黒いマントをまとった、不思議な男。隣の世界の住人だと言う彼と一緒に、地下の壁をすり抜けて、木の芽時の国へ出発!……と思いきや、まさかの展開に!? 予想もできない、ドキドキな冒険が始まります。 『地下室からのふしぎな旅』は、累計発行部数50万部を突破している有名作品。1981年に刊行されて以来、世界中で幅広い世代から愛されてきました。本作は、2019年4月にアニメ映画化が決定。そんな話題の本作の、あらすじや見所、作者、大人でもハマる世界観を一気に紹介していきましょう!
アカネの叔母・チィおばさんは、ちょっと変わり者。家では薬局を営んでいます。
ある日、アカネがチィおばさんの家の地下室にいると、突然見知らぬ男が出現!彼は、なんと隣の国の住人だと言うのです。
彼はチィおばさんの地下室と彼が住む隣の国は2つの円が重なり合うように隣り合っていて、ダブっている部分があると言います。今まではそのダブっている部分を地下室の前の持ち主でもあったリツおばさんと隣の国の持ち主から借りていたということ。
だから、ここの土地の契約を更新しなければ、地下室は向こうの国の住人と一緒に使うことになると彼は言います。それは、たまったもんじゃない!とその男・ヒポクラテスと一緒に、アカネとチィおばさんは隣の世界へと出かけていくことになるのでした。
ちょっと不思議な、冒険ファンタジー物語の始まりです!
- 著者
- 柏葉 幸子
- 出版日
- 2006-04-15
本作は、2009年4月に『バースデー・ワンダーランド』というタイトルで映画化が決定。監督は、世界で数多くの映画賞を受賞し、劇場版クレヨンしんちゃん『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』や、自然・友情や家族との絆といった課題を盛り込んだ『河童のクゥと夏休み』などで知られる原恵一です。
期待が高まる作品となっています。
日本の児童文学作家で、岩手県出身。主に花巻市で幼少期を過ごしました。大学在学中に『気ちがい通りのリナ』で講談社児童文学新人賞を受賞。翌年に同作を『霧のむこうのふしぎな町』と改題してデビューを果たします。同作は、皆さんご存知の宮崎駿監督の長編アニメ映画『千と千尋の神隠し』の原型ともなりました。
他にも、「モンスター・ホテル」シリーズや『天井うらのふしぎな友だち』などの作品が人気です。
- 著者
- 柏葉 幸子
- 出版日
- 2004-12-16
宮崎駿監督をはじめ、スタジオジブリは『霧の向こうの不思議な町』の映画化に取り組んだものの断念。映画化は実現しなかったものの、後に『千と千尋の神隠し』は同作の影響を受けていたことを、宮崎駿が明かしたのでした。
ちなみに、同じくジブリ映画の『耳をすませば』では、登場人物の天沢聖司が読んでいる本としても同作は登場しています。
柏葉幸子の作品には、『千と千尋の神隠し』のような少女が異世界に迷い込んでしまい、妖怪やおばけといった類のものと出会うストーリーが多く見られます。また著書の1つ『岬のマヨイガ』でわかるとおり、座敷童子や河童、お地蔵様といったキャラクターが出てくる民話的要素を含んだ作品となっているのも特徴。
日常の何気ない場所から異世界へとトリップしてしまう物語は、本当に別の世界へと続く扉がどこかに隠されているのではないかと、大人でもドキドキさせられてしまう魅力があります。ぜひ皆さんも1度、柏葉作品をお試しあれ!
『地下室からのふしぎな旅』の世界観が読む人を惹きつける理由。それは、もう1つの世界への入り口が、実は普段私達が目にしているような場所にあるのでは?と思わせてしまうからかもしれません。
本作では、おばさんの家にその入り口はありました。普段とは違う世界へ旅立つことはそう難しくないのかもしれない、と読んでいて思わせてしまうのです。
そして、そんな世界は私達が住む世界と似ているようで、どこか違う、そんな世界。その設定が、また実に細かいのです。イガ栗から茶色の栗になるまでが一瞬だったり、糸をつむぐだけの町や、糸を染めるだけの町といった何か1つだけに特化している町が存在します。
また色1つとっても、さまざまな色があることがわかります。黒色にしても「沼地の黒」や「夏のたそがれどきの黒」など、一種類ではありません。
「沼地の黒」色の糸はヌメヌメした照りをおびた、とろりとした手触りのもの。「夏のたそがれどきの黒」色の糸は少し青みを帯びた、しゃきっとした手触りのものといった感じです。その表現が、また読者に新たな感動を生み、退屈させないのでしょう。
本作に出てくる登場人物達は、とにかく個性的。さまざまな性格の持ち主がいますので、自分はどのキャラクターに1番近いか考えてみても面白そうですね。では、メインキャラクター達をご紹介していきましょう。
『地下室からのふしぎな旅』の対象は小学校中学年からということもあり、子供達が読むことも多い作品となっています。
しかし、大人になって初めて読む人や何度も読み返す人、ふと子供のころに読んだことを思い出して再読する人なども多くいます。なかには、母親になって子供達に受け継ぐ人もいて、本当に幅広い世代から人気を得ている作品となっているのです。
本作には、日々仕事をこなしている大人達へのメッセージも込められているように感じられます。
「お魚がすきなだけ食べられなくとも、
ランプの油がすこしぐらい不足しても、
楽しんで仕事ができることにくらべたら、
なんでもありませんもの」
(『地下室からのふしぎな旅』より引用)
ケイトウ町のばあやさんの言葉です。はっとした人も多いのではないでしょうか。生活をしていくのに仕事はしなければなりませんが、1度きりの人生、楽しんで働きたいものですよね。
他にも、ピポは体が小さいからという理由だけで、錬金術師なんて無理だと言われてしまいます。もちろん、体が小さければ他の人よりも出来ることは少ないかもしれませんし、苦労も多いことでしょう。
しかし人は誰でも皆、その人だけのものを持っています。そのことを、ピポは物語をとおして読者に伝えてくれるのです。1人1人の存在が大切なのだと。
幼稚園や小学校で教えられた当たり前のことですが、ついつい忘れがちになってしまう大切なこと。そんなことを、あらためて思い出させてくれるような作品なのです。
子供のころの純粋な気持ちをもう1度味わってみたいという方は、ぜひお手に取ってみてください。
本作の見所は、大きく分けて2つでしょう。
ぜひ、そんな気持ちになれる冒険を、本作で味わってみてください。
- 著者
- 柏葉 幸子
- 出版日
- 2006-04-15
ヒポクラテスがチィおばさんのところへとやってきた時、2人はなかなか気が合いませんでした。チィおばさんは隣り合っている国の住人と、ダブっているスペースを共同で使うなんて嫌だと、契約の更新に隣の国へと出かけることとなる、というのが本作の始まりです。
しかし隣の国へ着いた途端、ヒポクラテスとその1番弟子・ピポは、何者かに攫われてしまいます。2人を助けなければならなくなってしまった、チィおばさんとアカネ。
その経緯でヒポクラテスの人となりも徐々にわかってくることになり、またヒポクラテスも彼女たちに助けられたことによって、気持ちに変化が表れるのです。
心の距離を縮めることが出来た彼らがとった行動とは?そして、ヒポクラテスとピポの運命は!?その結末は、ぜひ本作を手に取って、ご自身の目で確かめてみてください。