絵本『おおきなかぶ』でねずみが手伝う意味はあったのか考察!あらすじも紹介

更新:2021.11.17

「うんとこしょ、どっこいしょ」というフレーズで有名な昔話『おおきなかぶ』。みんなで力を合わせることの大切さを学ぶことができますが、ロシアで生まれ再話されたということを考えると、少し異なる解釈をすることもできるのです。この記事では、あらすじを紹介するとともに『おおきなかぶ』という話を別の側面から見直していきます。あわせておすすめの絵本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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絵本『おおきなかぶ』のあらすじを紹介。ロシアの昔話

 

ロシアで生まれた童話『おおきなかぶ』。1863年に発表された『ロシア民話集』に収録され、その後アレクセイ・トルストイらによって再話されたものが有名です。

ロシア語で「引っ張って、引っ張って」という動詞で表現される、かぶを引くときの掛け声は、日本語では翻訳者の内田莉莎子により「うんとこしょ、どっこいしょ」と訳され、とても親しまれています。

ではまず、あらすじを紹介していきましょう。


ある日おじいさんが、自分の畑にかぶの種を蒔きます。かぶはやがて、見たこともないくらい大きく育ちました。驚いたおじいさんが収穫しようとしますが、大きすぎてひとりでは抜くことができません。

そこでおばあさんを呼んできて、手伝ってもらうことにしました。

「うんとこしょ、どっこいしょ」

おじいさんがかぶを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って、それでもかぶは抜けません。

2人ではどうにもならないと思い、おばあさんは孫娘を呼びます。「うんとこしょ、どっこいしょ」それでもやっぱり抜けません。

今度は孫娘が犬を呼んできて、犬は猫を呼んできて、一列になって引っ張りますが、それでもかぶは抜けません。

最後に、猫がねずみを呼びます。おじいさんがかぶを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って、孫娘がおばあさんを引っ張って、犬が孫娘を引っ張って、猫が犬を引っ張って、最後にねずみが加わり猫を引っ張ると……ようやくかぶは抜けました。

 

『おおきなかぶ』を再話したアレクセイ・トルストイってどんな人?

 

先述したとおり、『おおきなかぶ』の初出はロシアの民話集です。何人かの作家によって再話されましたが、日本でもっとも親しまれているのはアレクセイ・トルストイという小説家が再話したもの。

1883年にロシアで生まれ、本名をアレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイといいます。母親は児童作家のアレクサンドラ・トルストイで、彼女もロシアでは有名な人物です。

トルストイ自身は、1920年に起きた「十月革命」の際に、ドイツへ行き、後にフランスへ移住しています。自然主義とエロティシズムを用いた短編小説や詩集を発表。ロシアに帰国してからは旅行記を執筆したほか、『ピョートル一世』『苦難の道』という2つの長編歴史小説を記しました。

また、ロシア語で書かれた初めてのSF小説『アエリータ』を発表するなど多様な執筆活動をし、人気を博しています。

そのからわらで、児童向けの文学作品も数多く発表。今回ご紹介する『おおきなかぶ』は民話の再話という形ではありますが、日本では彼が再話した『おおきなかぶ』が発売され、広く知られるようになりました。

 

『おおきなかぶ』の物語が表している意味を考察

 

さて、そんな『おおきなかぶ』ですが、あらためてあらすじを振り返ってみてどのような感想を抱いたでしょうか。

ひとりの力ではびくともしなかったおおきなかぶを、さまざまな人や動物の協力を得てようやく抜くことができた……力を合わせることの大切さを説いたようにも思えるストーリーです。しかし実は、この物語がロシアの民話であること、また再話したアレクセイ・トルストイがロシア人の作家であることを考えると、別の解釈ができるのです。

ロシアといえば、社会主義の国として有名です。個人主義的な経済活動ではなく、人々が協力して仕事に取り組むことで、より平等な社会を作っていくという狙いがあります。この『おおきなかぶ』の物語もまた、そんな社会主義を暗示していると考えられないでしょうか。

「おおきなかぶを抜く」という仕事をするにあたり、おじいさんひとりではなく、おばあさん、孫娘、犬、猫、そしてねずみにいたるまで力を合わせてこそ成し遂げることができたのです。

 

『おおきなかぶ』から学べる教訓は

 

どんなに小さな力でも必要になる時がある

おじいさん、おばあさん、孫娘、犬、猫の力では、どうにも抜くことができなかったおおきなかぶ。最終的に加わったのはねずみでした。本来であれば小さなねずみの力など微力なもののように感じますが、『おおきなかぶ』においては重要な最後のピースだったのです。

このことから私たちは「どんなに小さな力でも役に立つ」ということを学ぶことができるでしょう。

問題解決の鍵は、意外な方法かも

おおきなかぶを引き抜くために、猫が最後に連れてきたねずみ。おじいさんもおばあさんも孫娘も、おそらくねずみの力を借りることは当初から頭になかったのではないでしょうか。

何か問題を解決したいときは、これまでは切り捨てていた意外な方法を試してみるのもよいのかもしれません。

 

『おおきなかぶ』の原点といえばこの絵本

著者
A.トルストイ
出版日
1966-06-20

 

トルストイが再話し、内田莉莎子が翻訳した作品。日本における『おおきなかぶ』の原点ともいえる一冊です。発売から50年以上が経ち、世代を超えて読んでいるご家庭も多いかもしれません。

おおきなかぶを抜くことに苦戦する人間たちのもとに、1匹1匹と増えていく動物の仲間たちの姿が愛嬌たっぷりに描かれています。

イラストを担当した佐藤忠良は、シベリア抑留を経験した彫刻家。ロシアの文化が反映されている、彼にしか書けないものとなっています。

 

かわいいイラストを味わえる絵本

著者
いもと ようこ
出版日
2007-05-01

 

いもとようこの愛らしいイラストが目を惹く一冊。大きくておいしそうなかぶの前で、人間たちも動物たちもまるでマスコットのようです。

また本書には、「ぶた」が登場。ぶたを仲間に加え、おおきなかぶに挑戦していきます。

ちなみにかぶを抜くときのセリフは「うんとこしょ、どっこいしょ」ではありません。どのような掛け声でおおきなかぶと戦ったのでしょうか。ぜひ確かめてみてくださいね。

 

印象的な絵と擬音で楽しむ『おおきなかぶ』

著者
トルストイ
出版日
1999-10-01

 

老夫婦がかぶの上に座る、不思議な表紙の絵本です。これだけでもかぶの迫力を感じます。

本書の特徴は、ユーモラスなイラストに加え、トルストイの再話にニーアム・シャーキーの解釈が盛り込まれたことで、原典とは異なる印象を受けることです。

かぶが抜ける時の「擬音」にも注目。楽しく読める一冊です。

 

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