子どもの小さな冒険を描いた『はじめてのおつかい』をはじめ、林明子とタッグを組んだ作品が有名な絵本作家の筒井頼子。幼い女の子を主人公に、心の機微や成長をいきいきと表している作風が魅力です。この記事では、そんな筒井の作品のなかから特におすすめのものを厳選してご紹介しましょう。
1945年生まれ、東京都出身の筒井頼子。高校を卒業した後、広告会社などでの勤務を経て絵本作家として活動を始めました。
林明子とタッグを組んだ作品が有名で、幼い女の子を主人公にした物語を多く描いています。特に、おつかいや妹との留守番など、頼れる大人がいないシチュエーションのなかで、子どもなりにさまざまなことを考え、時には辛い思いもしながら成長する姿が表現されているのが特徴です。
1977年に刊行された『はじめてのおつかい』は、世代を超えて長きにわたり読み継がれているベストセラーとなっています。
5歳の女の子みいちゃんは、ある日お母さんから、生まれたばかりの妹のために牛乳を買ってきてほしいと頼まれました。しかしみいちゃんは、これまで1度もひとりで外に出かけたことがありません。
100円玉を2つ握りしめて、ドキドキしながらもひとりで外に出るみいちゃん。坂の上にあるお店に向かいます。途中で転んでしまったり、お店についてもおばさんに気づいてもらえなかったり……次々とトラブルが起こります。無事にはじめてのおつかいを成功させることができるのでしょうか。
- 著者
- 筒井 頼子
- 出版日
- 1977-04-01
1977年に発表された、筒井頼子の代表作です。
子どもにとって、初めてひとりで外に出かけること、しかもおつかいをするということは、ドキドキの経験でしょう。すべてが順調にいくわけではありませんが、おつかいを通して精神的に成長するみいちゃんの姿は、同年代の子どもにとって大きな勇気を与えてくれるはずです。
また不安や恐怖、焦り、責任感……小さな体にいろんな感情を背負ったみいちゃんを見ると、大人の方はついホロリとしてしまうかもしれません。心配になって坂の下まで様子を見に来ているお母さんの気持ちがよくわかります。
日曜日の朝、あやこは晴れた空を見てとてもごきげん。今日はお父さんとお母さんと一緒に、ピクニックに行く日なのです。
ワクワクした気持ちを抑えられないあやこ。早くお出かけをしたくて、準備に忙しそうなお父さんとお母さんのお手伝いをすることにしました。しかし……。
- 著者
- 筒井 頼子
- 出版日
- 1981-10-20
1981年に発表された作品です。
お母さんが用意したおかずをお弁当箱に詰めたり、お父さんのバッグのファスナーを閉めてあげたりするのですが、実際のお弁当はぐちゃぐちゃに、そしてバッグからも荷物があふれています。「おかあさん、みて!わたしおべんとうをつめてあげたの」と無邪気に言うあやこの姿がかわいいのです。
本書の魅力は、あやこがたくさん失敗をしてしまっても、お父さんもお母さんもけっして叱らないところでしょう。まだ小さいあやこが不器用ながらも一生懸命なことをわかっているからです。
我が子を優しく見守る大きな愛を筒井頼子が描いた、あたたかな作品になっています。
あさえが外で遊んでいると、お母さんが銀行に行ってくるねと家を出てしまいました。さらに、眠っていたはずの小さい妹のあやちゃんが目を覚ましてしまいます。
あさえは妹を楽しませようと道路にチョークで絵を描くのですが、ふと顔をあげると、あやちゃんがいなくなっているのです。焦るあさえ。妹を必死になって探します。
- 著者
- 筒井 頼子
- 出版日
- 1982-04-20
1982年に発表された作品です。いなくなってしまった妹を探すあさえの緊迫感が嫌というほど伝わってきます。あさえはおそらく3~4歳くらいでまだまだ幼いですが、そんな彼女にとって妹のあやちゃんは、初めてできた守るべき存在でしょう。
いなくなってしまったとわかった時の表情、不安な心を抱えて必死で走る姿に、読者もドキドキしながら読み進めることになります。
公園で遊んでいる妹を見つけた時、どれだけほっとしたことか。妹を叱ることなく、ぎゅっと抱きしめる様子に胸が打たれます。
先述した『あさえとちいさいいもうと』の続編にあたる作品です。1987年に発表されました。
あさえが幼稚園から帰宅すると、妹のあやちゃんの具合が悪そうです。お母さんが病院に連れていくと盲腸にかかっていることがわかり、そのまま入院をすることになってしまいました。
突然の出来事に、家はバタバタと慌ただしくなります。お母さんは病院に付きっきり、あさえはお父さんお父さんが帰ってくるまで、ひとりでお留守番をすることになりました。
- 著者
- 筒井 頼子
- 出版日
- 1987-02-25
妹は大丈夫なのか心配する気持ち、ひとりぼっちで留守番をする心細さ、そんななか降りはじめる雷雨、お父さんとふたりっきりで食べるご飯……。いつもと大きく違う日常が描かれます。
あさえにとってあやちゃんは、やんちゃで困ったところもある存在でしたが、いないとなるととても心配。いつもと家の空気も異なり、ざわざわとした気持ちになるでしょう。
次の日、あやちゃんのお見舞いにあさえが持っていったのは、彼女が1番大切にしている人形でした。たった一晩で大きく心が成長したあさえ。そんな彼女をお母さんがぎゅっと抱いてくれるのです。思いやりの心を育める一冊です。
山の見える街に引っ越してきたかなえ。荷物の片付けをしていると、玄関の方から「とん ことり」と物音が聞こえます。
見に行くとそこには、すみれの花束が落ちていました。次の日も「とん ことり」の後にたんぽぽの花が。その次の日は、お手紙が。
新生活の不安な心を優しく包み込んでくれる一冊です。
- 著者
- 筒井 頼子
- 出版日
- 1989-02-10
1989年に発表された作品です。
新しい街へ引っ越し、生活を始めるということは、ワクワクする一方で大きな不安もともないます。子どもであればなおさらでしょう。
本作の主人公かなえもまた、新しい場所にやってきてナーバスになっていました。そんな彼女の心を、「とん ことり」という優しい音と、かわいらしい贈り物がそっと包みこんでくれるのです。
新しい友達との出会いを書いた一冊。新生活を迎えるお子さんにぜひ読んであげてください。