異世界と繋がってしまった、とある都市。刑事と異世界の少女、彼らはそれぞれのやり方で悪を裁いていきます……。 ガガガ文庫から発売されている賀東招二のライトノベルシリーズ、それが本作『コップクラフトDRAGNET MIRAGE RELOADED』です。ラノベとしては異色ともいえる、ポリスアクション小説。副題の「ドラグネット・ミラージュ」は、本作の前進にあたる作品のタイトルです。 2019年にはテレビアニメの放送も決まっていて、これからますます注目が高くなっていくことが予想される本作。既刊6巻分の内容をご紹介しましょう。
異世界と地球が混じり合った太平洋上の島・カリアエナ島。その島にあるサンテレサ市の市警で刑事をやっているケイ・マトバは、異界人との交流で起こった猟奇的な事件や、不可思議な事件を解決する日々を送っていました。
ある日、事件捜査のなかで相棒を失った彼の前に、新しい相棒として異界人の少女ティラナが現れるのです。
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2009-11-18
本作は、地球人の男と異界人の少女が、さまざまな事件を操捜査するファンタジーなポリスアクション小説。ライトノベルに分類されてはいますが、ミステリー小説として雑誌で紹介されるなど、ラノベの枠を超えて多くの読者からの支持を得ています。
また、作者が「海外ドラマのノベライズ版を翻訳した小説、という設定で書いた」と述べているとおり、海外ドラマのようなテンポのよさやハードボイルドなキャラクター設定などもあり、ミステリー好きのみならず、海外ドラマ好きにも楽しめる内容になっているのです。
そんな『コップクラフト』が、2019年7月から待望のテレビアニメ化!キャストには津田健次郎、吉岡茉祐など人気声優が抜擢され、監督は板垣伸が務めます。アニメーション制作会社は、アニメ『君のいる町』『てーきゅう』『ベルセルク』などを手掛けたミルパンセです。ファンタジーなポリスアクションが、アニメーションでどのように表現されるのか期待大です!
- 著者
- きぬた さとし
- 出版日
- 2006-01-20
ちなみに副題でもある「ドラグネット・ミラージュ」は、別レーベルで発売された本シリーズの前進ともいえる作品の名前。本シリーズの1巻2巻は同作をベースに書かれたエピソードになっているので、気になる方は、ぜひそちらもチェックしてみてください。
15年前。突如、太平洋上に現れたカリアエナ島。
そこには、異世界へと続くゲートが存在していました。以来、地球人は異世界へと続くこの島を中心に、異世界の住人と交流する道を探すのです。
しかし、異世界と地球が混在する島では、さまざまな凶悪犯罪が多発するようになり……。
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2009-11-18
魔法や魔物の存在する世界と現世が混在するカオスな世界で発生するさまざまな事件を、刑事のケイ・マトバと、相棒となった異界の見習い騎士ティラナ・エクセディリカが解決していく本作。第1弾となる本巻では2人がコンビを組み、反発し合いながらも事件を解決し、本当の相棒となっていく様子が描かれていきます。
舞台となるのは、異界に続くゲートとともに出現したカリアエナ島にあるサンテレサ市。ケイはサンテレサ市警の日本人刑事です。この島では魔法や魔物の存在する異界と交わったことにより、猟奇的な事件が多発するようになっていました。
ケイは、そんな事件の1つ、妖精の誘拐事件を相棒のリックとともに追っていましたが、その捜査中にリックは殺されてしまうのです。
そして相棒を失ったケイは上司命令で、ティラナとコンビを組むことになったのでした。彼は過去のある理由から異界の住人をよく思っておらず、そのためにティラナのことも、最初は相棒と認めるどころか、冷たい態度を取ってしまいます。
一方ティラナのほうも、彼に心を許そうとせず、2人は互いに不満を抱いていました。
そんな彼らが妖精誘拐事件の解決をとおして互いを認めていくというストーリーは、突飛さは少ないものの堅実なミステリーであり、悪を追い込んで事件を解決するという王道な警察小説として楽しむことができるでしょう。
そうはいっても難しいことはなく、読みやすい文章とファンタジーな設定で、さくさくと読み進めることができます。シリーズとしては、まだまだ序盤。世界観とキャラクターの紹介といった一冊ですが、ここでハマれば次巻以降もきっと楽しむことができるはずです。
妖精誘拐事件を解決し、サンテレサ市警へ正式に赴任することになったティラナ。
ケイとのコンビも正式になり、いよいよ本格的に犯罪捜査へと乗り出す2人の前に現れた、次なる事件とは……!?
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2010-06-18
ライトノベルというジャンルではあるものの、美少女がティラナしか登場しない本作。その彼女がいよいよ正式にケイの相棒となる本巻には、2つの事件が収録されています。エピソードとしても2つの話が収録されている形で、短編集というほどではありませんが、1つのエピソードの長さは長編ほどはありません。
1つは吸血鬼の登場する事件。本作の世界では吸血鬼はかなり強敵のようで、ケイとティラナは激しいアクションをくり広げます。
もう1つは、ポルノ本窃盗団の登場する事件。吸血鬼の話に比べるとかなりコミカルな印象で、ケイの所属するサンテレサ市警の特別風紀班の、他の刑事達もたくさん活躍する内容です。
たとえばケイの上司であるビル・ジマーという元海兵隊の警部だったり、優しくて女性的なゲイの刑事トニー・マクビーだったりと、ケイの同僚達も個性の強いキャラクターがそろいぶみ。特に気配り上手のトニーにはケイも心を開いている様子で、深い信頼関係で結ばれていることが伺えます。
事件解決に向けた捜査はもちろんのこと、本作の世界観や主人公達を取り巻く環境を、より深く知ることができる一冊です。
セレブな子供達の通う進学校シャーウッド高校の生徒の1人が、薬物中毒で死亡する事件が発生。
その女子生徒ノルネの死の真相を探るため、ティラナは潜入捜査をすることになりますが……!?
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2011-01-18
前巻までは、本シリーズの前進の作品『ドラグネット・ミラージュ』をベースにした物語でしたが、本巻からはいよいよ『コップクラフト』書き下ろしのエピソードになります。今回は、麻薬捜査の話です。
シャーウッド高校というセレブな子供達の通う高校の生徒で、ノルネという少女が薬物中毒死したことをきっかけに、ケイとティラナは麻薬捜査を開始します。捜査の鍵がシャーウッド高校にあると睨んだティラナ達は、ティラナの10代にしか見えない若い外観をいかし、潜入捜査をすることにしたのでした。
制服姿の彼女や、潜入先で出会った同じ異界人のナイアスとの交流など、序盤では笑えるところもほのぼのできるところもあるのですが、事件の真相が明らかになっていくうちに、どんどんシリアスな展開となっていくのです。
後半ではギャグからは遠い雰囲気で、特にティラナが刑事である責任や自分自身の正義感、そして友情などさまざまな感情を抱えて葛藤する姿は、痛々しくも読みごたえがあり、どんどん読み進めてしまうでしょう。
また、ケイの過去についても触れられていています。その読後感は、決してよいとは言えないかもしれません。しかし、ライトノベルによくある軽さはなくても、それこそが本シリーズの魅力の1つなので、ぜひ時間のある時にじっくりと読んでみてください。
サンテレサ市で起こる事件を解決する日々を送っている、ケイとティラナ。ある日、2人は異世界からの密輸がおこなわれるという情報を手にしました。
無事に密輸品は押収するものの、ティラナの体に異変が起きて……!?
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2014-03-18
第3弾である本巻は、前巻から3年の期間をおいて発売されました。そのためリアルタイムで追いかけていた読者にとっては、まさに待望の一冊。前巻ではシリアスな展開が多く、ラストも救いのあるものではありませんでしたが、本巻はコミカルで笑える展開の多い内容です。
ケイは重度の猫アレルギーを患っているのですが、ある事情があって家で「クロイ」という名前の黒猫を飼っています。そのクロイとティラナの中身が、なんと突然入れ替わってしまうのです。
発端は、2人が追いかけていた密輸事件でした。その情報を手にした2人は、待ち伏せをして密輸品を押収することに成功。しかし、肝心の密輸業者は逃がしてしまいます。そして押収した密輸品の謎の術式によって、ティラナはクロイと入れ替わってしまったのでした。
猫になってしまったティラナが奮闘する姿はもちろん面白いのですが、ティラナの姿になったクロイがケイにまとわりついてくるところなどは、ライトノベルらしいヒロインと主人公の絡みを読むことができるでしょう。
本シリーズは、どちらかというとライトノベルらしくないところに魅力がありますが、本巻ではそういったラノベらしさも加わってさらに面白くなっています。
ある日、ケイとティラナのもとへに、奇妙な死体が見つかったという知らせが入ります。
死体を見たケイは、その殺された男が、過去に自分と一緒に戦っていた人物であることに気が付き……!?
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2015-06-18
前巻は、猫とティラナが入れ替わってしまうというコミカルなエピソードでしたが、本巻は再びシリアスでハードボイルドな展開になっています。本巻で始まる事件では、ケイの過去や、かつて地球と異世界で巻き起こった紛争が関わってくるのです。
ケイは過去に平和維持軍という軍に所属し、異世界に従軍したことがありました。今回の事件では、その時の従軍仲間が次々に狙われていくことになってしまいます。そうなると、必然的にケイの辛い過去も引っ張り出されてきて、読み進めるうちにどんどん暗い気持ちになっていくことでしょう。
読後感も決してよいものとは言えないですが、同時に奇妙な殺され方をする死体が見つかるところから、次々に明かされる過去や真実など、どんどん展開していくストーリーのラストは予想外のものならではの面白さ。本格ミステリーを読んでいるような爽快感を覚えることもできるでしょう。
前巻がコミカルなものになっていたぶん、前々巻やその前のようなシリアスでハードボイルドをより楽しむこともできるかもしれません。次巻以降への伏線も感じられ、ますます先が気になってくる第5巻です。
異世界と地球の微妙なパワーバランスで成り立っている、サンテレサ市。しかし、そんなバランスを崩す事件が発生してしまいます。
混沌とするサンテレサ市で、ケイとティラナは事件解決のために奔走しますが、そんな2人の間にも亀裂が……!?
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 2016-10-18
本巻で起こる事件は、これまでのなかでもかなり大きく派手で、怒涛の展開がくり広げられるもの。事件は、市長選挙の候補者が次々に殺されるというところから始まります。
市長候補には異世界との調和を求める立場の者や、反対に異世界の要素を地球から排除しようとする立場の者が存在。また、犯人が異世界人か地球人かわからず、さまざまな憶測が飛び交い、それまで微妙なパワーバランスを保っていた地球と異世界のバランスが崩れ始め、市内では多くの対立が起こることになってしまうのです。
民族対立や差別といった重たいテーマを扱いながら、ケイとティラナがどう事件を解決していくのかが見所の1つでしょう。
ケイはもともと異世界に対してよくない感情を抱えていましたが、ティラナとコンビを組むことで、その気持ちにも少しずつ変化が現れていました。ティラナのほうもさまざまな事件捜査をとおし、彼を認めて地球にも馴染み始めています。
しかし、今回の事件では、そんな2人にも亀裂が入ってしまうのです。事件の真相やアクションはもちろんのこと、彼らがこれまで築き上げてきた絆がどうなってしまうのかにも注目したい一冊です。
いかがでしたか?異世界ファンタジーの設定を土台にしながらも、ハードボイルド、ポリスアクションなどの要素も強く盛り込まれた『コップクラフト』。ミステリー小説として紹介されることも多い作品です。普段ライトノベルはあまり読まないけど一般文芸は読むという方には、特に手に取りやすい一冊かもしれません。これを機に、ぜひ読んでみてください。