辻村深月が好きな人におすすめの本5選!人の繋がりや絆を描いた作品

更新:2021.11.17

透明感のある文体と、思春期の少年少女の心理描写や、人間の優しさを巧みに描く作家、辻村深月。この記事では、そんな辻村作品が好きな人におすすめしたい小説をご紹介していきます。

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辻村深月好きにおすすめ!家族の絆を描いた小説『幸福な食卓』

「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」(『幸福な食卓』より引用)

お父さんはお父さんであることを辞め、お母さんは家出中。秀才だったけど大学には行かず農業を始めた兄、兄の彼女、明るくて優しいボーイフレンドの大浦君……本作は、中原家の長女・佐和子を中心にちょっと「ヘン」な家族と周囲の人々との関わりを描き、佐和子の成長を追う青春小説です。

著者
瀬尾 まいこ
出版日
2007-06-15

「すごいだろ?気が付かないところで中原っていろいろ守られているってこと」(『幸福な食卓』より引用)

メインとなっているのは、佐和子の中学から高校まで。彼女の家庭はほぼ崩壊状態で、それぞれが勝手に自分の生き方を模索しています。

冷静になってみるとヘビーな設定ですが、にもかかわらず佐和子の日常は優しく、淡々としている印象を受けるでしょう。人は孤独ではなく、結局は誰かに守られ、支えられながら生きていることに佐和子が気付いていく過程に注目です。

ボーイフレンドの大浦君との恋物語も魅力的。ラストは衝撃的な展開が待っているので、最後まで気を抜かずに読んでください。

お客様は神様です……?『神様からひと言』

広告代理店を辞めて食品会社に転職した涼平。しかし早々にトラブルを起こし、普通は2週間で逃げ出すと恐れられているリストラ部署「お客様相談室」に左遷されてしまいます。

ここは相談室とは名ばかりのクレーム処理部署で、涼平はほとんど言いがかりのような言葉に悪戦苦闘……。

目を覆いたくなるようなブラックな環境で、やがてプロ意識に目覚めていくサラリーマンを描いたコミカルな小説です。

著者
荻原 浩
出版日
2005-03-10

プライベートでも恋人に逃げられ、踏んだり蹴ったりの涼平が、「お客様相談室」で成長していく物語です。なんといっても魅力的なのが、「謝罪のプロ」と呼ばれる先輩、篠崎のキャラクターでしょう。

仕事をさぼるのは当たり前、お客様への謝罪金をくすねたり、下品なジョークで喜んだりと、一見かなりだらしのないおじさんです。しかし、いざ謝罪をするとなると、その姿はまさしくプロそのもの。ただの掃きだめ部署ではないぞと言わんばかりの根性をこれでもかと見せてくれます。

コメディタッチで軽快に読み進めることができますが、それだけでなく会社という組織に勤める人の葛藤や悲哀が描かれていて、すべてのサラリーマンに勇気を与えてくれる作品です。

昭和のロマンミステリー小説『街の灯』

舞台となっているのは昭和7年、華族がいて階級制度があった時代の日本です。上流家庭の花村家に、「ベッキーさん」こと別宮みつ子という女性運転手がやってきました。

本書は、花村家の令嬢・英子とベッキーさんが、協力しながら日常のちょっとした謎を解き明かしていく作品です。

新聞に載った怪死事件を推理する「虚栄の市」、暗号の謎を解く「銀座八丁」、映写会上映中の死亡事件の謎を解く「街の灯」の3編が収録されています。

著者
北村 薫
出版日
2006-05-01

明治維新から60年ほどが経ち、銀座には露店が並び、秋葉原駅にエスカレーターが設置されたばかりと、当時の世相が随所に表れています。ベッキーさんは時代を先取りしたような女性で、頭がすこぶるよく、スマートながらも豪快なのです。

物語上で提示されるミステリーは、ベッキーさんの言葉をヒントに英子が推理していく形。2人のテンポのよいやり取りが魅力です。生粋のお嬢様で世間知らずな英子が、ベッキーさんと関わることでたくましく成長してさまも見どころでしょう。

また本作では、ベッキーさん自身の正体など明らかになっていない事柄もいくつか残っています。『玻璃の天』『鷺と雪』と続編も出ているので、気になる方はそちらも読んでみてください。

ドラマチックな青春小説『夜のピクニック』

2005年に「本屋大賞」と「吉川英治文学新人賞」を受賞した、恩田陸の代表作のひとつです。

高校3年生の甲田貴子は、3年間誰にも言えなかったある秘密を胸に、高校生活の最後を飾る伝統行事「歩行祭」に臨みます。

「歩行祭」とは、80kmの道のりをひたすら歩くというもの。非日常のイベントのなかで、日常生活で抱いている想いが浮き彫りになる青春小説です。

著者
恩田 陸
出版日
2006-09-07

高校3年生というのは、大人ではないけれど一概に子ども扱いもできない年代。それぞれの進路も決まりつつあり、人生の岐路に立っている時期だといえるでしょう。

そんななかで友人たちと夜を徹して歩く「歩行祭」は、ただ歩くだけという単純な行為ですが、彼女たちにとって特別な日となるのです。

貴子が「歩行祭」で成し遂げようと決心しているのは、1度も話しかけたことのない同級生の西脇融に声をかけること。恋心ではないのですが、クラスメイトたちは2人の仲を誤解してしまいます。

それぞれがみずみずしい青春の真っ只中にいるのがわかり、ヒリヒリとした甘酸っぱさが魅力です。

辻村深月好きにおすすめ!家族の絆と青春を描いた小説『ランナー』

主人公は、高校1年生の碧李という少年。陸上部で長距離を走っているランナーです。

しかし両親が離婚し、幼い妹とともに母と暮らすことになり、家庭の事情を理由に陸上部を辞めてしまいました。ただ実際は、以前1万mの競技で失敗したことがトラウマになっていて、走ることが怖くなってしまったのです。

著者
あさの あつこ
出版日
2010-04-01

主人公の少年が陸上部を舞台に成長していくストーリーと並行して、彼の家族の物語が描かれます。

両親が離婚して妹とともに母親に引き取られているのですが、妹は母親の実の子どもではなく、父親の死んだ弟夫婦の子どもです。碧李の母親は自分自身が過度な期待をかけられ厳しくしつけられた過去があり、実の子どもではない妹を虐待してしまいます。妹は5歳にして心の病気になり、そのことも碧李を悩ませていました。

明るい青春スポーツ小説ではなく、ほの暗い要素もあり、登場人物の心情が細かく描かれているのが魅力です。

歪んでしまった家族が再生していくとともに、碧李は陸上にも復帰を目指します。逃げたままでは前に進めないと、再びスタートラインに立つ姿勢を見せてくれる物語です。

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