14ひきのねずみの大家族が仲良く暮らすさまを描いた絵本「14ひきの」シリーズ。いわむらかずおの得意とする緻密な自然スケッチと個性豊かな14ひきの様子が楽しめる人気作で、世代を超えて愛されています。この記事では、シリーズのなかでも特に四季を感じられるおすすめの作品を紹介していきます。
1939年生まれ、東京都出身のいわむらかずお。幼いころに疎開を経験しました。東京藝術大学の工学科を卒業し、30代なかばで栃木県の雑木林のなかに移住します。農業をしながら創作活動を続けたそうです。
『14ひきのあさごはん』で「絵本にっぽん賞」、『14ひきのやまいも』などで「小学館絵画賞」を受賞。14ひきのねずみの家族が生活する様子を描いた「14ひきの」シリーズは、国内で大ベストセラーとなっただけでなく、フランスやドイツ、台湾などでも人気に。いわむらかずおの代表作となっています。
その魅力は、家族で力をあわせて暮らすことの尊さや楽しさ、また日本特有の四季の美しさが豊かな色彩で描かれていることです。
1998年には、栃木県馬頭町に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館。美しい丘の上にあり、絵本の舞台となった里山の自然を楽しめる場所になっています。
「おとうさん おかあさん おじいさん おばあさん そして きょうだい 10ぴき。
ぼくらは みんなで 14ひきかぞく。」(『14ひきのぴくにっく』より引用)
こちらは「14ひきの」シリーズでおなじみのフレーズです。きょうだいは、1番上のおにいさんが「いっくん」。そして「にっくん」「さっちゃん」「よっちゃん」「ごうくん」……と続きます。
今日は春の穏やかな日。きょうだいは、お弁当を用意してぴくにっくに出かけます。小さな弟の世話をやいたり、ちょうちょやカエルに出会ったり……やがて広場を見つけると、楽しいお昼の時間です。
- 著者
- いわむら かずお
- 出版日
- 1986-11-15
春のあたたかい太陽の光が、ページからあふれ出るようです。目覚めの季節ということもあり、植物や昆虫など数々の生き物たちを、ダイナミックな角度から見ることができます。葉っぱの葉脈までわかる細かい書き込みは、いわむらかずお作品の大きな魅力。1ページを何分間眺めても飽きることはありません。
また、大きなおにいさんやおねえさんは頼りになるものの、なかにはやんちゃ盛りだったり、喧嘩をしそうな子もいて、道中は賑やか。大家族の楽しさが伝わってくるでしょう。
雨が止み、森には夏の日差しが差し込みました。きょうは14ひき揃って川に洗濯に行きます。服やシーツをみんなで運び、ごしごし。洗濯板に乗ったカエルさんが流されてしまうアクシデントが起こりますが……。
最後はロープを張って、洗ったものをみんなで干していきます。風にそよぐシーツに、心も洗われるような風景です。
- 著者
- いわむら かずお
- 出版日
- 1990-05-25
やわらかな緑を基調にした表紙が印象的な本作。透明感があって冷たそうな川の水や木洩れ日、夏の風……自然の豊かさを感じられるでしょう。
本シリーズの特徴として、文章はシンプルで短めなものの、イラストが語る物語が多いことが挙げられます。あっちではごうくんとなっちゃんが揉めていたり、こっちではくんちゃんがぬいぐるみに着せている洋服を洗濯していたり。
時おり「〇〇したのはだれ?」という問いかけが文章のなかにあるので、ぜひお子さんと一緒に探してみてください。読むごとに発見があり、ページの隅々まで楽しめるでしょう。
季節は秋になりました。きょうは十五夜です。14ひきはどんぐりの木の上にお月見台を作り、お団子を用意してお月見をすることにしました。
まだ小さいくんちゃんは、ロープのついた籠に乗せられてエレベーターのように上へとのぼっていきます。そこではおにいさんとおねえさんが待ち構えていて、はしごを使ってさらに上へ、上へ……。
- 著者
- いわむら かずお
- 出版日
- 1988-06-25
森の中で、自然の恵みとともに暮らしている14ひき。秋は、やがて来る冬に向けて食料を蓄える大切な季節です。お団子やススキを用意して、感謝のお月見をします。
夕焼けが終わり、薄闇になると家族みんなが集合。真っ暗な夜に大きな月が昇る場面は壮観です。神秘的で美しく、大人が読んでも見惚れてしまいます。
彼らが月に向かって手をあわせ、「やさしい光をありがとう」と伝える姿にも、心打たれるものがあるでしょう。
ある冬の雪の日。14ひきは家の中にこもり、あたたかな台所では、おばあさんとおかあさんがおやつの準備をしています。おとうさんは何やら工作を、おじいさんものこぎりを使って何かを作っていました。
やがて雪が止んで光が差してくると、みんなで厚着をして、おもいっきり外で遊ぶのです。
- 著者
- いわむら かずお
- 出版日
- 1985-11-01
冬ということで、家の中のシーンが多いのが特徴です。大きなテーブルやベッドなど、他の作品ではなかなか見ることができない生活の様子がわかるでしょう。
暖炉がぽかぽかとあたたかいなかで、手作りのおまんじゅうを食べながら、手作りのボードゲームをする姿に、14ひき家族の仲の良さがうかがえます。
自然を受け入れ、家族で協力しながら暮らす様子を見ているだけで、幸せな気持ちになれる一冊です。
14ひきのなかで1番早起きなのは、おじいさん。次におかあさんとおばあさんが起き、おとうさんも起きてきて、子どもたちも目を覚まします。
きょうだいは野イチゴをつみに出かけ、大人たちもパンやスープを準備します。みんなで作った朝ごはん。1日の始まりです。
- 著者
- いわむら かずお
- 出版日
- 1983-07-10
頼りになるおにいさんおねえさん、ちょっとやんちゃな真ん中、まだまだあどけない末っ子たち……上の子が下の子のお世話をしながら、朝の時間が過ぎていきます。
とっくんがおねしょをした布団が干されていたり、野イチゴをつみに行ったくんちゃんが帰り道はいっくんにおんぶされていたり、いっくんの代わりににっくんがカゴを持ったり、怪我をしたろっくんが家に着いたら消毒をしていたり……今回も、じっくり見れば見るほど発見がたくさんできるでしょう。
「14ひきの」シリーズのなかでも最大の発行部数を記録している一冊です。
いわむらかずおの描く美しい自然のなかで、3世代の大家族が生活をする「14ひきの」シリーズ。彼らは性格もバラバラで、読めば読むほど個性がわかるようになるのも魅力です。何度読んでも、楽しくあたたかくなれるシリーズ、ぜひそろえてみてください。
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いくつかの質問に答えると、絵本の専門家がお子さんにあった作品を選書してくれます。絵本のプロに選んでもらうことで、おもいがけない絵本との出会いが、生まれるかもしれません。