顔を想像することがとても楽しいことだということが伝わってきます。
「がまくんとかえるくん」シリーズでは、がまくんがちょっぴりワガママに描かれることも多いですが、本書に収録されている物語は、がまくんがかえるくんを大切に想っていることが伝わるストーリーばかり。あらためてふたりの友情の強さを感じられるでしょう。
シリーズ4作目。「あしたするよ」「たこ」「がたがた」「ぼうし」「ひとりきり」の5編が収録されています。
「あしたするよ」では、部屋が散らかりすぎてやる気のおきないがまくんが、「何もかもあしたにする」と言います。そんながまくんに対しかえるくんが、「今日やればあしたやらなくていいんだよ」と優しく話しかけるのです。
- 著者
- アーノルド・ローベル
- 出版日
- 1980-08-17
最後に収録されている「ひとりきり」は、『ふたりはともだち』から続く一連のシリーズを象徴するようなお話です。
ある日がまくんがかえるくんの家に行くと、「ぼくはいません。ひとりきりになりたいのです。」という置手紙が残されていました。かえるくんはぼくとともだちなのに、どうしてひとりきりになりたいんだろう……がまくんは悩みながらも、かえるくんのことを探すのです。
結末は、ふたりはただの友達ではなく、「親友」だということを感じられるもの。読み聞かせをする大人の方が、つい涙してしまうかもしれません。