室井佑月のおすすめ書籍5選!女として、母として描く作品に共感続出!

更新:2021.11.17

タレントやコメンテーターとしてメディアに出演するとともに、作家として数々の作品を生み出している室井佑月。扇情的ながらも素朴で純粋な表現に共感をする読者が多く、またシングルマザーとして子育てをするエッセイにも注目が集まっています。女性であり、母親でもある室井ならではの魅力が光る作品のなかから、特におすすめのものを紹介していきます。

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室井佑月とは

 

1970年生まれ、青森県出身の室井佑月。小説家や随筆家、タレントとして活躍しています。

幼い頃に父親が愛人を作ったため、母子家庭で育ったそう。高校を卒業した後、雑誌モデルやレースクイーン、高級クラブのホステスなどさまざまな職を経験しました。

そのかたわらで執筆していた『性の小説』が、1997年に「小説新潮」主催のコンテストで入選。以降、本格的に作家として活動を始め、翌1998年に発表した『血い花』でデビューをしました。

作家としての室井佑月の作風は、エロティックながらも素朴で純粋。自身の体験をもとにリアルな女性を描いていることが特徴です。

室井佑月のデビュー作『血い花』

 

1998年に発表された、室井佑月のデビュー作。さまざまな女性の姿を描いた短編集です。

表題作の「血い花」の主人公は、韓国籍をもつ銀座のホステス。帽子職人だった母が亡くなり、主人公はお得意様だった斎藤家に帽子を届けに行きます。その家の息子で、幼馴染でもある誠から求婚を受け、喜んだのも束の間、職業と国籍について口外しないよう告げられるのです。

著者
室井 佑月
出版日
2001-03-16

 

室井佑月のホステス時代の経験にもとづき執筆された「血い花」。彼の言葉にショックを受けながらも、世間体へと立ち向かう強さが描かれています。

誠もけっして悪気があるわけではなく、最善策を考えたがゆえの言動で、だからこそ主人公は、ホステスという仕事や韓国籍に対する差別が根強いことを実感するのです。

そのほかに収録されている作品も、冴えない双子の妹を憎んでしまうことに苦しむ美しい姉や、不倫相手の妻に対抗するためひたすらに料理を作り続ける孤独な女性など、強く美しくありながらも、その一方で儚くて繊細な女性の内面を描いたものばかり。

室井の鋭い観察力に、読者も共感するでしょう。

室井佑月の初の長編小説『ドラゴンフライ』

 

2001年に発表された、室井佑月の初めての長編小説です。2006年にはテレビドラマ化もされました。

主人公のマキは失恋したことをきっかけに、会社を辞めて銀座のホステスに転身。源氏名をリュウとします。愛と欲望が渦巻く世界に身を投じた彼女の運命とは……。

著者
室井 佑月
出版日
2004-12-16

 

ホステスの世界は、人気があってお金を稼げることがすべての実力社会。プロとして客の理想の女になることに徹し、その裏では他店だけでなく同じお店の女の子たちとも戦うことなります。

妬みや嫉妬、いじめ、劣等感……渦巻く愛憎が会話の節々に表れているのが魅力です。その一方で、日々損得勘定をしながら生きる姿に虚無感を抱くかもしれません。

夜の銀座を生きる女性のたくましさを淡々と描いた作品です。

さまざまな女性の姿を描いたショートショート

 

88編の「プチストーリー」が収録された作品。2005年に発表されました。

さまざまな男女のやりとりが、1話2~3ページで描かれています。

著者
室井 佑月
出版日

 

30代の女性をメインに、随所で男性サラリーマンや若い女の子を主人公にしたストーリーが収録されています。

元彼から電話で急に呼び出された女性、三十路女の理想の男性像など、どこかで実際に起こっていそうな日常の話ばかり。どんな読者も、絶対に共感できる作品があるはずです。

ひとつひとつの作品は短いので、テンポよくサクサクと読めるでしょう。

室井佑月が描くシングルマザーの奮闘物語『ママの神様』

 

2006年に発表された作品。全11編からなる短編集で、表題作の「ママの神様」は2008年にはテレビドラマ化もされました。

3度の離婚を経験した主人公には、それぞれ父親が異なる子どもが3人います。シングルマザーとして懸命に子育てをするも、周囲はその努力を決して認めてくれません……。

著者
室井 佑月
出版日
2008-04-15

 

夜のお店を切り盛りしつつ、子育てをする主人公。忙しさゆえに、夕飯はいつもお弁当、幼稚園にも遅刻して、他のママ友ともうまくやっていけません。しかしそれでも、子どもにとっては自分の母親が一番の存在で、母親にとってもまた然り……。

苦悩や葛藤を感じながらも、それ以上に大きな愛情を感じさせてくれる物語になっています。

室井佑月の子育てエッセイ『息子ってヤツは』

 

2016年に発表されたエッセイです。息子が小学3年生から高校1年生になるまでの日々を、母親の視点と作家の視点から描いています。

コネもなく資産もない状況で、室井が願うのは「息子の将来が幸せであること」。そのためには高い学歴が必要とだと悟り、勉強嫌いの息子に「勉強が好き」とくり返し言い続けるのです。

私小説のような構成でありながら、息子への揺るぎない想いを綴った内容。ゆきいづるの3コマ漫画が花を添えています。

著者
室井 佑月
出版日
2016-06-24

 

室井佑月の想いが通じてか、やがて息子は自ら勉強をする子どもに変貌しました。小学4年生から塾に通い、地方の全寮制中高一貫校を受験することを決めるのです。愛するひとり息子だからこそ子離れは難しく、それでも息子の幸せを第一に願う葛藤に思わず涙するかもしれません。

余計な計算をせず、ド直球の愛情をぶつける室井流の子育て術。思い切り笑えて、時々ホロリと泣ける作品です。

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