日本を代表する絵本作家、斎藤隆介。画家の滝平二郎とタッグを組んだ作品が多く、その表紙に見覚えのある人も多いのではないでしょうか。この記事では、代表作『モチモチの木』を含めたおすすめの絵本を紹介していきます。
1917年生まれ、東京都出身の斎藤隆介。明治大学を卒業した後に、新聞社で記者として働くかたわらで執筆活動を始めました。
その作品の多くが地方に伝わる民話のような形をとっていますが、実はオリジナルの創作童話。農村などを舞台に、人間のもつ優しさや強さを表しています。
1968年に『ベロ出しチョンマ』で「小学館文学賞」を受賞、1978年に『天の赤馬』が「日本児童文学者協会賞」を受賞、1987年に『ソメコとオニ』で「絵本にっぽん賞」を受賞するなど、高い評価を集めてきました。
画家である滝平二郎とタッグを組んだ作品は特に有名で、『モチモチの木』や『花さき山』などの作品が印象に残っているという方も多いことでしょう。教科書にも取りあげられ、民話絵本の人気に貢献するなど、戦後の日本における児童文学界や絵本界に大きな影響を与えた人物です。
八郎は、秋田に住んでいる青年です。彼には、あまりにも大きな体をしているという特徴がありました。「樫の木ほど」もありましたが、それでも彼はもっともっと大きくなりたいと望んでいたのです。そしてその願いどおり、ついには山ほどの大きさになりました。
そんなある日、八郎の住む村では、海が荒れる事態が起こります。村人たちは波に飲み込まれそうな田を守ろうと必死ですが、どうすることもできません。
そして八郎は、自分がどうしてこんなに大きくなったのかを悟るのです。
- 著者
- 斎藤 隆介
- 出版日
- 1967-11-01
秋田の新聞社に勤めていた斎藤は、秋田の方言のあたたかみを感じる作品も多く著しています。本書もそんな秋田弁で綴られた名作です。
主人公の八郎という青年は、大きくなりたいと願いながらも、当初はなぜ自分が大きくなりたいのかわかっていませんでした。何のために生まれて、何のために生きているのか……多くの人が抱く悩みに、彼も直面することになります。
自分の力で何ができるのか、八郎の姿を通じて考えてみるのもいいですね。生きることや自分自身について見直したい時に手に取ってほしい絵本です。
とある村の貧しい家に、あやという10歳の少女がいました。ある日、山菜を取りに入った山の中で山んばと出会います。
山んばは言います。この山の花は「ふもとの村の人間がやさしいことをすると咲く花」なのだと。そして、あやの足元に咲いている赤い花は、昨日あやが咲かせたものなのだとも教えてくれました。
あやは昨日、お祭りのための服を、自分ではなく妹に買い与えるよう親に頼みました。苦しい生活を強いられている彼女の家にとって、2人分の服を新調するのは簡単なことではなかったのです。家族を気遣い我慢をした自分の行動で、こんなにもきれいな花が咲いたことを知り、あやは嬉しくなりました。
しかし、村に戻ったあやが大人たちにこの話をしても、誰も信じてくれません。
- 著者
- 斎藤 隆介
- 出版日
- 1969-12-30
やさしい心は美しいという、当たり前のようでいて忘れがちなことを、あらためて読者に教えてくれる作品です。
これまであやは、いくら家族を気遣っても、褒められることはありませんでした。そんな彼女にとって、「やさしさで花が咲く山」はどれほど支えになったことでしょう。
後日、再び山を訪ねたあやが見たものとは一体どんなものだったのでしょうか。いつも見守ってくれる存在があることの尊さや、やさしい心の美しさを学ばせてくれる一冊です。
主人公の豆太は、とても臆病な少年です。夜中になると、ひとりでせっちん(お手洗い)に行くことができません。そんな時にはいつも隣で寝ているじさまに声をかけ、ついて来てもらっていました。
特に豆太の恐怖心を煽るのは、「モチモチの木」と呼んでいるトチの木です。昼間に見ても気にならないのに、夜に見るととても不気味な姿をしていました。
そんなある夜、じさまが腹痛で苦しみだします。じさまを助けるためには、モチモチの木の前をとおり、山の下まで医者を呼びに行かなければなりません……。
- 著者
- 斎藤 隆介
- 出版日
- 1971-11-21
斎藤隆介の作品のなかで、おそらくもっとも有名なものではないでしょうか。幼い頃に手に取った方も多いと思います。
恐怖心に勝ち、勇気を振り絞ることは、子どもにとってはとても難しいこと。それでもじさまを助けたい一心で一歩を踏み出す豆太と、その姿を見守るように立っているモチモチの木が印象的です。
誰かを思い、行動する勇気は美しいと教えてくれる一冊です。
「半日村」には、1日の半分の時間しか日が当たりません。稲は育たず、人々は貧しい暮らしをしていました。
大人たちが諦めているなか、ひとり希望を捨てない少年がいました。名は一平といいます。彼は、半日村に日を当てるため、とある行動に出るのです。
はじめは無謀なことだと言っていた大人たちですが、一平の一途な姿勢を見て、しだいに協力的になっていき……。
- 著者
- 斎藤 隆介
- 出版日
- 1980-09-25
子どもゆえの純粋さからか、一平が考えたのは、とても実現できそうにない方法でした。しかし、自分を信じて村のためにひたむきに努力する姿は、周囲の人々の心を動かしていくのです。
時は流れ、一平も結婚して子どもが生まれたころ、半日村では初めて朝日を見ることができました。
小さなことでもコツコツと行動すれば大きなことを成し遂げられること、みんなで協力すれば大きな力が生まれることを教えてくれる作品です。
表紙を飾る少女の名前は「ふき」。母を亡くし、木こりの父とともに暮らしています。そんな彼女には、大太郎という大切な友達がいました。大男で、父が仕事に行っている間はいつも一緒に遊んでくれていたのです。
ある日、ふきの父が山に住む青鬼に殺されてしまいます。大太郎が代わりに仇を討つと言っても、ふきは自分が行くと言って聞きません。人々を脅かす青鬼を倒そうと立ち向かうのですが、その時雪崩が起きてしまい……。
- 著者
- 斎藤 隆介
- 出版日
- 1998-11-20
まだ幼い少女でありながら、大人を凌ぐような強い意思と行動力をもっているふき。自分の意思を貫こうとするその姿は、たくましく美しいものとして描かれています。
また、大太郎がふきを大切に想う気持ちは読者の涙を誘うでしょう。物語は悲しく展開していきますが、切ない読後感が誰かのために力を尽くすことの尊さを感じさせてくれる一冊です。