三浦しをん好きにおすすめの作品5選!あたたかい小説から笑えるエッセイまで

更新:2021.11.17

『まほろ駅前多田便利軒』や『舟を編む』など、巧みな心理描写と読後感のあたたかさが光る作品を多数発表している三浦しをん。独特の語り口でつい笑ってしまうエッセイも人気です。この記事では、そんな彼女の作品が好きな人におすすめしたい本を紹介していきます。

ブックカルテ リンク

見知らぬ人々の人生が交錯する連作短編集『阪急電車』

 

兵庫家にある宝塚駅と西宮北口駅をつなぐ阪急今津線。全10駅、終点まで乗ってもわずか14分という短い路線です。

本書はそんな阪急電車の8つの駅を舞台に、往復16話のエピソードが描かれている連作短編集です。

図書館で見かけるあの人、DVに悩むカップル、婚約者を寝取られた女性……乗り降りする乗客たちの人生が交錯し、物語は繋がっていきます。

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

2010年08月05日
有川 浩
幻冬舎

 

文芸雑誌「papyrus」誌上で連載していたものをまとめた作品。2011年には映画化もされました。

本書に登場するのは同じ電車に乗り合わせている乗客たち。明確な主人公は存在せず、エピソードによって中心人物は変わります。

あるエピソードでは脇にいた人物が、あるエピソードでは中心人物になっていて、またあるエピソードでは物語の流れを変えるキーパーソンになっている……ひとつの話だけ読んでももちろん楽しめますが、すべてを繋げて読むとまた違った発見ができる仕掛けになっています。

車内の出来事なので、エピソード自体は日常的なものが多いですが、だからこそあたたかくほっこりとした気持ちになれるものばかり。見知らぬ誰かの人生同士が少しずつ影響しあう群像劇で、本当にこんなことがお起こるかもしれないと現地を訪れたくなる一冊です。

 

前科持ちの2人の女性を描いた『いつか陽のあたる場所で』

 

「マエ持ち女二人組」シリーズの第1作にあたります。

29歳の小森谷芭子と41歳の江口綾香。2人が出会ったのは、刑務所の中でした。出所した後は、絶対に過去を知られないように下町の谷中で新しい人生を始めます。

しかし下町という土地柄か、何かと干渉してくる周囲に芭子は煩わしさと戸惑いを感じていました。一方の綾香は、パン職人を目指して前向きに暮らしています。2人が周囲の人々に振り回されトラブルに巻き込まれながらも、強く生きていく物語です。

 

著者
乃南 アサ
出版日
2010-01-28

 

過去を隠して生きている2人。年齢は離れていますが、お互いの家を訪れて食事をしたりと親友です。

作者の乃南アサは、女性の心の揺れや孤独感を巧みに描く人物。干渉を嫌う芭子と、どちらかというとあっけらかんとした性格の綾香が、人間関係の濃い下町で再生と成長をしていきます。

犯罪を犯してしまった消せない過去、「前科者」という事実、罪をつぐなうこととは……作品全体は、下町の日常が描かれたのんびりとしたものですが、根底には考えさせられるテーマが流れていて、じっくりと味わって読みたい作品です。

 

高い文学性とエンタメを楽しめる『永遠も半ばを過ぎて』

 

変化を嫌い、ひっそりと生活している写植職人の波多野のところへ、ある日高校時代の同級生、相川がひょっこりと現れました。波多野が、三流の詐欺師をしているという相川からもらった「薬」を飲み、無意識のうちに電算写植機で紡ぎだしたのは「永遠も半ばを過ぎ……」から始まる言葉の羅列です。

ここに編集者の宇井も加わって、波多野の文章をヒットさせるべく、あらゆる手段を用いて大きな詐欺を仕掛けていきます。

 

著者
中島 らも
出版日

 

写植職人の波多野、詐欺師の相川、編集者の宇井の3人の視点が目まぐるしく変わり、交互に一人称で語られていく作品です。

波多野が正常でない状態で書いた散文を「幽霊が書いた」と言い張るやりとりや、詐欺の手口、出版業界、薬……と興味をそそるエピソードが詰め込まれたエンターテインメント小説。寡黙で引きこもり気味の写植屋と懸命に生きる詐欺師、知的な美人編集者という組み合わせも楽しく、どんどんページをめくってしまいます。

またタイトルにもなっている「永遠も半ばを過ぎて」という言葉からもわかるとおり、波多野の紡ぎ出す言葉の羅列は詩的で圧倒的。文学としても高いクオリティをもつ作品です。

 

爆笑できるエッセイ集『生きるコント』

 

いたって真面目に生きているつもりなのに、なぜかやることなすことコントのようになってしまう。

運命を感じてリオのカーニバルに旅立ったり、黄色いビキニで危険なダウンタウンを走り回ったり、思い立って買った競技用自転車で車に轢かれたり……オール実話の、コントのような人生を綴ったエッセイ集です。

 

著者
大宮 エリー
出版日
2010-04-09

 

東京大学の薬学部に進学したにもかかわらず、国家試験を受けずにリオへ逃亡し、その後電通に入社したという異色の経歴をもつ大宮エリー。

現在は独立し、CMプランナーや映画監督、ラジオパーソナリティなど多彩な顔をもちながらエッセイストとしても活躍しています。

本書は、そんな彼女の魅力が詰まった一冊。明るくて才気にあふれ、誰とでもすぐに友達になってしまう日常に、憧れを抱く読者も多いことでしょう。気軽に読めて元気をもらえるエッセイです。

 

三浦しをんのエッセイが好きな人におすすめ『もものかんづめ』

 

国民的アニメ「ちびまる子ちゃん」の原作者として有名なさくらももこの作品です。

数多くのエッセイを発表していることでも知られていますが、本書は1991年に発売された最初の一冊で、『さるのこしかけ』『たいのおかしら』とともに初期エッセイ3部作と呼ばれ、大ベストセラーになりました。

 

著者
さくら ももこ
出版日
2001-03-16

 

短大時代に体験したアルバイトにまつわるエピソードや、わずか2ヶ月で辞めてしまったOL時代の話、「ちびまる子ちゃん」でおなじみの家族の話などが満載です。

テンポのよい文体と、シュールな笑いが随所に仕込まれているのが魅力。小学生から大人まで楽しむことができます。またアニメ作品からはあまり見ることのできない毒気の強さも特徴です。

さくらももこの原点ともいえる作品なので、ぜひ1度は読んでみてください。

 

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