杉井光のおすすめ作品6選!ラノベから一般文芸まで手がける力量を読む

更新:2021.12.5

ライトノベルからスタートし、一般文芸枠でも活躍し続ける杉井光。キャラクターが非常に魅力的で生き生きとしていて、展開も構成力の確かさが際立ちます。そんな杉井光の作品のおすすめを6作ご紹介します。

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読みやすくて楽しくて、うんちくも満載な杉井光

杉井光は日本の小説家です。1978年、東京都稲城市で生まれ、高校を卒業後、フリーター6年、ニート3年を経て、『火目の巫女』で第12回電撃小説大賞の銀賞を受賞しました。かなりの速筆で知られ、2008年5月から10月にかけて6ヶ月連続で新刊を刊行しています。

ライトノベルでは新人作家がデビューレーベルからのみ作品を刊行し続けることが多いのですが、杉井は早い段階で複数社からの発表。それもシリーズ化するほどのヒット作ばかりです。

また、『超越数トッカータ』で一般文芸にも進出しました。

怪物に対抗できる「火目」候補の少女たち『火目の巫女』

化生と呼ばれる怪物たちに脅かされ、怪物を討つ弓・火渡を授かることのできる「火目」で対抗し続ける国。

「火目」の候補である3人、化生に村を焼かれた伊月、盲目の佳乃、無邪気だが才能にあふれる常和たちは対立したり、助け合ったりしつつ、「火目」を目指します。さまざまなできごとを経て絆を深めた彼女たちの前で、化生は跋扈し……。

才能ある仲間を羨ましく思い、反発して、自らの才能にも限界を認めてしまう、普通なら脇のキャラクターに与えられるであろう設定を主人公にしているところが、この作品を目新しく見せているのではないでしょうか。

著者
杉井 光
出版日

「謎」解きのような雰囲気で「化生」の正体が明かされる過程も巧みで、元気な女の子、幼い女の子、巫女などの萌えの要素を多分に押し込みつつも、作者が自ら意図的な感じで崩しているように受け取れる作品です。また、表現の技術が素晴らしく、淡々とした短い文章なのに情景やキャラクターの心情がしっかりと伝わってきます。

作家の橋本紡が「良くも悪くも電撃らしくない」と評したそうですが、それは的確に作品を表していると思いました。のちに一般文芸へ移行していくのも充分わかる実力です。らしくないと評されたライトノベル、ぜひ手にとってみてくださいね。

高校生と美少女探偵のニートティーンストーリー『神様のメモ帳』

高校1年の藤島鳴海と同級生の篠崎彩夏は、都市を蝕む凶悪なドラッグ「エンジェル・フィックス」にまつわる謎に巻き込まれます。鳴海はニート探偵のアリスこと紫苑寺有子に雇われることになり、彩夏はアリスの世話を焼き……。

謎のすべては、部屋に引きこもりつつもニートたちをまとめるニート探偵のアリスによって解決されていくというミステリー仕立てのライトノベルシリーズです。

 

著者
杉井 光
出版日
2007-01-06

著者によれば、プロットよりも先に核となるキャラクターから作り込むという形をとり、事件を作り、そこに肉付けする作品の作り方をしたらしく、結果として渋谷を舞台とした麻薬やギャングが登場する展開となったそうです。

ヒロイン・アリスの怜悧で偏屈な感じや、もろくウブな態度の可愛らしさが際立っていて、とても魅力的に感じられます。

そして、公式などで紹介されている「ニートティーンストーリー」通りに、登場人物の大半が就学も就労もしていません。そこがこの作品の特徴なのでしょう。独特の世界観とキャラクターたちが活躍するティーンならではの物語、ぜひともご堪能くださいね。

恋と音楽と革命が彩るボーイ・ミーツ・ガール『さよならピアノソナタ』

音楽評論家を父に持つ高校生・桧川直巳と、ピアノの天才であり転校生の蛯沢真冬が、海辺のゴミ捨て場で出会ったことからはじまるボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーです。

登場人物たちにクラッシックに関わる者が多いこともあって、実際に存在している楽曲や楽器、音楽家などが出てきます。

 

著者
杉井 光
出版日

それぞれのうんちくともども数多く出てくるものの、音楽ファンではなくても充分にわかりますし、楽しめるような配置のされ方をしています。むしろ、エピソードの象徴として、作品のイメージや人物を印象づけるような巧みな選び方なので、感心してしまうのではないでしょうか。

また、登場人物たちがロックバンドを組んでいるため、当然、演奏シーンも登場しますが、専門用語が使用されていてもわかりにくくならず、逆に臨場感を伝える手助けになっているのが杉井光の巧みさでもあると思います。

音楽が好きならもちろん、そうではなくても充分に楽しめるピュアな恋愛小説シリーズ。おすすめです。

エロマンガ専門店で展開するラブコメディ『楽聖少女』

夏休みのある嵐の日。音楽関係者の両親を持つユキは、図書室に現れた女悪魔・メフィストフェ

レスよって、悪魔と契約を交わした文豪のヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの新しい身体となるために、19世紀頭のヨーロッパへと連れ去られてしまいました。日本人としての本名を奪われたユキは、大作家のゲーテとして生活しながらも、現代の日本へ戻る方法を探すのですが……。

著者
杉井 光
出版日
2012-05-10

この作品の中に登場する19世紀頭には、本来あるはずのないもの、たとえば、電話、列車、飛行船、戦車などが存在しており、時代考証的にはちょっと文明の歪みがあるのですが、異世界というわけではありません。同じ時間の流れの中の支流となっています。

その展開上の必然として、物語に登場する文豪や音楽家、皇帝などは歴史的事実とは違う性質や設定が与えられていますが、そこがかえって魅力的に活きているのです。

歴史好きにはもうひとつのあったかもしれない歴史として楽しめる、とても面白いですよ。

変わり者生徒会を舞台にした学園ラブコメ 『生徒会探偵キリカ』

生徒数8000人という超巨大学園に入学してしまった牧村ひかげは、女なのに女好きの暴君会長・天王寺狐徹、校内のマドンナでもある副会長・竹内美園、総額八億円というとんでもない生徒会予算を掌握する不登校児・聖橋キリカが牛耳る生徒会に無理やり引きずり込まれてしまいます。さらにひかげは、キリカのもうひとつの役職も手伝うことになってしまい……。

 

著者
杉井 光
出版日
2011-12-02

探偵は出てきますが、ミステリーは薄めです。それでも、設定はしっかりしていて展開も面白いですし、登場人物も可愛らしく、ひかげにもしっかり見せ場があります。学園ラブコメらしい明るさも楽しさもあふれていて、読んでいて気持ちが弾んできます。

推理もの要素を求めてしまうと物足りないかもしれませんが、キャラクターノベルとして読めば充分に完成度の高い作品です。

それでいて、肩のこらない内容ですので、息を抜きたいときに読んで楽しんでほしいなと思います。

メタネタ80%の人外ノベル『ばけらの!』

主人公、杉井ヒカルはとあるライトノベルレーベルからデビューした新人作家です。そんな、彼の住むアパートには、先輩や同期の作家が住んでいました。全員美少女で、夢のような生活……と思いきや、全員人間ではなく、人外ばかりでした。

〆切が迫っている時に限って事件が起こります。狼女・座敷童・グール・インキュバス・陰陽師・吸血鬼……人外達に囲まれながらも、作品を書き上げていく杉井ヒカル。彼の思考原理は、とても一貫していて気持ちは良いです。

「ばかだから、小説家になったんだ。他に、なんにもできないから」(『ばけらの!』1巻より引用)

著者
杉井 光
出版日
2008-09-16

ほのぼの系のライトノベルですが、メタネタがいたるところに散りばめられており、作中に登場する人外作家たちには全てモデルがいるというのも、この作品の特徴です。

狼娘のヒロイン葉隠イズナは、『狼と香辛料』の作家支倉凍砂がモデルであり、投資に麻雀、ネトゲ等を本編の中でも嗜んでいます。座敷童の神無月つばさは、『れでぃ×ばと』の作者上月司がモデル。特技はもちろんパチンコです。グールの風姫屍鬼は、名前とは違って普通どころか超綺麗なお姉さん。『殺×愛』の作者の風見周がモデルになっています。

このように、色々な人の元ネタが分かればもっともっとこの作品を楽しめるでしょう。あなたも、この異色の人外ライトノベルを読んでみませんか?

自身が音楽をしていたことを活かす作品の多い杉井光。文章や構成の巧みな作家です。シリーズが多いのですが、気負わずに読めますので、リラックスしながら読んでみてくださいね。

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