怖がりな自分に悩んでいる人におすすめの本

更新:2019.2.7

「人の目を気にしない生活」を選んだがゆえに「人の目が異様に気になる」。 「ユニークな人になりたい」けど「常識はずれな人にはなりたくない」。 「普通なんてない」といいながら「平均が気になる」。 変わった人だねと言われることに喜びを感じつつも、その裏の裏まで気になってしまう…自意識過剰を順調に育てて来た筆者が送る、「自分との戦い」ならぬ「自分との痴話喧嘩」に悩むあなたにおすすめの新書、ご紹介します。

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なんでかわからないけど怖いもの

人間誰しもひとつやふたつ怖いものがあると思う。

あんまり会話で出てくることはないが、「最近見た夢覚えてる?」レベルに「ねえ、怖いものってなんかある?」は実は盛り上がれる話題ではないかと思っている。少なくとも私は人の怖いものについて聞くのが好きだ。「恐怖症」までいってしまうと深刻だけれども、「なんでかわかんないけどちょっと怖いんだよね」というものは、その原因を一緒に探ったりすると面白い。

「あなたの弱みはなんですか?」なんて面接みたいに聞かずとも、相手の弱点をしることができるというのに一種の興奮を覚えるのかもしれない。

私はその気まぐれな性格から、怖いものがころころ変わるたちで、小学生の時は「きのこ」が怖かった。今分析してみると、「身近な食べ物なのに、ちょっと見た目が違うやつを食べると死ぬ!」というのが、恐怖だったのだと思うが、小学生の自分が果たしてそこまでに冷静にものを考えていたかは謎である。図鑑に書かれていた「神経毒」の症状が怖かったのかもしれない。

ちなみにもっと遡って幼稚園のころは、操り人形が怖かったらしい。「人から操られることの恐怖」…なわけはないと思う、もっとアホな感じの子どもだったようだし。

中学生の頃は細菌が怖く(たぶん24時間戦い続ける男で有名な海外ドラマのせい)、高校生の頃は放射能が怖く(24時間男もしくはシュワルツネッガー氏のロボットもの映画のせい)、順調になんだか怖い理由がわかりやすくなっていった。

しかし、大学生になりあるとき家出して一人暮らしを始めたあたりから、パソコンの起動音がこわくなってしまった。きっかけは思い出せないのだけれど、マッキントッシュの「ブオン」という音が深夜一人でいるときに部屋に鳴り響く状態が異様に怖くなってしまったのである。今でも怖いので、基本ミュートにしている。テレビ会議などで使いミュートにし忘れたときは、大音量で音楽を流しながら起動することにしている。

著者
戸田山 和久
出版日
2016-01-07

「なんとなく怖いもの」の恐ろしいところは、なんで怖いのか理由がわかったところでやっぱり「怖い」のである。「先端恐怖症」や「高所恐怖症」が治らないように、「ふわっと恐怖症」も怖いもんは怖い。

そんな大人の怖さに、しかたないよね、と勇気づけてくれるのがこの『恐怖の哲学』である。

タイトルだけ聞くと、プラトンとヘーゲルとデカルトがバトルでもしそうなもんだが、副題は「ホラーで人間を読む」であり、ざっくりすぎるあらすじを言ってしまえば「すごくホラーな人が、なんかいろいろ理屈つけてみた!」的な感じである。哲学だけでなく、医学的アプローチもあれば、文学的アプローチもあり、なんなら映画論として読むととっても面白かったりする。「総合学習」みたいな新書だ。

ちなみに本筋とは全然関係ないけれど途中に参考資料としてでてくる「プルチックによる情動の円環状モデル」の話が面白い。「プルチック」で画像検索するとでてくるお花みたいなチャートのことである。感情を根っこの8パターンにわけて、なおかつその足し算をした感情もあるよーみたいなチャートなのだけれどこれがなかなか…「好奇心」は「心配」と「信頼」の足し算とか…小一時間眺めているだけでなんか脳みそを使った気になれる。

話を戻すと、著者の戸田山氏のホラー愛が文章からあふれんばかりなのである。

この人はすごく怖がりだそうなのだけれど、ホラーを見ずにはいられないのだという。

ハリネズミのジレンマ?それともただのマゾヒスト?ってな印象は受けるけれども、なんかツンデレみたいで、その描写の仕方が面白い。あと愛らしい。ここまで恐怖に片思いできたら、克服という概念も吹き飛びそうである。

あと、NHK出版新書っていうから堅い感じかなと思ったらイラストがなんだかとてもゆるい。

本屋でパラ見したら買ってしまいたくなること請け合いの一冊。

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